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天才魔術師団長は天才魔女姫を壊せない  作者: かんあずき


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12 王宮に潜む毒と、魔術師団長の刃

「ルシアン様が怒るのも当然だわ」


エリザベートとリチャードとの面会を終えて、私はどっと疲れが出たのと同時に、ルシアンやそれを支えている魔術師団に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


(リチャードお兄様が将来王になったら...)


考えたくない。

頭を振って、一旦気持ちをリセットしよう。


このあとは、第二夫人セレスティアと、その息子クリスへの挨拶だ。

エリザベートと同じ化粧品の土産を持って、私はその部屋の扉を恐る恐るノックした。


「やあ、ラベンダー。久しぶりだな。……へえ、前よりは見られる顔になったな」


相変わらずの口の悪さ。

クリスは、王子らしい金髪も服装も完璧なのに、顔つきだけが妙に荒んで見えた。


「クリスお兄様、お久しぶりです。この度こちらに戻ってきたのだけど、セレスティア様は?面会のお約束をしておいたのだけど」


「ああ、今ちょっと体調崩しちゃっててさ。俺が話を聞いておくって言ったんだよ」


クリスのニヤニヤした笑いが、なんとなく気持ち悪くて、一歩下がる。


「そうなのね。帰ってきたご挨拶をしたかっただけなの。体調が悪いならまた伺うわ」


私は慌てて、帰ろうとした。


(体調が悪い時に、失礼よね)


でも、クリスお兄様の様子が、以前よりも荒んでいるような??



「お兄様、何かあったの?」

「大有りだよ。まあ、入れよ。母上は寝室にいてここにはいないからさ」


部屋を開けて招かれる。

どうしようか迷うが、相手はクリスお兄様だし、私は政敵でもない。

しかも、ルシアンのことを聞きにきたのだから...


「じゃあ少しだけ。聞きたいこともあるの」


中に入ると、なぜか服装が乱れた侍女がサッと出ていく。


「お兄様、あの侍女の方……様子がおかしくなかった?」


「別に。普通だろ」


「そうかしら……服が整っていなかったように見えたのだけど」


クリスは私をじっと見つめ、口の端を吊り上げた。


「へえ、ルシアンといい仲だとさっきの侍女が教えてくれたんだけど、まだそこまでじゃないのか?」


「そこまでって?ルシアン様の件は、お父様とお母様の間で出ている話よ。その件で聞いたんだけど、お兄様がルシアン様を怒らせたと聞いたのだけど...」


「ルシアンか。まあ、怒らせてしまったのは事実かな?だけど、へえーっ!ルシアンとなあ。」


テーブルを挟んで目の前に座っていたはずのクリスがなぜか回り込んで同じソファに座ってくる。


「まだ、詳しい話は進んでないわ。お兄様、ルシアン様となにがあったの?」

「たいしたことじゃないさ。ただ、行きつけの娼館が、隣国の経営だったってだけさ」


私は、思わず固まる。


「お兄様、お立場的に娼館に出入りするのは良くないんじゃないかしら。特にお兄様は、王位継承の可能性がある立場だわ。もしお子が産まれたら...商売だからと切り離せない問題よ」


「そのあたりの子供のことは心配はいらないさ。女も、ちゃんと娼館からここに来させてたんだよ。でも娼館の女が王城に勝手に入っているというのは問題になっただけだ」

「当然だわ。お兄様がご無事だったから良かったけど、何かあったらどうするおつもりでしたの?」


どんなに警備しても、閨の中で殺されでもしたら洒落にならない。

ましてや他国の店を利用して、暗器でも入れられてたらどうするつもりだったのだろう?

更にルシアン様はクリスの護衛だったのだ。

身の縮む思いをしたに違いない。


「そんなもの、こっちの方が男なんだからなんとでもなるさ。それよりは...な。何人か遊んだ女が人身売買をされた名簿に載ってたことがわかってそれでちょっと問題なったんだ。俺だって知ってたら手を出してないさ」


「じ、人身売買って犯罪よ。お兄様、それは王家であるなし関わらず、犯罪行為よ。分かってるの」


思わず声が震える。

そりゃセレスティア様だって寝込むわ。

しかも、城下に隣国の経営の娼館が紛れ込んでいるだけでも問題なのに、そんな犯罪行為に手を出したとなれば...


「なんだよ!だから今はちゃんと侍女で手を打ってるだろ!それともなんだ?お前まで俺に説教かよ!ルシアンの女になってるお前だって、やってることは一緒だろ。」


クリスがガッと腕を掴んでくる。

そして、更に組み敷こうとしてくるので、瞬間にクリスを風魔法で吹き飛ばす。

クリスは壁に激突したが、「お前っ!ラベンダー!!」と怒りを更に燃やし、飛びつこうとする。


足が、腰が抜けて足が動かない!!


怖い。

怖い――!


思わず目をぎゅっと瞑る。

再度、クリスの攻撃を感じたところでーー


「何をしている!」


雷が落ちたような声が響き、私とクリスの間に黒い影が割り込んだ。


ルシアンだ。


「魔力を感じて来てみれば…クリス王子、私の婚約者に何をしていたのでしょうか?」


その瞳は炎のようで、静かで、死ぬほど冷たい。

クリスはその視線に射抜かれた瞬間、ビクリと震えたまま動けなくなる。


「ラベンダー姫。王子たちは現在、調査対象です。お一人での行動は控えてください。」


言うが早いか、ルシアンは私を抱き上げ、転移の魔法で自室へ戻った。


私は――

兄に襲われかけたショックで、ルシアンの服をつかんだ手をどうしても離せなかった。

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