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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第三章

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120/124

120 この世界に、わたしを選んでくれる人がいる

目覚めたら、王城のかつての私の部屋だった。

わたしは真っ黒い髪に変わっていて、目を開けるとお父様やお母様、ルシアン、使い魔、お祖父様が心配そうに覗き込んでいる。


「わたし...ここは...あの」

頭では色んなことが理解できているのに、体が全くいうことを聞かない。

「俺の魔力を半分与えている。しばらくは体に馴染むのに時間がかかるが、ちゃんと君の魔力も含まれているからじかんをかけたら戻るはずだ。それまではゆっくり動こう」


ルシアンがわたしの頭を撫でた。

わたしに半分の魔力を??

ああそうか。ルシアンの体にはわたしとの混合魔力があるからだ。

でも、せっかくのルシアンの魔力が減ってしまうじゃないの!

わたしの目はぱちっ!と開く。


「医者も侍女も揃えている。困ったことがあれば、周りのものを使えばいい。嫌な顔を少しでもする奴がいたら追放してやるからな」


お父様が、物騒なことをいいながらわたしの手を握る。

それは横暴よ!そんなことになったら止めないと。

目覚めた瞬間から、ありがたいほど伝わってくるわたしへの愛が暴発し始めている。


ところで、みんなどこまでのことを知っているのだろうか?


「みんな、迷惑をかけてごめんなさい」

「なにを謝ることがある。リチャードがあんなことをするとは思わなかった。逮捕して、厳重に牢に入れてある。騎士団がすごく怒っていたな。何重の目張りをつけると息巻いていた」


どうやら、わたしが何を望んだのかは誰も知らないみたい。

私はホッとする。

娘が消えたいと望んでいたなんて知られたくない。

良かった。


「お父様、お母様ごめんなさい。私、二人の娘に産まれて幸せだわ」

二人が思わず顔を見合わせている

「頭を打ったのかもしれないな」

「瘴気が消えて、魔力が空になったってことは使い魔を使役しようとしたんだと思うんだけど、なぜかわたしの使い魔が新しくできているのよ。なんでなのかしら?」


そこには黒猫の使い魔が人形のように鎮座している。

あっちの世界のお母様の魔力を対価にわたしをこの世界に戻してくれた使い魔だ。


「あ...猫...ちゃん?」

わたしは黒猫に声をかけてみる

「ああ、もう対価分を支払ったのか中身はないの。わたしの魔力を最後に持って終わった使い魔よ。瘴気に戻ることはないからそのまま放置してもいいし、爪や髪を一本渡して、中身を入れてもいいわ」


「お祖母様、どう思う?」

わたしはもう一人の使い魔の猫をみる

「お祖母様??」

「お前やっぱり頭をぶつけたのか?」


猫ちゃんをお祖母様と呼ぶわたしを、お父様とお母様が心配する。

その傍らで、使い魔のお祖母様はふーっと息を吐いた。


「ラベンダー、ゆっくり話をすることがありそうね。わたしは魔だからしっかり記憶にあるし、ルシアンにも伝えてあるのよ。じっくりこの後はお小言を言わせてもらおうかしら?その使い魔は、ヴァネッサの魔力が最後だからヴァネッサの使い魔になってるけど、あなたが初めて作った使い魔に間違えないわ。あなたが決めたらいい」

「え?どういうことなの?」


母が使い魔に聞く。

何か自分の知らないことが起きていることに関心があるようだ。そして、わたしがお祖母様だと言ったからだろう。使い魔をじっと見つめる。


「ちょっと違う世界に行って、向こうのヴァネッサに助けられたようね。まあ、いいわ。壊れてた心も戻ったようだし。

ルシアンと二人にしてあげたら?ここで邪魔するのは野暮ってもんでしょ」


使い魔は、ふんっとまだ怒ってるんだからねという顔をした。


「そうだね。わたしも色々この猫ちゃんに聞きたいことがあるし...」

ラスカルが、使い魔をひょいっと摘み上げる。

「痛いわよ!首じゃなくてちゃんと体を抱き上げてもらえるかしら!」


使い魔は、文句を言いながらもラスカルに爪を立てて肩に乗る。お父様とお母様もまだ色々聞きたいようだったが、わたしとルシアンの様子を見て、一度部屋に戻ることにするとため息をついた。


◆◆◆


「ルシアン、ごめんなさい。わたしバカなことを使い魔にお願いしてしまったの」

「そうだな。バカすぎる。」


ルシアンは怒っている表情だったがそれ以上に深い悲しみの中にいて、わたしはそんな思いをルシアンにさせてしまったことが申し訳なかった。


「実際、俺には実感はないんだ。慌てて瘴気があるはずのところに行ったら、瘴気はなくなっていた。

リチャードとお前が倒れていて、猫の使い魔が必死に声をかけていた。その隣に黒猫の使い魔も人形のように転がっていただけだ。

だが、君の髪は真っ黒になっていたし、使い魔を使役したことは予想がついた。

猫が経過を把握していたから俺も聞いて、空っぽだったから急いで魔力を吹き込んだ。みんな何があったかなんて知らない」


それを聞いてわたしはその後のわたしの状況を知った。

魔力が空っぽのままだと生きてはいられるが魔女には戻れない。ルシアンは、わたしの魔力を持っているから、急いでわたしに魔力を戻してくれたのだろう。

向こうのお父様とお母様も魔力混合をしていると、それが出来ると気づいてくれるといいのだけど、もう会うことはない。


「おかしくなっていたの。私がいなければみんな幸せだと思っていたの。でも、私がいない世界を見てきたら誰も幸せじゃなかった」

「当たり前だ。少なくとも俺の人生の楽しかった大半は君と過ごした日々なんだから、幸せなわけがない」

ルシアンは何を言っているとため息をついた。

「ただ、リチャードがそう仕向けたことは聞いている。本当に戻ってきてくれて良かった。」


ルシアンが私の手を両手で握り額に当てて息を吐いた。

手に彼の温かい息がかかる。

わたしは体験した話を、ルシアンに話しはじめた。

彼は驚いた顔をしていたが同時に納得していた。


「そういわれれば納得する。俺は小さい時から魔力が強すぎて親からも兄弟からも疎まれていた。寄宿舎だったが、家に戻ることもなく、先輩も同級生からも攻撃の対象になることはあっても友人も一人もいない。そんな状態で入団した俺をみんな持て余して君の護衛になったんだ。」

「そうだったの...」

向こうの世界にいたルシアンは、そのまま団に居続けたルシアンだ。

「向こうの世界は、もうないのよね。ルシアンは寂しい思いをしてないのよね」

「向こうだ、あっちだというが世界は一つだよ。ただ君が存在したかしないかだけだ。ここにいる俺がたった一人の俺だ」


そう言われてじっとわたしはルシアンの顔を見た。

目の下にクマがあり、服は乱れ、汚れて普段のきっちりとしているルシアンではなかった。

それはあの世界のルシアンとも違い、心をきちんと表現できるルシアンだった。

どれだけ心配をかけていたかわかる。


「良かった。ルシアンが、いつものルシアンで良かった。」

「そんなに君を知らない俺は酷かったのか?」

「酷くはないわ。でも、みんなに理解してもらえなくて、本当は彼が優しいことを誰も知らなかったのよ。みんな怯えてた。魔術師も聖女も。そう、クラリス様も付き合うどころか、ルシアンが『俺たちは付き合ってるのか』って聞いただけで腰を抜かして怯えていたわ」


それを聞いたルシアンは、ぶっと声を立てて笑った。


「リチャードと一緒にクラリスが追いかけてきていて、兄の家に居座っていたんだ。

彼女はもし、ラベンダーがいなければ俺たちは結ばれていたと言った。だが、そうなったら、俺たちはお互い幸せじゃなかったという話をしたんだ。

でも、君の話を聞いてそれ以前に、俺は君と出会わなければそもそも、人と付き合える人間じゃなかったことを忘れていたな」

「わたしは、わたしのいない世界でクラリス様と幸せに暮らしているあなたを見たら納得できると思っていたの。でも、実際には結ばれるどころか付き合ってなくて、つい、ほっとしてしまったわ。でも、ルシアンが私に言ったの。クラリス様と付き合ってないことにホッとするなって。自分と一緒に幸せになりたいと願ってほしいといわれたの。」

「そうだな。俺だったらそう願って欲しい」


ルシアンは手を握りながら、優しく頭を撫でた。


「願ってる。あなたの幸せになりたい。あなたのそばにいたい。ずっと一緒にいたい。あなたと幸せになりたい」

わたしは、いいながら声が震えてきた。

「毎日泣いたの。ここに戻りたいって。あなたのそばに戻りたいって」

「ああ、戻ってきてくれて良かった。そして、君の心も戻ってきてくれて良かった」

ルシアンはわたしの目から溢れる涙をぬぐってくれる。

そして、もう一つ思い出す。

「そう!あとね、あなたは種馬じゃないの!わたしちゃんとあなたと結ばれるつもりよ。だって、子種が目的じゃないの。ちゃんとあなたと関係を持ちたいって!夫婦になるって決めたの」

「....は??」


ルシアンが撫でていた手を止める。

目を見開き何を言い始めた?という表情だ。


「は?じゃないの。だってルシアンは自分を求めてくれる方が嬉しいって言ってたわ。色々考えたの。わたしはルシアンを求めてるって。他の人がどうかではなく、わたしが好きで求めているのよ」

「ちょっとまて!ラベンダー、まさかあっちの俺とそんな関係やそんな話をする仲になってるのか」

「いいえ、猫には発情しないから安心しろって。私を人の姿で見ることができる俺を幸せにしてやれって言われたの。だから、ちゃんと伝えるわ。わたしはあなたを求めてるし、元気になったらあなたを襲うわ!!」


そうわたしは言い切ってホッとしたのだけど...

ルシアンは、真っ赤になり固まって動かなくなってしまった。






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