39 新王妃クラリス到来
ルシアンが、パンを食べ終わり、美味しそうにクッキーを口に含む頃、風の妖精シルフィーたちが王城から帰ってきた。
そして一斉に報告する。
「ラベンダー!王城のエリザベートおうひ大変なの!」
「大変なの!」
「怒ってた!」
「ないてた!」
「喧嘩してた!」
一斉に話し始めるので、一人づつね。と声をかけながらクッキーを机に置く。
「みんな食べながらゆっくりお話ししましょう」
風の妖精シルフィーたちは頷きながら、クッキーに一斉に手を伸ばす。
「かわいいな。妖精ってこんな喋るのか。精霊は、必要な事以外は会話しないから...」
ルシアンは目を丸くする。かつてヴァネッサに見せてもらった妖精たちよりはもっと幼い
ルシアンの横に来て食べる妖精もいれば、机の上で寝転びながら食べる妖精もいるし、飛びながらクッキーのかけらをこぼして食べる妖精もいる。
「かわいいけど、いたずら好きだし、王城にいた時みたいにヤキモチをやいて水をかける子もいますから注意です」
ラベンダーは苦笑する。
「エリザベートおうひ悔しがってた。せっかくラベンダーからもらった化粧品で肌が荒れたと思ったのにすぐ治ったって」
「化粧品、赤くなったあとすぐ治って、更にその部分のお肌はツルツルになったんだって。化粧品、捨てるんじゃなかったって悔しがってた」
「わかがえり効果ぜつだいって」
そうあの日の出来事について話し始めて、わたしはしまったと頭を抱える。
「ああ!そうよね。うっかりしてた。化粧品だもの、わたしがつけて大丈夫、じゃなくてちゃんとパッチテストしないといけなかったわ。」
わたしはつい毒味と同じで自分に害がない証明をしたらいいと思ってしまったのだ。
「エリザベート様、自作自演とか言われて気の毒だわ。一時的に赤くなったのね。でも、今更私の手作りのお薬とか渡されても困るわよね」
「あの王妃も攻撃の意図があって大袈裟に言ったんだから気にしなくていい」
ルシアンは、わたしが直しをした服を着直す。
糸の妖精は、わたしの服を作るのに手一杯だったので、わたしがとりあえず破れているところを縫い直したのだ。
だが、縫い目はぼこぼこだ。
「穴を塞いでくれたから後は復元魔法を使う。ありがとう」
指をすっと縫ったところに当てると、ルシアンの服は元に戻っていく。
「でね、今日は次の王妃が来たの、けんかしてた」
私とルシアンの行動がピタッと止まり、お互い目を合わせる。
ええと、それはルシアン様のかつての恋人...よね
「違うから!本当に過去のことなんだ」
ルシアンが慌てたように椅子から少し身を乗り出す。
「大丈夫です。何も、そんな、思ってませんから」
わたしも、耳に入れていいか迷っただけで気にはしていない。
頭をブンブン振る。
すると、ルシアンは今度は嫌そうな顔をする。
「それはそれでなんか嫌だ。少しぐらい気にしてほしい」
「えっ?そういわれても...いったいどこを気にすれば正解なの?」
そう聞くと、ルシアンは少し唇を尖らせてぷいっとする。
(ルシアン様...わかりません。わたしどうしたら?)
「で?なんの喧嘩をしてたんだ?ヴァネッサ王妃もいなくなったのに」
ルシアンは風の妖精に声をかける。
「部屋が気に入らないって!ヴァネッサの部屋は隅だから嫌だって。あそこは日当たりがいいのに!」
シルフィーたちは、不服そうだ。
「だから、ラベンダーの部屋に住まわせようとしたら小さすぎるってクラリスが怒ったんだ」
「クラリスがエリザベートおうひに部屋をわたせって」
再び私とルシアンは顔を見合わせる。
「いや、そんなこと許されないだろ。そもそもラベンダーの部屋を勝手に使うのだっておかしいし」
「部屋は構わないけど...しばらく他の王妃のお部屋にお父様が行かないなら、お父様のお部屋に一緒にいればいいんじゃないの?」
「うーん??クラリスとおうさまは不仲なの」
「えっ?今日やってきたのよね?」
「お前と一緒に過ごす気はないって言ってたよ」
私とルシアンはますます顔を顰める。
お父様ーーあれだけ大騒ぎして何がしたいの?
「でも、クラリスのお部屋が決まらないからリチャードと一緒にエリザベート王妃を別の部屋に追い出そうとしているの。だから、エリザベート王妃はないたの」
「そう、怒りながらないたの」
風の妖精シルフィたちは、神妙にうんうんと頷いているが、クッキーを食べるペースは落ちることはない。
「え?なんで?なんでリチャード兄様がクラリス様と一緒に王妃を追い出すの?」
今度はわたしの頭が混乱する。
エリザベート王妃とリチャード兄様は仲が良かったと思うのだけど...?
(エリザベート様が怒って泣いて、クラリス様が来て、部屋の取り合い?お兄様は何でそこに混ざってるの?)
「あの二人、まだ繋がってるのか?バレたら洒落にならないぞ」
ルシアンはその横でため息をつき、わたしはますます頭が混乱していた




