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CrumbleDays〜第2話〜

CrumbleDays〜第2話〜

PC3 PC4 PC5のオープニングです。

 UGN S市支部。S市の中心部である駅周辺からは少し離れた区画にある事務所の一室に、支部長から緊急の仕事があるからと金髪碧眼でセミロングの女性、南部なんぶ蓮紋れもんと黒目黒髪のショートで高身長の少年、北神きたがみ祐樹ゆうきは呼び出されていた。


 小さめではあるものの、ビルの一階丸々借り切っており、事務所にしている。その中で支部長室は比較的大きい部屋であり、盗聴防止対策を始めとしたセキュリティもしっかりとしている。じゃないと銃器物を置いた保管庫や、様々な薬品が置かれた医務室など、危険極まりないのである。


「急いでいるから前置きは無しね。……緊急の案件が二つ起こったの。一つは先程起こったバス横転炎上事故で覚醒したと思われる少年、黒須玲央君を保護したから、彼のケアとUGN関連の説明をお願いしたいわ」


 S市支部支部長の藤原ふじわら輝夜かぐやは淡々と告げる。この支部長が軽口の一つもなく、本題から入る時は本当に緊急の時か、キレている時くらいしかあり得ない。今回は前者のようだ。


「了解しました。それは私が担当しましょう。もうひとつの方は?」

 南部蓮紋はS市にある大学の医学部に通う大学生である。患者のケアや説明ならば自分が担当すべきだと考え、即座に了承して、先を促す。


「そっちが本題。FH絡みの別件で動いていた鈴華がその事故に居合わせたのよ。おそらく関連があるわ」

「FH絡みの事故かもしれないって事は……生き残って覚醒したって奴は狙われる可能性があるのか?」

「その可能性は高いと思うわ。だから貴方には鈴華の補佐として、彼の護衛を頼みたいのよ」


 補佐と言いながら、事件に深く関わる事になるんだろうな、と祐樹は思う。

 UGNのイリーガルとして、自分が通う学校や住む街での事件、FH絡みの事なら見合う報酬さえ出してくれれば引き受ける事に否は無いのだが。

 ただ問題は、この支部では他の支部と比べて比較的事件が多い事が挙げられる。

 こんなに事件が多いのは少し先のN市くらいのものだろうか。何か理由があるとするなら、この支部長が厄介事を引き寄せているような気がしてならない。

 自分は既に高校三年生。来年には大学受験が控えている身だ。出来れば仕事は少ない方がいい。


 つまりは、関わらなくて良いなら関わりたく無いのである。


 しかし、支部長はそれを理解しているからか、さも簡単な任務に聞こえるように話すのだ。そんな彼女の言い方は、今回もまた、厄介事に他ならないと言っているに等しかった。


「厄介な事になった場合の追加報酬はきっちり出して下さいよ」

「分かってるってー」


 厄介事なんかにならないと言わないのは、厄介事になると確信しているのだろう。だから今のうちに突っ込んで聞いておかなければならない。


「で、何か厄介事になりそうな部分はあるんですかね?」


「……まずは鈴華が追っていた案件。一人の少年がFHのエージェントではないかって話」


 先程言っていた別件だろう。その少年を追っていて『偶然』事故に居合わせたのならば、怪しいと思える。


「もう一つ、これは愛ちゃんの方が追っているんだけど。S市で活動しているFHのエージェントがまだ他にも居るみたいなの」

「ちょっと、それ私聞いてませんよ!」


 愛ちゃんこと南部なんぶ愛染あいぜんは蓮紋の弟である。自分の弟が知らぬ間に任務を受けていたとなれば、蓮紋からすれば心配にもなるだろう。机を叩いて非難の声をあげる。


「まぁ鈴華にしても、愛ちゃんにしても、もしかしたらな段階だったからね。これが確定になるなら話は別になるし、活動しているFHのエージェントは複数人って事になる可能性もあるわ」

「現時点でも充分厄介じゃないですか〜……」

「まぁ彼なら平気だと思うわよ」

「そうですけど、心配なものは心配なんですよ〜」

 蓮紋は肩を落として、今任務についてるであろう弟が無事でいる事を祈る。


「……まぁ連中が俺の手の届く範囲で何かやってるなら、ぶっ倒すまでですよ」

 祐樹は仕方ないといった雰囲気で言葉を紡ぐ。

「ありがとう、祐樹君。まぁ最初は病院に行って、鈴華と合流すれば良いからね」

「了解しました」

「了解です……」


 それでお願いね、と言われ二人は蓮紋の車で一路病院へと向かうのだった。


◆◆◆◆◆


 同時刻、金髪碧眼のミディアムヘアの少年、愛ちゃんこと南部愛染は街外れにある工場区に来ていた。愛染は蓮紋と並ぶとよく姉妹と間違われる程に小柄で華奢な外見ではあるものの、男の子である。男の子である。


 そんな彼が何故工場区などに来ているかと言えば、S市内でFHのエージェントが活動している可能性があるとして、支部長から依頼を受けていたからだ。


「まぁ悪さするならこういうところが鉄板だよね〜」

 彼は鈴華と同じく、超人の能力を使いこなしている。彼もまた十キロ先で落ちた針の音が分かるし、一定範囲内なら携帯を使わずに声を届ける事も出来る。何より彼は身軽なんてものではなく、やろうと思えば壁を走ったり、水の上を走れるのだ。


 だからこそ彼もまた、尾行や調査などに向いていた。


「情報屋のお兄さんがくれた情報だと、あそこの廃ビルに最近人が出入りしてるんだっけ……」


 雨の中、向かいのビルの屋上から話にあった廃ビルを監視していると一人、また一人と傘をさした男性らしき姿が廃ビルに入っていく。周囲を伺う様子から、ただの雨宿りとは言わないだろう。


「さて、何を話しているのかな〜っと」


 愛染はビルの屋上から、廃ビルの屋上へと移り、中に入っていく。彼は屋上のカギが空いてなくとも、窓ガラスが割れている箇所があれば入れるのだ。

 何より、雨の中だと話し声が聞き取りづらいので外からでなく同じ建物の中の方が都合が良かった。

 音の波を操って話し声を聞きとっている彼の耳には、雨は天然の盗聴防止対策といえるからだ。


「首尾はどうだ『シューラ・ヴァラ』よ」

「問題ない。僕の起こした事故でも二人程生き残っていたよ。一人はその場で覚醒していたようだね」


 シューラ・ヴァラと呼ばれた彼が何か事故を起こしたらしい。詳細は後で支部長にでも聞けば答えてくれる筈だ。


「了解した。それならUGNの連中が騒ぎをもみ消している可能性は高いな」

「あぁ、それに覚醒した男は獣化して服が破れていたが、あれは公立高校の制服だった。その線から探れば比較的簡単に分かるだろうから、そちらの確保は任せたよ『血騎士ブラッディナイト』」


 どうやら覚醒した男子はうちの学校の生徒らしい。すぐに自分にも護衛任務が下りそうだな、と思いつつ愛染は更に耳を傾け続ける。


「もう一人の方はどうする?」

「そちらは僕の方で対処するよ。知っている子だし、覚醒したのか確認は必要だからね」

「了解した。では続きはまただな」

「あぁ、よろしく頼むよ」


 そうして彼等は時間をずらして去っていった。


 どちらを追うべきか、愛染は支部長に対してメールを送る。すぐに返ってきたメールには一旦支部に返ってくるように短い指示が書かれていた。


南部愛染の侵食率が8上昇して41になりました。

北神祐樹の侵食率が9上昇して43になりました。

南部蓮紋の侵食率が8上昇して40になりました。

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