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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第三章

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110/124

110 妖精のいない畑で

ラベンダーの精神状態は一進一退で、実家に向かってここまで走ってきたものの、いざ領地に入るとどうしようかと俺が心配になってきた。


「ラベンダー、俺は家族との関係は良くないんだ」

俺がそういうと、ラベンダーは困ったように眉をハの字にして俺を見つめる。

「あんた、何やらかして家族と疎遠なの?」

「おい、なんでやらかした前提なんだよ」

「だって、あんたラベンダーがいなかったら、碌な人生じゃないでしょ。無表情だし、言葉は足りないし、手は出せないし、女には騙されるし。あんたの利点は、その無駄にいい顔ととてつもない魔力と魔術。それ以外ないわ」


使い魔は、ラベンダーの膝に乗ったまま尻尾を丸める。

俺はその容赦ない言葉にオブラートに包んでくれとため息をついた。


「猫、本当だとしても、お前も大概だからな。ただ、猫の言う通りだ。ラベンダーがいなかったら、本当に魔力と魔術だけが人より優れている以外利点はない。だから家族から爪弾きにされたんだよ」

「あら...思いっきり核心をついちゃったかしら?」


ペロッと舌を出すのがいかにも魔だ。

人のように、いや、猫のように見えて魔というのがやっぱり特性で嫌なところをついてくる。

魔の特性だ。弱いところが好物なのだ。

それを悟られるのが腹立たしい。


「そうだな。それで、もしラベンダーに嫌なことを言う奴や、失礼な態度を取る奴がいたら実家からは、すぐ帰ろうと思ってるんだ。

それはラベンダーのせいじゃなくて、俺を貶めようと思っている奴だから気にしなくていい」


ラベンダーはじっと俺を見つめる。

意味がわかっているだろうか。


「そうね」とも「わかった」とも言わないが、悲しそうな顔をしている。もしかしたら、俺が悲しそうな顔をしているのだろうか。

俺は自分の顔を手を当てて撫でる。


「ほとんど家を出てから戻ったことがないんだ。学生時代は寄宿舎でそのあとは魔術師団に入団したし、ラベンダーの護衛にすぐについていたし...」


なぜ俺はこんなに言い訳のように話している?

もしかしたら、これから先がうまくいかないことの言い訳を無意識にしているのか...


「国境なのね」

使い魔が、国境に張り巡らされた防御を車窓から眺めて声をかけた。


国境には壁や、侵入防止の魔法が常に展開されている。

魔術師団もここの防御を定期的に確認に行く。

だが、俺はそれも他のものに任せ、家に帰らないように気をつけていた。

「雷属性の防御壁を魔法陣で展開させているんだ。あとは定期的に騎士団が侵入がないかを観察してくれる」


そこまで言って、ますます不安になってくる。

魔女なんておとぎ話のようなものだと、ここで知るものはほとんどいないと母は言っていたが、むしろ、これだけ王都の人間が出入りする領地はそう多くない。

俺がラベンダーと結婚したのに、誰も両親にその話をしないなんてことあるだろうか...


少し家に寄る前に、小さい店に顔を出してみるか...

俺は、領地にはいってすぐの魔道具店に顔を出した。


俺の一家は俺ほどではないだけで、みんな魔術が使えることもあり、一般人も魔石や魔道具で生活が豊かになるようにと広く魔術が浸透した領地だった。

魔道具店には、武器もなんらかの属性をつけたものが普通に売られているし、アクセサリーもお守り程度のものから強固な防御が出来る物まで領民がつけられるようになっている。

これは隣国のキルベロアから、もし攻撃があっても、みんなで領地を守ることができるようにするためだ。


「こんにちは、剣を見せてもらえるか」

「ああ、もしかしてルシアン魔術師団長か?」

「そうだが...」

「新聞で魔術師団の活躍をよく見ている。故郷のヒーローだからな。もしルシアン殿がうちのものを使ってくれたら、俺は土産用の模造剣を大量生産するぞ」

店主の反応から自分はとりあえず領民に受け入れられそうだ。だが...

「おや?そちらの方は..もしかして姫様か?」

「あ、ああ」


しまったと思う。噂になってしまうか...


「へえ。魔女は美人さんが多いというのは本当なんだな。いや姫様だからか?こんな綺麗な人がうちの街にいたら争奪戦だ。」

ヒヤヒヤするが、好奇心いっぱいにジロジロみられるだけでなんとか済む。魔女を忌避する感じはない。


俺はぐるっと店内を見回し、魔法剣と魔法短剣を一つづつ購入する。

自分で作れるが、一般の店でどんなふうな属性でどのくらいの強度で売られているのかも気になるし、短剣はいずれラベンダー用に作ってやりたいと思っていたので、操作性などが気になったのだ。

レジで支払いを終える時店主が笑顔で口にする。

「そういえば...キルベロアが一時鉱山を狙っていると言った話があったが、ルシアン殿たちが守ってくれたそうだな。これからも頼むよ」

俺は静かに頭を下げて店を後にした。


この話には少し続きがある。

以前ラベンダーも聞いたようだが、リチャード王子がやらかしてくれたのだ。


国境に接するキルベロアとは関係がいい国とは言い難い。

それなのに、ラベンダーが戻ってくる少し前に、リチャード王子は、ここの領地にある鉱山をキルベロアに無償であげると、交渉の場で口にしてしまった。

もちろん、なんの見返りもなくだ。

やばいと思い、俺は護衛でその会議で後ろに立っているのが役目だったが、思わず王子の声を急いで封じた。

だが、リチャード王子が口に出した言葉は当然、国家間で問題になっていたし、交渉の場で俺が越権行為をしてしまったことも問題になっていた。


結局、王が、

「鉱山が欲しい?そんなにうちといい関係だったかな。ああいいよ。それなら、キルベロアの造船技術とその工場をよこせ。なんでタダでやる必要がある?王子がそういった?なに寝ぼけている?王子は交渉役にすぎない。決めるのは私だ」

と最後のサインをしなかったことで話は頓挫し、俺もお咎めはなく終わっていた。


(あの時みたいに、クリス王子の口も封じて仕舞えば、ラベンダーは傷つかなかったのに)


ラベンダーは、車に乗り込んでからも、俺の顔をじっと見ていた。俺は微笑んで、エンジンをかける。

とりあえず、店主が魔女を傷つけるような言葉はなくて安心する。


俺は、再び実家に向かって車を出した。

母がいうように、庶民にとっては魔女はおとぎ話のようなもので、もっとそばにあるキルベロアの方が脅威なのだろう。


ふと視線を感じて、ラベンダーをみると変わらずじっと俺を見つめている。

こんなにじっとみるのは珍しい。


「どうした?ラベンダー?何かおかしいか?」

ラベンダーは首を振る。

「どうしたの?ガツンとルシアンに何か言ってやりたくなったの?」

使い魔がラベンダーの膝から見上げる。

「おいっ!絶対違うとわかってるのに言ってるだろ」

「あら、代弁よ。代弁!だって、使い魔ですもの。主人の気持ちがわかるじゃないの」

「う...そういわれると、言われ続けても仕方ないことばかりの連続だが」


否定できない。

いっそ言ってくれたら。

もし怒鳴ってくれたら...

だが、ラベンダーは首を振る。


「ルシアンのそば...」

「え??」

「いる...わたし...」


じーっと澄んだ目で見られ

「ラ、ラベンダー...」

思わず俺もじっくり目を合わせようとしたら

「危ない!!」

うおっ!!


対向車線にはみ出しそうになっていた。

危ねえ!!

領地に入り、格段に交通量が増えていた。

領地は広く、集団で乗ることができるトロリーや、魔石の車、10センチほど浮かんで走るフローボードが走り回る。


「交通量を増やすことで、街を栄えさせているのね。道路もしっかり整備されているし...ルシアンの家なかなかやるじゃない」

使い魔が、ぶつからなくてよかったと胸を撫で下ろした。

ラベンダーは、ぶつかりそうになった衝撃で、まっすぐ前を無表情で見つめている。

もう、こっちを見ていない。


でも、途切れ途切れだったが、俺のそばにいるからって励まそうとしていたんだよな。

こんな状況になっても、俺のことを心配してくれるんだよな。


俺のために自分の服を選んで、俺が不安そうにしていたら寄り添おうとする。

自分がもう壊れかけるほど、心を病んでいるのに。


交通量の多い道を抜け、住宅が集まる場所をぬけると、農業で生計をたてていると思われる家が、ポツンポツンとみえる。


一面に小麦畑が見える。

北部は寒い地域が多く、寒さに耐えられる麦が植えられている風景が広がっている。

まだ緑で穂をつけていないが、温かくなるとぐんぐん伸びるのだろう。


「ラベンダー、土の妖精がこの辺りは多いな。」

畑で、走り回って遊んだり何かをパラパラ撒いている

「何を撒いてるんだろうな?楽しそうだけど」

少し車を止めて、妖精の様子をみせてやろうとする。

だが...

「なにも...いないわ」

ラベンダーは首を傾げる。


俺は使い魔と顔を見合わせる。

「ラベンダー、畑にたくさん遊んでいる妖精はみえるか?」

「みえないわ」

「光と水の妖精もあそこにいるわよ。」

ニャニャっと慌てながら使い魔も、別のところを肉球で示す。

「いないわ」


魔女にしか、もしくは魔女と魔力を混合させないと見えない妖精たち。

「おい、ラベンダー??」

俺は、慌ててラベンダーの両肩をもつ

「本当に見えないのか?」

ラベンダーは困ったようにじっと見た。

妖精が見えないことに動揺していない。

もしかして...自分が魔女だということを忘れているんじゃないか?


「魔女の力がなくなっているってこと?」

使い魔も呆然としている。

せっかく、少しづつ会話に変化が見られ始めていたのに。

むしろ悪くなっているんじゃないか?


俺と使い魔は呆然としてしまった




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