表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/124

19 王家が壊れていく音が聞こえる

わたしが父をジロッと睨みつけていたそのとき――

椅子に優雅に座っていた母ヴァネッサが、すっと立ち上がった。


次の瞬間、空気が爆ぜる。


「えっ――」


気づいたときには、わたしの体は宙に放り出されていた。

反射的に風でクッションを作ろうとするが、勢いが強すぎて間に合わない。


――叩きつけられる!


そう思った瞬間、強い腕がわたしの体を受け止めた。


「っ……!」


ルシアンだ。

壁にぶつかる直前で抱き止めてくれたおかげで、衝撃はすべて彼が受けてくれた。


母の声が響く。


「おめおめやられた報告なんて...覚悟はしてきたのよね、ラベンダー」

「……クリスお兄様に襲われた件は、言い逃れるつもりはありません。でも――」

「でもではないわ」


ヴァネッサの瞳は烈火のように燃えていた。


「自分を守ることすらできず、王に文句だけは一人前……。森で自由にさせすぎたみたいね」


怒りは、わたし個人ではなく――

“魔女がただの王子に遅れを取った”ことに向いていた。

ましてや、魔術師に助けられたなんて論外だ、と母の顔が語っている。


その瞬間、ルシアンがわたしの前に立った。

庇うように腕を広げて。


空気がピリッと張りつめる。


「クリスは彼女に邪な意図で攻撃したんだ」


ルシアンの声は静かだったが、怒りが明らかに滲んでいた。


「兄にとどめを刺せば、問題はより深くなる。だから初回攻撃を抑えた。それのどこが責められる点だ?兄を殺さなかった彼女が間違いなのか?それとも、帰省してきた妹に襲いかかるクリスが間違っているのか?」


王妃であり、魔女の師であり、そして“母”であるヴァネッサに、まっすぐ言葉をぶつける。


「ヴァネッサ王妃。魔女の師である前に……あなたは母親だろう」


空気が一瞬、凍りつく。


「ルシアン、もういいわ。」


わたしは急いでルシアンの庇おうとしてくれる腕に触れる。

そんな私に、母ヴァネッサはゆっくり近づきながら、低く言った。


「ルシアン。あなたはどの立場で言っているのかしら?

ただの魔術の師? それとも――わたしたちの提案通り、この子の夫になる覚悟を決めたのかしら?」


絨毯の上なのに、ヒールの音が聞こえる錯覚。

圧が凄い。

わたしは慌てて二人の間に風を走らせた。

このままでは、本当に魔女の王妃と宮廷魔術師が戦いだしかねない。


ルシアンは、それでもわたしを背にかばう。


「彼女は先ほど危険な目に遭った。部屋に警備も侍女もいない状態だった。王に、彼女の護衛として再任の依頼をしに来たんだ。

護衛の立場として、クリスの行動がどれほど危険か?そして、彼女の立場を伝えるのは当然だ」


庇う腕に力がこもる。

物理的にも、精神的にも守ろうとしてくれているのだとわかり、胸が熱くなる。


しかし母は冷たく告げる。


「護衛? 不要よ。王に言うまでもないわ。それに、あなたが結婚相手にならないなら、次の魔力の高い相手を探す必要がある。むしろあなたは邪魔だわ」


……ルシアンを、わざと挑発している。


「お母様、それは違うわ」


わたしは前に出た。


「ルシアン様に罪悪感をわざと植えつけるような言い回しはやめて。退職したいと言った彼を引き留めたのは、他でもない王とお母様よ」


父を見る。

平然としている。

いつものように、誰の訴えも“平等”の名のもとに処理してきた顔だ。


「魔女の後継者は、王族としても魔女としても、次に火種を残さないような相手を適切に選ぶわ。でも――お兄様の問題を放置するなら、わたしは家を出る。他国で魔力の高い男性を探すだけよ」


部屋の緊張感が高まる。

興味なさそうにその様子を見ていた父が静かに口を開いた。


「そんなに兄たちが不満なのか?それなら……第四夫人を迎えるとしようかな」


部屋の空気が止まった。


「ヴァネッサ、君からも離婚を切り出されていたしね」


わたしとルシアンは息を呑んで顔を見合わせる。

ヴァネッサは、ほんの少しだけ眉を寄せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
文章がとても読みやすくて、スラスラと頭に入ってきました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ