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天才魔術師団長は天才魔女姫を壊せない  作者: かんあずき


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11 平和の証が多すぎる部屋

私ーラベンダーは、ルシアンから指導を受けることを決めた翌日、私は久しぶりに帰ってきた報告と兄二人がルシアンを怒らせた内容が気になり、彼らに会うことにした。


第一夫人のエリザベートと息子リチャードは、部屋に案内された時からヴァネッサや私とは違う部屋にいた。


なんか、高そうな家具とか??

何このトーテムポール?壺?

高級な物がゴテゴテして、部屋に物が多すぎじゃない?

こんな部屋だったっけ?


私は首を傾げる。


「まあ、ラベンダー様、しばらく見ない間に大人になったのねえ」


第一夫人エリザベートはゆったりとしたドレスに身を包み、久しぶりに会った私の姿を値踏みする。


「年齢だけです。エリザベート様のような落ち着きは、なかなか身に付かず恥ずかしい限りです」


母ヴァネッサのやらかしを多く知っている身としては、顔を出してご挨拶するのも震えが止まらない。

それを見て、エリザベートは眉を顰めた。


「ラベンダー様、ヴァネッサ様のようにはなる必要はありませんけど、もっと気楽になさって。本当にお二人は似ておられませんのね」


私は、何度もそう言われた言葉に、曖昧な微笑みを見せる。


「田舎の森に篭っておりましたので何も手土産らしいものもないのですが、効果の高い化粧品を作ってみました。良かったらお試しください。つけるだけではなくて、ハリや潤いを同時に与える森の泥を微粒子にして練り込んでみましたの」


そっと侍女たちのものも含めて10セットほど見せる。


「安全の確認のために、使い方をお見せしますね」


毒や害のあるものではないことを、身をもって見せると侍女たちも、うれしそうに寄ってくる。


「素敵ねえ。ヴァネッサ様もこういうのを作っているのかしら?」


「どうでしょう?昨日帰ったばかりで、母よりはむしろルシアン様とお話ししてましたの」


いよいよ本題にーーだが...


「聞きましてよ。ラベンダー様も、隅におけないわね。今回の帰省は、お二人の婚約のためとか...早速、昼夜仲良くなさってるって話じゃないの」


ニンマリ笑ったエリザベートは、ふふっと笑いながらも、私とルシアン様と間のことを聞きたがる。


(なんにも!何にもないんですってば!!)


顔がぼぼぼっと赤くなり、胸がバクバク言い始める。


「な、なんのことかしら?皆さん好きに言われるから。婚約ではなく、彼は私の家庭教師になってくださることになって...」

「あら、それでしたら侍女たちに訂正しておくわね。なんでも、二人の目を覆いたくなる姿にヴァネッサ様が遭遇してショックを受けられたときいたのよ」

「誤解です。水を二人で浴びてしまっただけで」

「お勉強で、二人で仲良く水浴び...ね。どんなお勉強なのから聞かずにおくわね。」


エリザベートはオホホと扇子を広げて笑う。


ああ...噂が勝手に歩いていく。


「お母様、ラベンダーをいじめないで。とはいえ、ルシアンの話を聞いた時には驚いたけど、すっかりラベンダーは綺麗になったから、ルシアンがメロメロになるのも納得だよ」


エリザベートの隣に座っていたリチャードが、笑顔で間に入る。

色々訂正したいが、話を戻すよりは進めたい。

相変わらず、リチャードお兄様は物腰優しく、穏やかだ。

なぜ、ルシアンはリチャードに切れたのだろうか?


「お兄様、ルシアン様から学びを受けるのだけど、かなり厳しいって本当?」


とりあえず遠回しに聞いてみよう。

リチャードは性格はいいが、頭が悪いので伝わるかどうか?


「厳しいよぉ!できなかったら容赦なく水や炎や雷が落ちてくる。死んでも生き返らせるから安心しろっていうけどさ。前は護衛もしてたんだけど解任されて助かったよ。この間も僕がキルベロア国と会談してたらさ、突然話せなくなる魔法を発動させちゃって困ったんだ」

「えっ?会談中に??」

「そうだよ。うちの鉱石を少し無償でくれっていうから、そんなの、山をそのままあげるって言ったら突然だよ」

「お兄様?なんで山を丸々あげるの?何か見返りがあるの?」

「見返りなんてないよ。キルベロア国は、鉱石が取れずに困ってるんだよ。人類助け合いだよ。」

「でも、キルベロアはその鉱石を使った造船産業が盛んよね?そのあたりの協力とか....」

「ラベンダー、ダメだよ。困っている国に見返りを求めるなんて!」


「お兄様、勝手に我が国の資源を他の国に渡したら、しかも鉱山の土地は国内なのにダメ...よね?」

「君もルシアンの影響を受けすぎてるよ。みてごらん、このトーテムポールを!」


「このトーテムポールはどうしたのかしら?」

「よく聞いてくれた、ラベンダー!これはね、魔術師団の動きを知りたいっていうから、ルシアンから聞いた魔術師団の情報を教えてあげたんだ。そのプレゼントだよ。友好の証だっていうのにさ、なんてことをしてくれたってルシアンに殴られたんだ。当然父上に抗議したらなぜか更に怒られたんだ」


リチャードが不満げな声を上げる。


「お兄様、きっとルシアン様はその動きを必死で考えたんじゃないかしら?それを勝手に言われたら悲しいと思うわ」


私は丁寧に、まるで姫のように、いや姫だけど、穏やかに怒らせないように兄に伝えたが、ダメだ...こりゃダメだ。

我が兄ながら、今こそ水の精霊に頼んで頭から水をぶっかけたくなる。


エリザベート様はどうお考えなのかしら?


ちらっとエリザベートの様子を見ると、リチャードの肩に手を置いて「あなたは間違えてないわ、平和を紡ぐ素晴らしい王になりますとも!」と言っている。



「もしかして..このお部屋にあるのは、みんなそんな感じでいただいたのかしら?」

「そうだよ。いろんな国との平和と友好の証だ」


私は思わず絶句してしまった


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