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天才魔術師団長は天才魔女姫を壊せない  作者: かんあずき


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4 影の護衛と姫の秘密

「どういうことよ」

「どうもこうもないわ。あなただってそろそろ国のために役立ちたいでしょ。いい話よ」


ヴァネッサ奥様とご相談されてみては?とニコラスに言われた私は、王城の端にある第三夫人の母の部屋にいき、私たち二人の言い争いのゴングが鳴る


この部屋は、母ヴァネッサが望んだ部屋だそうだ。

「端だなんて、王の寵愛具合がよくわかること」

と第一と第二夫人たちからお茶会でいわれたヴァネッサは、あらあらと微笑む


「政略結婚のお二人から寵愛だなんて言葉が出てくるとは思わなかったわ。だって、わたしお二人と違って、寵愛をうけて仕方なく妻になったものですから。お二人とも、ど真ん中のお部屋にいて、王を繋ぎ止められなかったんですの?」


と最後に結婚したことをいいことに、ニンマリ笑う。

お茶会の席は、ヴァネッサの気持ちを代弁すべく氷の妖精が大暴れし、茶も空気も瞬時に凍ったのは有名な話。


王の寵愛なんて関係もなく、単純に建物の端は精霊や妖精が立ち寄りやすい。

薬を調合しても匂いで迷惑をかけにくい。

それだけだ。



そんな母ヴァネッサは、久しぶりにやって来た私のためにミルクティーを煮出していた。

冷え始めた季節に、スパイスと茶葉をミルクで煮出す。魔女の歌を込めたそのお茶は、体の芯までじんわり温まる。


王城に住む香りの妖精がクンクンと匂いを嗅いでいる。


(妖精が欲しがるということは、安全な飲み物ね)


妖精のために持ってきたクッキーをミルクティーに浸し、器に置くと、目に見えてクッキーが減っていく。


「お母様もご存知でしょう。私は魔法は使えても、魔術師みたいに理論的に構築したり、新しい魔法を発生させたりするのは苦手なのよ」


私は眉を顰める。

ヴァネッサはふんっと鼻で笑った。


「せっかくだから魔術の勉強もなさいな。家庭教師にするなら、ルシアンは最高の教師よ。

王子たちはもう出来が悪い烙印をもらったんだし、あなたが新たに烙印になっても、エリザベートやセレスティアに文句は言われないでしょう」


優雅にティーカップを持つ母は魔女にはみえない。

その美しさの遺伝子が少し欲しかったわ

私はため息をつく


「文句の有無の問題じゃないの。ルシアン様は、二人の王子に愛想を尽かして退職しようとしてるんです。

更に姫の私が更に愛想を尽かされたら……それこそこの国の終わりじゃないですか」


「だから結婚話まで入れたのよ。……まあ、相手がルシアンなら悪くはないわね」


と、母ヴァネッサはさらっと言う。

この人、娘の人生を簡単に転がしすぎじゃない?


「ルシアン様は、そんなこと望んでないと思うわ。そして、私も望んでないわ」


ルシアンの年齢は三十代に入る前という。

いい人がいても不思議じゃない。

王命で、ほとんど接点のない人付き合いもまともにできない姫で小娘の相手なんてとんでもないだろう。


「ルシアンは、前々からあなたに教育を施してみたいと言ってたのよ。」


ヴァネッサがニンマリ訳あり顔で、私を見つめる。


「……ルシアン様が?でも私、ほとんど接点なんて……」


へっ?と素で声が出た。

本当に顔すら思い浮かばない。


(美形でもブサイクでも、普通は顔ぐらい思い出すわよね?)


「ほら。あなたに魔女修行の一環で、素材採取のミッションや調合の旅に出したでしょ。あの時よ」


私が十歳ぐらいまでは、精霊や妖精や使い魔の世話や王城の畑で母が作った素材を中心にした調合がミッションだった。

十歳を過ぎた頃から――素材の獲得が難しくなる。


山、川、海がエスカレート、雪山、滝壺の奥にある滝の水、ダンジョンの地下、満月の夜に咲く砂漠の花……。

母の修行は、だんだん命の保証が怪しくなる方向へエスカレートしていった。


「あなただって王の唯一の姫でしょう。修行はともかく、護衛ぐらいつけろって王と当時の魔術師団長がうるさかったのよ。で、当時、新人で有望だったけど、可愛げがなくて魔術師団で持て余していたルシアンが、ずっと“あなたの影”で護衛してたわけ」


「えっ?」


「ほら、全く気づいてないでしょ。こんなに気づかないのに誰も護衛をつけなくても自分は大丈夫と思っていることが危ないって彼は言い張るわけよ。で、きちんと魔術の指導を受けるべきだってね。特に森にあなたが一人で住むようになってからは、余計に心配したみたいね」


確かにミッションで、気配は感じたこともある。

だから、あまりにも寒い雪山などでは声をかけたこともある。

でも姿も見えたことはなかった。

声も聞こえたことはなくて、話もしなかった。

だから恐怖が見せる幻覚と思ったのだ。


(あれ、全部ルシアン様だったの!?)


母ヴァネッサは私の呆然とした顔を見て、してやったとケラケラ笑う。


「そんな……私、なんか変なこと言ってないわよね……?」


「さて、それは本人に聞いてみるといいわね。ほら、向こうはもうあなたの全部を知ってるようなものなんだから、気まずくなる要素ゼロだし、結婚相手って聞いた時はあんな息子はいらないと思ったけど、条件としても確かにいいわよねぇ」


「いいわけないでしょ!」


恥ずかしい!

普通に鼻歌歌ったり、くしゃみして鼻水出したり...


なんだったら滝壺に突っ込んだ時は、あとで火の妖精に焚き火してもらって服脱いで乾かしてたわよ。

あの時ももしかして....隣にいたとか??


いやあああああああ!


頭を抱え、恥ずかしさで森に篭りたくなった






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