121 幸せはまだ未完
それから一年が過ぎた。
私ももう二十歳だ。
「結局、いろんなものが全て中途半端に終わってるわ」
わたしはルシアンに怒った。
「そういうけど、それどころじゃなかったんだし」
ルシアンは渋い顔をする。
「私たちすっごく仲がいいと思うの。なのに、初夜はないまま、新婚旅行は途中やめ、実家の挨拶も途中やめよ。そして!!」
わたしはずいっと体をルシアンに近づけた。
「魔力混合はしたけど、その後関係に進展がない!わたしは妻で、わたしはその気満々なのにおかしいわ!」
「そういったって...初夜は初めての夜だから初夜だろう?新婚旅行は、新婚だから成立するわけで、実家は転移魔法をしないで行くのは休みの日程が足りない。
君との関係は、もちろん考えているけど、まさか王と王妃に子供が産まれるなんて思わないじゃないか。下手すると同級生になりかねないんだから、時期をずらした方がいいと思うだろ?」
そう言われると、おめでたいことなんだから言い返せない。
わたしはぐっと言葉に詰まった
◇◇◇
誰もがまさかと思ったが、わたしのことがあってまもなく、まさかの母ヴァネッサの懐妊がわかった。
魔女って一人しか産めないんじゃないの?と思っていたが、子種をもらう必要がないから産むことがないだけだったということがわかる。
そして、相手が固定されているなら妊娠してもおかしくないのかとみんな驚いたのだ。
「魔女が少なくなる中で、もう一人なんてお母様ってば魔女の協会に貢献してるわね」
そう言って笑ったのだがーー
産まれたのは男児だった。
みんな目を見開く。
「魔女って、女の子しか産めないんじゃないの?」
「そもそもどこからの情報なんだ?」
母は自ら科学の遺伝子検査と魔力検査を要望した。
その検査結果はもちろんというか、間違いなくお父様とお母様の子供だ。
「どうする?」
「どうするって言われても、ヴァネッサは魔女ではあるがラスカルの娘であることもみんなに知らされて、わたしの息子だろう。ラスカルは侯爵だし、その娘なら身分的にも問題ない。普通に考えれば、王として育てる方が...いいんだろうな」
お父様は、リチャードお兄様が私にした行為を許さなかった。エリザベート王妃の実家には実家の爵位剥奪を選ぶか、リチャード王子が自分の子供ではないことを国民に告げることを選ぶか選択させた。
エリザベート王妃は、王妃にも関わらず不貞を働いたことで実家から除籍された。だが、少しは情もあったのだろう。
お父様は、ニコラス宰相に多めの退職金を渡して、親子三人でちゃんとやり直せと告げたのだった。
クリスお兄様は廃嫡されてからは、真面目にセレスティア様の実家で働いているようだ。
父は私にした行為を許さないと思ったようだが、もう王家から出ており、二度と私に関わらないという念書を書かせて終わりとした。
「わたしにはお父様もお母様もいるもの。クリスお兄様は、これから一人で頑張らないといけないのだし、関わることがないならこれでいいのよ」
わたしがいない世界では、兄二人は処刑されていた。
だが私がいても今の兄たちは幸せとは言い難かった。
わたしと出会ってルシアンの人生が変わったように、兄たちの人生を変えてくれるような出会いが待っているかもしれない。そう思ったのだ。
「弟たちやタリー国には事情を説明したらわかってくれた。
王の子供が新たに産まれるならそれが一番だと言ってくれたよ。」
お父様は、よほどかわいいらしく王子をいつも抱っこして歩いている。王子の名前は、グラディウスと名付けられた。
「グラディウスには、ラベンダーにしてやれなかったことを全てしてやりたい」
そう話しているが、かなり魔力が強い子なので泣くなびに部屋中のものが浮き上がり攻撃してくる。
「さすが二人の子ね」
私も、必然的に防御魔法陣が上手に描けるようになってしまい、侍女たちには、怪我をしないようにそれを入れたネックレスを作ってあげたところみんなに喜ばれ、ホッとする。
王妃二人がいなくなり、第三王妃だった母は正妃となった。お祖父様のラスカル侯爵は、王の正妃が娘であり、次期王の祖父ということで昇爵されて公爵となり、立場はエリザベート様と同じになる。
公爵の娘で、しかも後継まで産んだとなると母の立場は一気に上がる。
わたしを気持ち悪がっていた使用人も、みんな母や私に手のひらを返し始めたのだった。
そんなわけで、予定外のことがわたしの周囲に起きてしまい、わたしは発進できない競走馬のように、ルシアンを襲っては、あっさり力で止められているのだ。
「お祖母様に相談してみようかしら??」
あの後、使い魔のお祖母様からはもちろん叱られた。
ただ、わたしから私がいなかった世界の話を聞き、フギャー!っと怒っていた。
「何よそれ!あなたがいない時の私ってそんなに口が軽いわけ?もう!私のことがラスカルにもバレちゃうし、ヴァネッサにもバレちゃうし最悪だわ」
お祖父様は、お祖母様のことは、ほとんど何も覚えてはいないけど、使い魔のお祖母様がずっと心に残っていた女性と知り喜び、ここにいて欲しいと頼んだ。
「ここに使い魔殿がいてくれるだけで、心が穏やかになるんだよ。話がとても楽しいんだ。それに、一人暮らしは寂しいからね」
広い家に、公爵に昇爵しても一人でいるのは変わらない。
使用人はいても寂しいらしい。
そのため、お祖母様はお祖父様の家で、猫のまま一緒に過ごすことになったのだ。
「でもね、私も母の記憶がないのは寂しいのよ。なんかいい魔力を含んだ対価はないかしらね」
母は妖精を使役する時に命をすでに削っているし、これ以上は与えられる対価もないとしょんぼりしている。
ところが、出産によって転機が訪れる。
「やだ!しっかり魔力が詰まった胎盤が出てきたじゃないの。うふふっ!これでなんとかなるわ」
母は、グラディウスを産み終わった後の胎盤を対価に、まさかの祖母の記憶をお祖父様と自分に戻したのだった。
記憶が戻って仕舞えば、お祖父様は、お祖母様にメロメロなわけで、老いらくの恋を楽しんでいると話している。
そんな愛されて、いろんな愛を見続けたお祖母様なら、ルシアン様の襲い方とかその気にさせる方法とかきっとやり方を知ってるわ
わたしはぎゅっ!と拳を握る。
お手紙を飛ばしてみたところ
「デイジーに面積カットの下着を作らせるがいいわ!」
と返事が返ってきた。
「わかったわ!お祖母様!!」
だが、数日後...
「ラベンダー、そんな下着だと風邪引くよ」
「ぐぬぬ!絶対わかっててそんな返事してるわよね!ルシアンのバカ!」
わたしは怒る。
デイジーさんが可愛い路線、スケスケ路線、もはやなんもない路線の下着を作ってくれても眉一つ動かない。
こうなると、デイジーさんも、
「果てしない挑戦状を叩きつけられた感じね。負けるもんですか!」
と叫んでいる。
「悪いが、ラベンダーの裸は人生の中でかなり見慣れてるから、そこで色仕掛けは無理だって。」
「その言葉は傷つくわ。私に欲求がないと言ってるようなものよ」
日々言い争うが、解決しない。
なぜ、わたしと関係を持とうとしないのかもわからない。
魔女のペナルティは、恐ろしいものではないとわかったからいいけど、それでも新婚から一年以上経ったのに...
わたしはがっくし肩を落とした




