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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第三章

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101/124

101 善意で治しただけなのに

「今日は朝からどうしたのですか?」

武道場にルシアンが来ている。

それは相当珍しいことらしく、魔術師団員はそわそわしているし、騎士団はまるで珍獣をみたかのような目で見つめる。


聖女たちの中は、すでにルシアンの接待要員がいるようだが

「怪我をする気はない。周りの若いものたちのケアを頼む」といわれシュンとしている。


「空中に魔法陣を3秒以内に二つ出してみろ」

指示された魔術師は、氷や水、土と風、火と木などいろんな魔法陣を出す。相性が悪くて取っ組み合いをしている精霊もいるし、仲良く力を出し合うものもいる。


「なるほどな。これが精霊か..」

ルシアンが呟いているのを聞き、私もなるほどと今日ルシアンが来た意味を理解する。魔力混合をしてから、ルシアンにも妖精や精霊が見えるようになった。

その確認ね。私は一人で納得し頷く。



今までは文字列にしか見えなかった魔法陣の中に、やる気満々にその円盤を走り回ろうとする精霊や、歩いてはつまづく精霊、喧嘩や不満を顔にする精霊は見えている。


妖精に比べ、精霊は几帳面でサービス精神はないので、きちんと指示を与えていない、きちんと魔法陣が描けないと動けないのだ。


インク切れで魔法陣の輪っかが途切れるなんて論外ということね。ふむふむとみんなが私の魔法陣を困ったものを見るかのような目で見ていた理由が理解できた。


人の魔法陣を見るのはとても勉強になる。

何度も描き慣れた彼らは、ベースになる魔法陣を作っておき、そこに書き加えたり修正をかけている。

ルシアンは改善点を丁寧に説明しているが、それだけで周りのやる気がみなぎっているのがわかる。


騎士団も、魔術師団の練習の雰囲気に飲み込まれ、剣の音が普段以上に強く聞こえてくる。

そのため、吹っ飛ばされたり、怪我をしているものも多そうだ。


「姫、回復頼めないかな?」

ジェシーが小声で私のものにやってきた。

ジェシーの肩に血が滲んでいる。

「金属剣を使って練習し始めたんだけど、怪我で腕が上がりにくくて」

よく見ると、肩以外にも傷がある。

「ほら、今日は、いや今日もかな。聖女様は俺たちには治療はしてくれないからさ」


最初は新人だけかと思ったが、若い経歴の浅い騎士や若手魔術師は聖女たちの治療は受けられないらしい。人数も限られているし、魔力も限りがあるから仕方ないのかもしれない。


私のお祖父様、お父様とお母様ゆずりの魔力量に感謝しないと。しっかり人に還元して姫としての責務とルシアンの妻として頑張るからね!


私は杖を取り出して、ヒールと小声で囁くとドライアドの杖が、ジェシーの傷の修復にとりかかる。

みるみる間に傷は塞がれる。

「痛みがなくなるのは助かるな。もうひと暴れできるよ」

それを見て、ジェシーは嬉しそうな声を上げた。


「ふふっ。でも他にも怪我している人もいるし、練習しながらヒールできる方がきっといいわよね」

ジェシーに呟くと、へっ?という顔をされた。

「いいけどさ、目立たない方がいいんじゃないか?」

なぜか慌てて、ちらっとジェシーは聖女たちをみる。

私もつられてみるが、聖女たちがこちらを気にしているようにみえる。

いや、思いっきり睨まれている。

さーっと血の気が引く。

ジェシーの傷、治しちゃいけなかったのかしら?


「目立つかしら?わかったわ!こっそり治すわ」

「いや...姫のこっそりは無理だ」

今度はルシアンがなぜか睨み始める。

そうすると、ジェシーは慌てて

「あ、ありがとう!助かった!じゃあな」

と元の場所に戻っていった。


どうしようかしら?

でも、血を流している人もちらほら。

金属剣の練習は、本当の剣に備えて時々行われるらしく、見るからに痛そうな怪我をしている者がちらほらみえる。


見えないように、手は服に隠して...

「オールヒール!」

騎士団に大きな光がパッと光る

「し、しまった。範囲が広すぎたから光が出ちゃった!」

慌てたが、みるみる間に騎士団の傷が治ってしまい、みんなが一斉に手を止める。


しまった!!

練習の手まで止めてしまった!

しかもルシアンがいるのに、私ったら大失敗!!


さーっと顔色が悪くなる。

あ、居た堪れない。

モジモジして小さな声で 

「ごめんなさい。余計なことしちゃった」

そう謝ると、騎士団からなぜか歓声が起こる。


「戦っている最中でも傷を治せるのか?」

「姫すごくないか?」

「騎士団にきてもらえないかな?団長に頼もうぜ」

「すげえ、怪我する前より体が軽い」


怒られるかと思ったが、予想外に感謝されたのでホッとした


◇◇◇


だが、その背中にいる聖女たちの冷たい視線は更に強くなり、回復魔法を得意とする魔術師たちも眉を顰める。


その空気に気づいたルシアンは、しまったと感じた

しかし、喜ばれて嬉しそうな顔をしているラベンダーを止めることが出来ない。

やっと人に普通に接してもらえたのだ。


使い魔に言われて、騎士団の誰の下着を洗濯させられてるのか?若いどんな奴らとつるむのか?嫉妬心に駆られてきただけなのにーー

ほんの短時間で、ラベンダーの善意100%と聖女や部下の妬み100%が取っ組み合いを始めた姿が、妖精や精霊以上に見えてしまった。


ラベンダーは何も悪くない。

だが、何も悪くないのに、妬みを買うなんて思ってもないだろう。もはや、魔女がどうかという問題ではない。

唯一問題があるとしたら、ラベンダーは魔女だが、誰よりも心が聖女なのだ。


俺はどうしたものかと悩むのだった。




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