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天才魔術師団長は天才魔女姫を壊せない  作者: かんあずき


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25 裏切りの聖女

「なんだ?ルシアン、姫のこと気に入ってるのかよ?」

「クラリスのことがまだ忘れられないのか?」


いつになく落ち込んでいるルシアンに恐る恐る声をかけた。


「いや、ただクラリスの時は真剣に結婚を考えていたし、実際に振られて結婚するって難しいんだなと思ったんだよな。でも、今回はしたくなくても、こんなあっさりと結婚させられるわけだ。そう思うと心がついていかなくてな」


ーーー


クラリスは、とても野心家だった。

俺に近づいたのは、自分が王子たちの指導をしていて将来有望だと知っていたからだ。


「ねえ、王子様ってどんな方なの?あなた、王子様と会った後、とても疲れているみたい。」


恋心に火がつき、自分が交際を申し込んでからは休日は共に過ごす日が増えた。

どうやら、王子の指導の後は表情が冴えないらしい。


「どんなって...二人とも魔力の高い優秀な人材だよ」


無難な回答をする。

どこにどんな火種があるか分からない。


「そうなの?じゃあ、いつか戦いの場に出てくることもあるのかしら?その時までに、私も王子のケアがきちんとできるようにしないとね」


クラリスはにっこり微笑むが、王子が戦いの場にいくはずがない。そしてむしろ来たら邪魔だ。


「いや、王子たちに何かあったら困るし、クラリスが会うことはないんじゃないかな?それに、俺は他の騎士や魔術師とだって会わせたくないのにさ」


俺はクラリスに向かって微笑んだ。

だが、クラリスは不服そうだった。


「あら、私はあなたと将来を考えているのよ。あなたが、普段接する人たちと懇意になって、少しでも私たちの仲を味方してくれる人を増やしたいと思うのは当然のことだわ。それに...」


クラリスは悲しそうな顔をする。


「あなた時々寝ている時に、ラベンダーって名前を口にするの...ラベンダーってあの魔女の姫のことよね。あなたは長く特別なミッションについていたってみんなが言っていたわ。それってラベンダー姫のことじゃないの?」


クラリスは俺に抱きつきながら、ラベンダーの良くない評判を耳に入れる。


「だって、ヴァネッサ王妃の娘なんでしょ。魔女って私たち聖女と対極の力を持つのですって。私たち聖女の祝福の代わりに、まわりを不幸にしたり、悪魔も召喚できるって話よ」


「いや....彼女はそんな人じゃないよ」

「やっぱりラベンダー姫と関係あるんじゃないの。姫のことが好きなの?」

「何言ってるんだ!子供だよ。」

「でも、姫が兄の二人を味方につけてあなたと付き合えって王子たちから言われたら?あなたの立場だったら姫を取るでしょう?」

「そんなことあるわけないじゃないか。俺の好きな人は君だよ」

「じゃあ、王子と会わせて。私が彼女だってちゃんと紹介してよ。」

「....わかったよ」


俺はクラリスの不安を取り除いてやりたかった。


寝言でラベンダー姫の名前を呟いていたのは、最後まで護衛が出来なかった後悔で、クラリスがいうように魔女といわれ、だんだん表情が暗くなっていっても何も出来なかった後悔からだと思う。


俺は言われるままに、王子たちに自分のお付き合いしている人を紹介したいと告げた。

まさか、クラリスがクリスともリチャードともその後、男女の関係を持つとは思わなかった。


いや、それだけではない。

最初の訓練の出会いも作られたものだと知った。


「クラリスから、ルシアンと親しくなりたいから協力してくれって言われてたんだよ」


一生懸命、汗をかきながら俺の治癒をしようとしていたのも、それほどの力もないのに上位魔術師の訓練に潜り込んだ結果だったようで、他の聖女仲間も困っていたらしい


「訓練に連れて行く予定の聖女とトラブルばかり起こすし、連れていって力のなさを実感させたらいいと思ってたんですよ。でも、ルシアン様の担当になられているようだし、あなた様なら一人でも傷を治せるから良いかと思ったんです。魔術師団長も、むしろ年相応の方女性と話す機会を与えてやりたいといわれていたし...」


魔術師団長だってこんな結果を期待したわけではなかっただろう。

丁度、上位魔術師とお近づきになりたい聖女と長く魔女姫に関わりすぎて人付き合いがますます困難になっていった魔術師の出会いの場を作ったつもりだったのだろう。


実際、表向きはそれでうまくいっていたし、俺も幸せの絶頂期だったと思う。


後になって分かったが、王家に関係しているもの、出世が期待されているものたちの間ではクラリスは有名な女性だったようだ。


わざと、クラリスのことを俺の周りで褒めたり、俺を焦らせたのも俺を落とすために協力してほしいと頼まれていたからだとわかった。

クラリスに騙されて協力した者も、クラリスの性格を知った上で俺を陥れようとした者もそれぞれだった。

ひとえに、俺が人付き合いをしなかったツケがたたって、彼女にひょいひょいと近づいてしまったのだ。



その後、自分の恋人を寝取った王子たちの指導を続けていたが、問題ばかり巻き起こし、クリスに至ってはクラリスとは一時的な遊びで、別の国の娼館に出入りし、色んな女性を城に出入りさせていることがわかった。


リチャードの母、エリザベートは、クリスと関係を持っているクラリスとリチャードが付き合うのを嫌い、母の言われるままに別れたと聞いた。リチャードは頭は悪いが、優しい王子というイメージだったが、母に言われたらすぐに女性を捨ててしまう、国の財産を他国に勝手に譲り渡してしまうといった優しそうに見えるだけで偽善の塊であることに嫌気がさした。


俺はーー辞表を出して静かに去るつもりだったが...結局、俺の辞職にラベンダー姫が振り回されてしまったのだ。




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