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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第三章

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113/124

113 別れはすでに起きていた

「兄さん久しぶりだな」

「ああ、ルシアン。結婚おめでとう。活躍の噂はかねがね聞いていたが、まさか姫と結婚するとはな。ここに姫も連れてくれば良かったのに」

俺は事前に連絡して、兄と久しぶりに再会し握手を交わす。

長男のクロードは、自分とはあまり似たタイプではない。

野心も強いし、まだ幼かった自分に対しての牽制も強かった。見栄えも良いタイプとはいえない。

他の兄弟に対しても牽制しているとは思わなかったが、あまり関わらなくて良かったのかもしれない。

それぞれの立場でお互い活動できる場を持ったわけだから。


だが、ここは国境の要となる領地だし、他の魔力もそれなりにある兄弟とも上手くやってくれとは思う。

ラベンダーに対してはどう思ってるんだか?

無難に返答しておくか。


「いや、旅行を兼ねて車で北部までやってきた。思ったより時間がかかって妻は疲れを溜め込んでいる。少し休ませてやりたいと思って、父上と母上にみてもらっているんだ」


俺は、父母からも歓迎されている様子を暗に伝えてみる。

クロードからすると意外だったらしい。

少し目に翳りが見えたが、すぐに戻してラベンダーのことを続けた。


「そうか。いや、色々大変らしいって聞いたからな。お前も断れない結婚で大変だったな」


聞いた??

誰からだ?俺は不快感を隠さずクロードにきいた


「どこからの噂だ?確かにきっかけは王からの提案だが、最終的には俺がお願いしてやっと姫に結婚してもらったんだが??悪意ある噂に振り回されて困っているのはこちらだよ」


思わず、兄が妻と思われる女性と顔を見合わせる。

挨拶をしておこうか。


「初めまして。弟のルシアンです。いつもは魔術師団で魔術師として勤務しております」

俺はその女性に挨拶する。

彼女は俺を上から下までじっくり眺めながら驚いたように話した。

「初めまして、妻のジョセフィーヌです。主人や他のご兄弟とはあまり似ておられないのね」

「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。クロード兄さんとも顔を合わせたのは10年以上前のことですので、他の兄弟も長い期間顔を合わせてないんですよ」

「そうなんですね。夫が後を引き継ぎまして、社交シーズンになると周囲の方からいろんなお話を聞く機会があるんですけど、ラベンダー姫の噂はあまり良いことを聞かなかったものですから、てっきり結婚の話も姫のわがままに押し切られたという噂を信じてしまいましたの。でも、ルシアン様が希望されたものなら良かったですわ」

ジョセフィーヌは、困ったように笑った。

「妻は、全くわがままを言ってくれないのでむしろ困っているぐらいです。むしろわがままに押し切られてしまいたいぐらいです。ちなみにそれを噂していたのはどなたか伺っても?」


俺は、冷たい微笑みを絶やさず、兄夫婦を見つめた。

クロードもジョセフィーヌも、目を彷徨わせる。


「それが...どうしましょうか??あなた」

「うーん。実は、リチャード王子が数日前からこちらの領地を訪れておられるんだ。それで、その恋人の方も一緒にきているんだが、ルシアンと自分を王が引き裂いたのだと私たちは聞いたもんだから。リチャード様はそれを不憫に思って面倒を見ているそうだけど...王子までもそういうならそうなのかと」


俺は血の気が引く。


「リチャードとクラリスの両方が来ているのか?」

「ええ、リチャード様はルシアン様と顔を合わせると色々言われたからと外出なさっていて、クラリス様はまだこの邸に滞在しておられるけど」

ジョセフィーヌも困ったように小声で話す。


「なんで!」

「だってリチャード王子が連れてきたんだぞ。そりゃ、もてなすだろうが...」


俺はすぐに、危険を察知し父母にラベンダーを守るように魔術通知を送ろうとした。

だが


「至急連絡ーーリチャード王子がラベンダー姫を連れ去り。今追いかけている」


こちらの連絡と同時に父から至急連絡が飛んでくる。

血の気が引き、

「すまない、リチャードがラベンダーを連れ去った」

俺は、クロードに大至急領地内を探すように伝える。


「ま、待てよ!二人は兄妹だろう。どちらが悪いかなんて私たちにはわからない。リチャード王子を敵に回すわけにはいかないだろう。魔女姫よりリチャード王子の方が、今後すり寄っておいた方がいいんじゃないか」


クロードは困ったように目線を彷徨わせる。

俺は、すぐ戻ろうと振り向くとそのドアの先にはクラリスが立っていた。


「どけ!なんでここにいる?前にも言ったはずだ。俺はずっとラベンダーに想いを寄せていたことに気づかず、君にラベンダーを重ねてみていた。だが付き合っていた間は、君に対して誠実に対応したと思う。それに、君の方から王子二人と関係を持って君の方から別れを告げたはずだ。それなのになぜ、俺たちの邪魔をする?なんでここまで彼女に固執する?」


クラリスは、全く反省していないそぶりで悪いのはラベンダーだと弾糾する。


「みんなラベンダー、ラベンダーっていうからよ。あなたも、そしてリチャードもクリスもね。ラベンダー姫がいなかったら、私たち別れてなかったわ。だって、あなたが王子たちを紹介してくれた後、クリス王子は私に言ったの。あなたが本当に好きなのは妹だって。ずっとあなたは妹の護衛を続けたがって、断られている。俺も妹と比べられるからその辛さがわかるって。同じ傷を持つ同士付き合わないかって言われたの。」


「そして、付き合ったのは君だ。それは君が選んだ選択で、ラベンダーは共通項に選ばれたに過ぎない」


言いがかりもいいところだ。

早くラベンダーの元に駆けつけたいのにーー

あれは苛立ちがとまらない。

だが、クラリスは一方的に話し続けた。


「リチャードもそうよ。ラベンダー姫は、魔女だから人の心を操るのが上手いって。瘴気を悪魔に変えるし、瘴気を浄化できる聖女を目の敵にしたんだろうって。あなたが寝言でラベンダー姫の名前を呟いていることを話したらすごく慰めてくれたの。かわいそうだって。

たしかに選んだのは私。だけど、あなたがラベンダー姫と出会わなければ、王子はわたしに声をかけなかったわ。そして、その後は王子とも別れたのだもの。王がラベンダー姫とあなたを結婚させようとしなければきっと私たちやり直せた。

そもそも彼女がいなければ、今頃あなたの隣にいたのは私だった。私たちには子供だっていたかもしれない。幸せにきっとなっていたわ」


クラリスが俺を出すまいとドアの前で手を広げる。

どんな飛躍だ。

俺はクラリスをまっすぐ見つめて話した。


「クラリス、今度こそこれを最後にさせてくれ。

俺と君はどちらにしても幸せにはならなかった。ラベンダーの存在なんて関係はない。

ラベンダーがいなければ、王子が君にちょっかいを出そうとはしなかったかもしれない。だが、俺とそのまま交際を継続しただろうか?」


「するわ。するにきまってるじゃない。私はあなたとの交際に満足していたわ」


クラリスはキッと俺を睨む。

仕方ない。

きちんと話をしないと延々と繰り返されてしまう。

何度もラベンダーを壊されたんじゃたまらない。


「君は、俺の両親に会ってこの領地のことを見たようだね。俺は第五子で、ここを継ぐこともない。ここは田舎でしかも国境で危険も高い。君が目指すような貴族としてチヤホヤされる立場にはならない。社交界にもいかないし、平民のような暮らしになる。魔術師団長も30代になればみんな次の世代に引き継ぐ。そうなれば俺は無職だよ。」


俺はクラリスが思っている未来とは違うことを告げる。


「そんなの、私がなんとか盛り立てて、みんなからあなたの素晴らしさを知ってもらえるように努力するわよ。魔術師団長だって、前の団長さんは長かったし無理に退職する必要もないわ。」


やっぱりそうだ。

クラリスは、俺が好きだったわけではない。

俺を知っていたら、俺がそれを望んでいないことは知っているはずだ。俺と付き合いながら、俺もクラリスもお互いが望んでいるものを見ていなかったんだ。


「それは君の幸せだ。俺はそんなことを望んでない。爵位が欲しいなら、クロード兄さんと魔力で争って辺境伯になりたがっただろう。でもそんな気はないからこの領地にも足を運ばなかった。」


クロードは一瞬それを聞き顔が険しくなるが、俺が求めていないことを聞きほっとした表情をみせる。


「魔術師団もずっと居続けたいと思ったことはない。その段階でお互いの価値観は違っていたんだ。仮に結婚まで進んだとしてもお互いが不幸にしかならなかったと思う。

俺たちは、別れたけど最良の道をそれぞれに選んだんだよ。君は王子達の妻になれるかもしれない未来への可能性、俺は長い片思いの成就。俺はただ愛する人と幸せを感じながら過ごせたらそれでいいんだ」

「そんなの!クリス王子は廃嫡になったわ。リチャードも、王になれないかもって。王子達の妻になってもいいことなんてあるわけがないわ」

「それなら、次にアタックしたらどうだ?少なくともリチャードは貴族の世界でも顔は聞くだろうし、クリスの母親は金持ちだ。俺は両方持ってないことは断言できる。

君が求めている男性像と俺は違う。何度でも言う。俺たちにもしかしたらあったかもしれない未来は、お互いに幸せじゃない未来だ。」


クラリスは拳を握りしめた。

じっと考えている。


「すまない、俺はラベンダーを探す。これでお別れだ」

「.....瘴気よ....」

「なに?」

「魔女は瘴気を浄化できないから瘴気の中で消すって言ってた。リチャードからラベンダーが消えたら、みんな幸せになるって。あなたも私がしばらく慰めてあげたら元の鞘に戻れるって言われたの。でも、元鞘に戻っても確かにあなたじゃ私の求めるものは何も持ってないわね。」


クラリスはプイッと顔を背け、部屋を出て行こうとして止まった。


「悪かったわ。姫がいてもいなくても、付き合っている限り、あなたの性格なら姫じゃなくて私を選んでくれたわ。あなたはきっとそばに居てくれた。だから、王子たちとうまくいかなくて、あの時手放さなければよかったと思って苦しくなったの。でも、私が手を離さなければあなたはそばにいてくれたけど、きっと私はただ、魔力が高いだけのあなたでは満足できなかったと思うわ。」


静かに扉は閉められる。

俺は、ふーっと息を吐いた。

この後クラリスがどんな伴侶を選ぶかはわからない。

王子達とどっちつかずで付き合い続けるのか、新しい貴族、もしくは金持ちをあたるのか?


だが今度こそ終わったように感じられた。

俺はクロードたちに告げる。

「慌ただしくてすまない。俺はラベンダーを探す」


王とヴァネッサ王妃にも魔術通信で連絡を飛ばす。

そして、父母のもとに急いで転移魔法を展開させた。







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