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CrumbleDays〜第1話〜

CrumbleDaysはダブルクロス3rdのルールブック1に掲載されているサンプルシナリオとなります。

今回はPC1とPC2のオープニングです。

 昨日と同じ今日、今日と同じ明日。このままの日々がずっと続くと思っていた。


 だけど、世界は知らないうちに変わっていたんだ。


 切っ掛けは、ある日起きたバス転覆事故。

 秘められた力は覚醒し、隠された真実が突きつけられる。

 それは、ずっと続くと思っていた日常がボロボロと音を立てて崩れ始めた日……。


ダブルクロスThe 3rdEdition

『CrumbleDaysクランブルデイズ

 ダブルクロス……それは裏切りを意味する言葉。


◆◆◆◆◆


「こんな時間でも人多いのかよ……」


 東京都から電車で一時間弱といったほど離れた場所にある東京近郊 S市。

 市の中央を東西にJR線が走り、毎日都心部へと出社する者達を運んでいる。

 南北へは主に車を利用する者が多いが、バスを利用する者達もいる。

 人口は十三万人。JRのダイヤさ改正にて発展してきた印象のある街である。

 その為、駅近くの中央区画は発展しているが、それ以外の区画は新旧入り混じった雰囲気のある街である。


 そんな S市にある公立高校からの雨の日の帰り道、平凡な高校生である黒須くろす玲央れおはバスに乗り込もうとしていた。


「いつもより遅い時間なのにな」

「あはは、ホントだね」


 突如として後ろから話しかけてきたのは同じクラスの女子である綾瀬真花あやせまなかだ。

 黒目に栗毛、髪型は大人ボブで胸は大きめ。少し大人しい性格だが、人付き合いの良さと気配りの良さで評判になっているのが彼女だ。


「今日はタイミングが悪いみたいでさ。部活とか先生の用事とか色々重なっちゃって、気がついたらちょっと遅くなっちゃった」

「綾瀬さんもそうなのか。俺も先生の用事があって。終わった時には雨が強かったから、少し弱くなってから帰ろうと待ってたらこんな時間になったんだ」

「黒須君もそうなんだ。お互いついてないね」


 そんな話しをしつつバスに乗り込んだ二人は並んで立つ事になった。

 その状況は玲央にとって、駅に着くまでの間、ちょっと気になる女子である綾瀬真花と一緒の下校イベントと言えた。


「そういえばさ、黒須君の好きな子がクラスの中に居るって……ホント?」

「それはちょっと、言えないかな……」


 流石に周囲に人が大勢居る中で、君の事が気になってます。なんて言える訳もない。心なしか、周囲の人達も聞き耳を立てている気さえする。


「あはは、ごめん。こんなところで聞いて良い事じゃなかったね」


 真花が気をつかって笑い飛ばしてくれると、突如として運転手が大声をあげた。


「何だ、人が急に!……って。うわぁっ!!!」


 バスの進路上に突如として一人の男が立ち塞がったのだ。

 普通ならバスが止まるか、立ち塞がった男が轢かれるかだったのは間違い無い。


 しかし結果はバスの方が弾き飛ばされた。


「綾瀬っ!」


 ゴロゴロと転がるバスの中で、玲央は咄嗟に真花を庇い、必死に抱きしめる。


 バスが止まると、玲央は頭と背中に激しい痛みを覚えたが、腕の中の真花は気を失っているが、無事でほっとしていた。


 だが、玲央の身体をとめどなく襲ってくる痛みに、あぁここで死ぬのかと玲央は考え、目を閉じた。だか目を閉じた瞬間、急に痛みが引いてきた。


 死ぬ時は痛く無いんだな、とか。最後に告白は出来なかったが、好きな女の子を身体を張って守ったのだ。家族の皆だってきっと誇りに思ってくれる筈だ。


 などと考えていたが意識は一向に沈んでいかない。


 もしや生きているのか、と思って目を開けてみると腕の中の真花は確かに無事だった。無事でないのは抱きしめている自分の腕。


 いつの間にか服を破って腕が肥大化していた。動物のような毛もふさふさと生えていた。


「何だ、何があった!?」

「今救助隊を呼ぶからな!」


 そんな声が聞こえてくる。

 玲央は少しでも早く真花を助けなければと思い、彼女を抱えて外へと出る。不思議な事に彼女はとても軽かった。そうして外に出るとそこには……。


「うわぁぁぁっ!」


 突如として悲鳴があがった。


 まだ何かあるのかと見回して見ればそこは惨状だった。

 ほとんどの乗客は倒れ、頭から血を流している者もいる。

 バスだけじゃない、巻き込まれて事故を起こしている乗用車が何台もある。

 そんな中で比較的軽傷だった者は外に出ていた。中には救助を呼んでいる者も居る。


 だが、悲鳴をあげた者が見ていたのは周囲の惨状じゃない。一人が悲鳴をあげると、連鎖して悲鳴をあげていく。皆が怯えた目で見ているのは周囲の惨状じゃない。玲央だった。


「この化け物っ!その子を放せっ!」


 いきなり一人の男が玲央に向かってそう声をあげた。

 玲央には何がなんだかわからない。一体どうしたのか聞こうと、声をあげた男にゆっくりと近づいて行く……その途中で車の窓ガラスに映った自分の姿が目に入る。


 そこには狼男が居た。


「なんだよこれ!?」


 玲央は信じたくなかった。だが、自分は狼男になっているらしい。

 慌てふためく玲央に対して、周囲の人は怯えた目を向けるのをやめない。そんな周囲に対して玲央は……。


「……気を失っているだけみたいで、外傷は特にない筈ですが、彼女を、お願いします」

 最初に自分に声をあげた男に対して、真花を預けた。男は呆気にとられたのか呆然としつつ真花を受けとめる。

 周囲も落ち着いたのか、いつの間にか静かになっていた。

 そうして真花の無事をもう一度確認すると玲央はその場から逃げだした。


「俺は化け物なんかじゃない!……俺は、俺は!」


 自分に言い聞かせるような声をあげながら、玲央は逃げ出した。きっとこれは夢なんだ、狼男なんて居る訳が無いんだ。

 そうだ、きっと自分は今も救助を待っている筈なんだ。少しすればこの夢も終わる。そう信じて……。


 そんな彼を追う影がある事に、彼はまだ気づかない。


◆◆◆◆◆


 時は少し遡る。

 しとしとと雨が降る中、夜を思わせるような長い黒髪の少女、東方ひがしかた鈴華すずかは彼女の所属する組織、UGNの任務の一環として、S市の公立高校の生徒である矢神やがみ秀人ひでとという少年を尾行していた。


「こんなストーカーまがいな事、やらせないで欲しいわね」


 彼女は超人オーヴァードとしての能力を使いこなしている。その為、彼女の耳はやろうと思えば十キロ先で針の落ちた音すら聞こえ、彼女の目は望遠鏡を超えて、鼻は猟犬のごとく獲物を追跡出来る。


 つまりは尾行にとても向いているのだ。


 そんな彼女の標的となった少年は成績、運動ともに普通。部活は帰宅部、と学校のどのクラスにも居る目立たない生徒の一人の筈だった。

 が『UGN』の敵対組織『FHファルスハーツ』のエージェントであるという疑いが浮上。現在はその真偽を確かめる為に尾行をしているという訳である。


「全く、こんな雨の日にまで律儀に歩くんじゃないわよ。せめてバス使いなさいよね……って」


 横を通り過ぎて行くバスを見つつぼやいてると驚くべき事が起こった。


 見失ったのだ。


 能力に自信を持っていたが故の慢心のせいか、彼を見失ってしまった。

 普通の人間であるなら彼女の追跡から逃れられる訳は無いどころか、気づく事も出来ない筈だ。そう考えた鈴華は気を引き締めなおして、警戒心を強めた。


 直後、轟音が鳴り響く。


 少し先の道路で先程通り過ぎた筈のバスが横転している。巻き込まれた乗用車も多数いるようで、騒ぎになっていた。


「まさかあいつが!?」


 頭の中で警鐘が鳴り響き、全力で走り出す。

 能力に任せて離れて居たのがいけなかったのか、自分が目を離さなければ、もしかしたら防げたんじゃないか?そんな考えが頭をよぎる。


 しかし起こってしまったのなら言っても仕方ないのだ。過去は誰にも変えられないのだから。

 そうして駆けつけている最中に燃え盛る事故現場を見下ろしている人影を見つける。


「これで彼女も目覚める筈だ……ってなんだあいつは?」


 そんな呟きを鈴華の耳は捉えた。その時、自分に対して一直線に向かっている鈴華に気がついたのだろう。人影は逃げだした。


「ちぃっ!逃げられた!?」

 

 即座に追いかけようとする鈴華を、眼下の事故現場からの悲鳴が繋ぎ止める。


「ちょっとあいつ、ワーディング張ってないの!?」


 ワーディング、それは一種の結界のようなものであり、その能力を発揮すれば一般人を無力化したりする事が出来る。超人の能力を世間一般に広めない為に、これを展開するのは超人達の間では半ば常識となっている行為だ。


 視線の先には一人の少女を抱えた狼男が居た。彼は乗用車の窓ガラスに映った自分の姿に酷く驚いているようだ。もしかしたら覚醒したばかりなのかもしれない。


「あぁ、もうっ!」


 どうしようも無い状況に悪態をつく。人影を追う事は任務だが、覚醒したての超人も放ってはおけない。彼は既に一般人に姿を見られているのだ。

 今更かもしれないとワーディングを展開する。これで目撃者達は夢を見たとでも思ってくれれば御の字だ。


 そうして、狼男に接触しようとした矢先、彼は逃げだした。ある意味で都合が良い。態々ワーディングを張らずとも、彼と二人で話せそうだから、と鈴華は彼を追う事にする


「俺は化け物なんかじゃない!……俺は、俺は!」


 彼の独白が聞こえて来た。


「俺は人間だ!人間の筈なんだ!」


 彼は逃げている。鈴華に気づいたからじゃない。彼は現実から逃げている。

 だからこそ彼を放っておく訳にはいかないのだ。


「待ちなさい!」


 鈴華はようやく彼に追いつき、追い越して、逃げる玲央の前に鈴華が立ち塞がる。


「何だあんたは!?」

「今のところはあんたに現実を突きつけに来た悪魔、かな」


 軽口を叩く鈴華に対して玲央は鋭い視線を向ける。……向けようとした瞬間、彼の意識は遠のいた。どさりと音を立てて倒れ込む。人間の姿に戻りながら……。


「はぁ、全く。……もしもーし、すみませんが救急車一台こっちにも回してくれませんか?……はい。さっきの事故で覚醒したみたいで、逃げて倒れたところを保護しました。はい、お願いします」




 暫くして救急車が一台来た。UGNの処理班も事故の救助や後処理を手伝う事でなんとか回してもらえたらしい。


 その後、玲央はUGNの息のかかった病院に運ばれる事になった。

 彼が願ったとおり、人間の姿で目を覚ます事は出来るだろう……。

 だけど、未来は変わらない。

 彼が次に目覚めるその時に、彼は変貌した世界の真実と共に、自分も変わったのだと現実を思い知らされる運命だから……。

黒須玲央の侵食率が10上昇して40になりました。

東方鈴華の侵食率が3上昇して36になりました。

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