41. 大陸へ
大陸へと向かう日は、あっという間にやってきた。今日まで特訓してきたが、まあまあの出来じゃないだろうか。なんとか自衛できるくらいにはなってると思いたい。
「さて、そろそろ出発しようか」
船への物資の積み込みも終わり、出航準備は完了していた。今回は大小様々だが、五隻の船で向かうようだ。
「よろしくお願いいたします」
アイマさんが頭を下げている。
結局、救い出した兵士の人たちの世話をするとかで数人の使用人が同行することになったらしい。アイマさんはそのまとめ役だ。
……あれ? ほんとに僕行く必要ある?
まあ、今更行かないとも言わないけどさ。
みんなも船に乗り込むみたいなので、ついていく。そもそも僕ってちゃんとした船に乗るの初めてだから、そこも不安だ。船酔いとか大変って聞くよね。
「皆様!ご武運を!!」
マユルワナさんの見送りの声を合図に、船が動き出す。『任せろ姫様ぁぁぁぁあ!!!』うん、今回も船長のテンションは高そうだ。
さあ、船旅の始まりだ!
……
「うげぇぇぇえええ」
《だ、大丈夫なの!?》
なんかそんな気はしてたけど船酔いになった。
あ、これダメだ気持ち悪い……。アイミィごめん今は返事もできない。
「先行き不安だねぇ。ヨロイくん、気休めでいいから回復してあげてくれる?」
[はいよー]
なんか後ろで憐れまれてる気がする。
あーーー、なんなのこれグラグラするぅ。あれ、なんかちょっとマシになってきたかも?
――――――――
そんなこんなで二日くらい? 経った気がする。ほぼずっと寝てたからいまいち時間感覚がない。
「さ、着いたよコウくん。降りるから準備してね」
「……はい」
やっと、この船旅とお別れできると思うと嬉しいが、この体調で大陸に行くのは不安だ。ああ、でも陸地が恋しい。
みんなが甲板に揃っている。時刻は夕方くらいかな。陸地は……遠くないか? あ、そうか飛んでいくんだっけ。僕ってどうすれば。
「さて、これから上陸するよ。コウくんは私が飛ばすから安心してね」
「お、おう」
「ふふ、そんなに怯えなくてもいいよ。フゥサが丁寧に運んでくれるからね。精霊が視えるようになったんなら大丈夫さ」
《フゥサに任せなさーい!》
「よ、よろしくお願いします」
精霊に運んでもらえるのか。
フゥサは風の精霊なんだね。
「よし、さっさと終わらせようか。それじゃあ、出発」
その言葉で、みんなが飛び立つ。
ヨロイはどうするのかと思ったら、結界に乗って飛んでいた。え、いいなあれ。
《じゃあ、いっくよー!》
「お、おー!」
フゥサによって、体が浮く。
こ、これは怖いぞ? あ、動き始めた。いやいやいや速い速い速い……!!
《あはははははははははははは!!!》
え、なにこの精霊テンションたっか!
《速いのー!すごいのー!》
アイミィもキャッキャしてるな。
あー、なんかちょっと慣れてきたかも。陸地がぐんぐん迫ってるな。いつかは自力で飛んでみたいものだ。
その後、思ったより早く上陸には成功した。
……着地の時めちゃくちゃ怖かったけど。
「さて、揃ったね。監獄に移動しようか」
……
結構な距離を移動して、監獄に辿り着いた。
あれが監獄だと説明されたが、ただの山じゃない? 山をくり抜いて作ってるの?
「警備の数がものすごいのであるなぁ……」
偵察していたヴァンが呟いた。
まあ、ちょっと前に監獄が襲撃されてるんだから警戒も当然だろう。暗いから僕には何も見えてないけど。
「まあ、そうなるよね。数だけ揃えても意味はないんだけど。強そうなのは、いるかい?」
「確証はないのであるが、それっぽいのが一人いるのである」
「なるほどね。まあ、とりあえずは前回と同じように眠らせてみようかな。ヤーシィ、頼むよ」
《………………………………行ってきます》
いつの間にか側にいたヤーシィが、闇に溶け込んでいった。眠らせることができる精霊ってなんの属性なんだろ。
しばらく待っていると、ヤーシィが戻ってきた。
《……………………前より、抵抗が強いです。半分くらいしか眠らなかったです》
「お疲れ様、ヤーシィ。半分でも上々だよ」
賢者がヤーシィの頭を撫でている。
相変わらず仲が良さそうだなぁ。
「そんじゃ、突撃すっか。強そうなやつは俺に任せろ」
え、突撃すんの?
まだ半分くらい兵士がいるのに??
「ま、それが早いかもね。増援を呼ばれても面倒だ」
すごい自信だな。
なんかここにきてめちゃくちゃ怖くなってきた。足とか震えてるよ。
「それじゃ、リュウくんを先頭に突撃で。コウくんはヨロイくんと一緒についてきてね」
「う、うん」
「はい、作戦開始」
「よっしゃああ!!」
賢者の言葉と共に、リュウが飛び出していった。
なんであんな戦闘狂みたいになったんだろ。僕のはずなのにね。
「吾輩も行くのであるな。できるだけ無力化しておくのである」
「儂も行くとするかのぉ。さっさと終わらせたいもんじゃな」
そう言って、ヴァンとジィさんも監獄に向かっていった。なんか頼もしいな。
「私も行くよ。コウくんが来る頃には制圧しておくつもりだけど、ちゃんと警戒はしておいてね?」
賢者も心強い言葉を残して去っていった。
この場には僕とヨロイだけ。
「ボクらも行こっか。まあ、たぶん大丈夫だと思うけど、一応ボクの後ろにいてね?」
「あ、喋るんだね。了解です」
「まあ、誰もいないからねー」
かなり緩い雰囲気に、いつの間にか足の震えは止まっていた。僕たちも行くとしよう。




