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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第三章

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エピソード

「媚薬は絶対、無人販売所で売れないし、余っちゃうな」


私は懲りもせずに、媚薬を作り続けている。

失敗が許せない!

きちんと安全な製品になるまで仕上げたい。だけど、ルシアンは飲ませてくれないし、材料を見てしまうと飲みたくもないと彼も拒否する。

作るのに、誰にも使われない媚薬は今日も空間バッグに入れられる。


でも、どのみち、そんなものを使うと私の体がもたない。

あの日以来、ルシアンの理性の蓋は飛び散った。

求められない日がない。

愛を囁かれない日はない。

激しい独占欲と、愛情表現を思い出すと恥ずかしくなり、わたしはなんてことを一年かけて彼にねだっていたんだと恥ずかしくなる。

だが、恥ずかしいのに、目覚めた朝は幸せに感じてしまう。

おそらくだが、彼も幸せを感じてくれている気がする。


子種目的で色んな人となんて無理だったことは痛感した。

ルシアン以外絶対無理!

そう一人で思い出して顔を赤くする。


◆◆◆


ちなみに、かつてシーウェンで作った無人販売所は、地味に利益を上げ続け、新聞にも「不思議な販売所」として知られるようになった。

媚薬は売ることはできないが、化粧品はバカ売れだ。


「基礎化粧品がやっぱり人気だな。森の泉からとった魔力をたっぷり含んだお水がベースだもんね。あとは、魔法蜂の巣から作った蜜蝋クリームもなかなか潤いが出るし、普通の蜂の巣と違ってべたつかないんだよね。へへっ」


妖精が品物を入れた日の夜にはもう

「品物がないよ!」

と叫ぶので流石に困っていると、デイジーさんが面白がって

「私のも取り扱いしてほしいわ」

と例の下着まで置き始めた。


すると、一気にその下着が売れ筋No. 1に躍り出る。

「化粧品が、下着に負けるとは!!」

わたしは俄然やる気になる。


自分の売り上げは、我が家の新しい魔石自動車の購入資金にした。もう少しスピードが出る車が今は売られているらしい。

もう少ししたら、連休をもらえるらしく、その車でルシアンの実家とお祖父様のラスカル、使い魔のお祖母様のところまで遊びに行くのだ。


「おい、猫とラスカルに会ったらグラディウスの託児に来てくれと伝えてくれ。」

お父様が叫んでいる。 

さすが魔力が高いだけあって、この間からは、一人でふらふら浮き上がって王城内を浮きまわるようになった。

「すごいわよね。魔法陣なしで浮き上がるなんて」

「ヴァネッサがいつも浮かばせて遊んでたせいで、勝手に浮かび方を覚えてしまったんだ。」


お父様の作った防御ばっちりの部屋でグラディウスがふわふわ浮かぶのをわたしは回収して抱っこする。

ニコニコしながらわたしや父を見ている。

「お母様は?」

この部屋にはいないが...

「久しぶりに森に行ってゆっくりリフレッシュさせている。若くないし、王妃の仕事があって、子育てとなると休みがないだろう。日中はわたしが抱っこしているが、夜はヴァネッサがずっと見ているからな」

「魔力のコントロールができるようになれば、安心だけど、まだ目が離せないわね」

「他人事のように言うが、お前とルシアンの子供だって必ずしも魔女だけとは限らないことが分かったんだからな。ラベンダーはおとなしかったが、男の子はこうもやんちゃなのか?」

「普通の男の子の枠に入れてはいけないわ。二人の個性を受け継いでいるのよ」


わたしは笑って、グラディウスを連れて散歩する事にした。

「少しお父様もお疲れだから休んだほうがいいわ。

それに、この子も同じ部屋にずっといたら、退屈しちゃうわよね。」


可愛い弟といいたいところだが、歳の差がこれだけ離れると弟というよりは子供に近い感覚だ。


わたしは、魔術師団に遊びに行ってみる事にした。

グラディウスは興味津々に周囲を見回しているが、ふわふわ浮きながら移動しているほうがよっぽどみんなの目を引くらしく、しかもそれが王子ということで驚愕の目で見られながら団長室に進んでいく。


「ラベンダーさま...って、王子ですか!!へっ!飛んでるじゃないですか」

わたしの後ろからミハエル副団長が声をかけるが、グラディウスをみてギョッとする。

「お父様の部屋だと暇みたいで目が離せないみたいなの。ちょっと疲れさせてお昼寝できるようにしようと思って」

「へえええ!間違いなく魔力が高そうな王子ですね。将来が楽しみだ」

ミハエルはニコニコ浮かぶグラディウスを見て笑顔になる。

「早く魔力のコントロールをしないといけないけど、流石にベビーの間は無理よね」

「そうですね。ルシアン団長にすでに教育係の依頼が来ているようですよ」

「適任だけど、ルシアンは厳しいから癇癪をおこしそうね。」

思わずミハエルとふふっと笑いながら団長室に入ると、ルシアンが仕事に追われていた。


「ああ、王子の託児か」

「ルシアンはさすがね。グラディウスが浮いていても驚きもしないんですもの」

「初めて王の部屋で見た時には驚いたが、先代の王は身体能力が高かったらしいし、今の王は魔力が高いからな。納得はしたが」

ルシアンはそれがどうしたと言う顔だ。

「普通は納得しない。でも、さすがラベンダー様の護衛をずっとしていただけあるな。王子は修行には出ないんだろう」

「出ないが、今の王は勝手に城を抜け出てヴァネッサ王妃と出会ったらしいし、この子も勝手に出歩くようになるかもな」

そういうと、再びふわふわ浮き出すグラディウスをルシアンは抱き止めた。

背中をポンポンと叩くと、おとなしくなる。

「なんでですか!」

「ラベンダーと似ているからな。ニコニコして、暴れて、寝る」

「なんですか?それ!」

だが、ルシアンがしーっと指に手を当てると、言われた通り寝始める。

ミハエルさんは、ぷっと笑いを堪えているし、ルシアンも満足そうでなんか悔しい。

「この子は魔力のコントロールより、回復の魔術や危害のない魔術をどんどん教えて使わせることで魔力の調整の仕方を覚えたほうがいい。」


あんなに大変だったグラディウスがルシアンの手だと一瞬で落ち着くのだから、よっぽど過去の私の世話には気を配ったのだろう。


「俺たちの子供ができるなら、俺に似ると気難しいし、ラベンダーに似るとこんな感じだな」


ルシアンは笑いながらさらっと言うので恥ずかしくなる。

だが、一線を越えて以来、周囲の目を気にすることもなく、未来を語ることが増えた。

笑顔も増えて、吹っ切れたように穏やかな日々を過ごし始め、私たちは一緒にいて当たり前の家族になったのだと感じている。


「ミハエル、来週から俺たちは休みを取って今度こそ新婚旅行と実家の挨拶と、祖父母への挨拶に行くから、今度こそ邪魔するなよ。」

ルシアンは、楽しそうに私を見ながら周りに仕事を任せることも覚え始めたのだった。


◇◇◇


「あら、すっかりべったべたになっちゃって」

使い魔のお祖母様は、私とルシアンの顔を見てすごくめんどくさそうな顔をした。

「お祖母様って、元々そういう性格なの?それとも魔がそうさせたの?」

「魔に支配されることも多いわよ。特に対価の交渉の時なんて私の意志とは別のものが支配するわ。だから初めての時もあなたの髪もバサっと取っちゃうし、命も対価に奪ってしまうのよ。

だけど、性格はこのままね。ヴァネッサと中身が同じと誤解されるけど、最初に対価を与えてヴァネッサを見守ると契約したのはわたし。私とヴァネッサの性格がそっくりなの。言ったでしょ。あなたは絶対ラスカルに似たのよ」

使い魔のお祖母様は尻尾をふさふさしながら、お祖父様のところまで案内する。

「ラベンダー、ルシアンもよくきてくれたね」

お祖父様は使い魔のお祖母様を抱き上げて部屋へ迎え入れる。

「二人に託児のために王城に戻ってくれって言ってたわ。グラディウスの魔力が高すぎて、普通の乳母や侍女では世話ができないの」

「あら、それは大変ね」

お祖母様はぺろっと前足を舐める。

「王城に行ったら、託児だけじゃないよな。こき使われそうだ」

お祖父様がため息をつく。お父様によって若い頃から散々な目にあったと話す。父の作った魔法陣の解除の相手、母の不貞相手と間違えられ、若きルシアンの世話といいハードワークだったのは想像できる。

「でも、私も来てくれるとうれしいわ」

わたしは笑顔で語る

ルシアンも

「若い魔術師を久しぶりに鍛えてやってほしい」

と伝えると、

「ほら!すでに託児だけじゃない!」

とまんざらでもない顔をして笑っていた。


「この後はどうするの?」

お祖母様がきいてくる。

「ルシアンの実家では、ゆっくりするのよ。畑を耕したり、お義母様から手芸を教えていただける予定なの。」

わたしは楽しみにしていた。

妖精を使わず、わたしが一人で裁縫をすることは今までにない。普通の家庭...といっても貴族の家ではあるが、魔法と関係ない生活をさせてもらえるのは、滅多にないことなのだ。


「あらあら、実家なんだからルシアンはしばらくお預けね。

どれだけの期間耐えられるかしら。うふふ」

「うるさい、猫。耐えられなくなったらすぐ帰る」

「へえ、正直になっちゃって」

お祖母様もルシアンの変わりように目を丸くする。


「これは、近いうちにヴァネッサの子と二人まとめて託児になるかもね」

そう言われてわたしは顔を真っ赤にしたが、ルシアンはまんざらでもない顔をした。



ーーー


それから一年がたち、私のお腹も目立ち始めた。

「ほら、やっぱり託児が二人になりそうって言った通りじゃないの」

お祖母様は、尻尾を握りしめて使い魔のお祖母様を飛ばそうとするグラディウスに対して、瞬時に黒い猫の影にかわり

「がおーーー!」

と化けて泣かしている。


「お祖母様、個性的な託児だわ」

「しっかり泣いて、肺を鍛えるがいいわ!」

お母様もだが、大概お祖母様もスパルタだ。


「ああ!泣かされたのか?可哀想に」

お父様が急いで抱き上げにくる。

「何も可哀想じゃないわよ。そんなふうに甘やかしたらろくな息子にならないわ。」

ふんとお祖母様はお父様を叱る。

「ラベンダーの子供の叔父になっちゃうのよね。しっかりしないとね」

今度は、母ヴァネッサがグラディウスを抱き上げる

「そうだ!ラベンダーの子供の魔女修行に、グラディウスも護衛として修行させたらいいのよ」

「あら、叔父なのよ。この二人みたいに恋に落ちたら困るわよー」

うふふとお祖母様とお母様は笑い飛ばす。


過去から見守り続け、次に引き継いだ魔女の家系は、また新たに続いていく。

だが、それと同時に魔女を見守るものたちも、過去から未来へと引き継がれていくのだ。 

次の魔女を支えるのはグラディウス?それとも??


「ラベンダー、迎えに来たぞ。」

ルシアンの声が聞こえ、姿が現れる。

「あら、噂をしたら相変わらずラブラブだこと」

「当たり前だ。」

ルシアンはわたしの体を気にして、転移魔法も一人では使わないようにと過保護に接するが幸せそうだ。


「私たちの子が生まれて修行する時には、グラディウスが護衛だったらどうかって言ってたのよ」

私がルシアンに伝え反応を見る。

「娘が産まれたら、その護衛はわたしに決まってるだろう。変な男が引っ付いたらどうするんだ」

真面目な顔をして反論するので、思わずお母様とお祖母様は大笑いした。

「変な男って...あなたのこと??」

母は笑いのツボにはまり、ルシアンはぶすっとして真っ赤になる。


「次の魔女がどんな子が楽しみだわ」

わたしは優しくおなかを撫でたのだった。



   《完》








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