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【第一章完結】僕は英雄ではないが、英雄は僕である  作者: 綾丸湖


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37. 精霊と過ごす日々


 アイミィとの出会いから暫く経過した。

 聖光魔法と精霊魔法の訓練を並行して行っているが、少しずつ進歩はしていると思う。……思いたい。


 聖光魔法の方は、魔法展開の速度は上がってきているが、強度の方はまだまだといったところ。圧縮というのがイメージしづらくて苦戦している。最近の訓練では小石を投げるスピードも上がってきて非常に痛い。


 精霊魔法は、火の制御に関してはほとんどできるようになったと思う。ただ、まだ時折失敗するので完璧には遠いなという印象。最近は地面や植物から水を抽出して飲めるようにする訓練も始めた。賢者はサバイバルでも想定しているんだろうか。


「いい感じの火加減……いい感じの火加減……」


 今日も精霊魔法で上手く火を熾す訓練だ。

 だが、今回燃やすのは訓練用の的ではない。


 肉だ。

 今から自分で食べるための肉を焼く。火をつけてから焼けばいいものを、訓練だからと直接火で肉を炙ることになった。もったいないので絶対に成功させなくてはならない。


《さあさあ、頑張るのー》


 アイミィが可愛らしく応援してくれているが、今はちょっと集中させてほしい。僕は、肉を美味しく食べたいんだ。


 イメージするのはよく焼けたステーキ。

 鉄板の上に置かれた肉を見る。ひとまず、表面をこんがり焼こう。そのあと、裏返してもう一度炙る。


 よし、いける。イメージは完璧だ。

 肉に手をかざす。

 

「肉を程よく焼ける火を!」


 精霊魔法の訓練をしていくうちに、発声することで成功率が上がることがわかった。たぶんイメージをより強固にするのだと思う。


 精霊に魔力が送られ、じっくりと肉が焼けていく。今のところ順調だが、気は抜けない。最後まで集中して表面を焼ききる。


 ここまでは完璧だ。

 さあ、次は裏面を焼いていこう。



《……もの凄い集中力なの。あんなに真剣な表情初めてみたの》


「そうだねぇ。やっぱり自分の好きなものだと気合いの入り方が違うね」


 アイミィと賢者がなにか話しているみたいだが、今は気にもならない。僕は、肉を焼くんだ……!!


 そうして、最高の集中力で理想の焼き加減のステーキを焼き上げた。いやー、やればできるもんだね。


 ステーキは美味しくいただきました。

 調達してくれたヴァンに感謝だ。


 ……


「ふぃ〜〜〜〜〜」

《ふわぁ〜〜〜〜》


 今日の訓練も疲れた。

 朝の走り込みから始まり、午前中は聖光魔法の訓練をして、午後は精霊魔法の訓練というのが、ここ最近の一日の流れだ。実に充実しているといえる。


 訓練が終わったら、アイミィと一緒に風呂に入るのもいつも通りだ。女の子っぽい感じだから最初はどうかと思ったのだが、その辺は全然気にしてないらしい。精霊はやっぱり感覚が違うんだな。


 チラリとアイミィの方を見ると、湯船に浮かんで蕩けきっていた。本当に気持ちよさそうに毎日風呂に入っている。


「アイミィって、ほんとにお風呂好きだよねぇ」


《そうなの〜》


 ちなみに、アイミィ以外の精霊が風呂に入っているところは見たことがない。なにか風呂好きになるきっかけでもあったのだろうか。それとも特殊な属性とやらが関係してるとか?


「お風呂はなんで好きになったの?」


《あんまり覚えてないの〜。なんだか気になって入ってみたら気持ちよかったの〜》


「そうなんだねぇ」


 まあ、そんなもんか。

 僕も別に、いつから好きになったとかは気にしたことないしな。なんか小さい頃に温泉に入って感動したことは覚えてるけど。


 それにしても、この世界が平和な感じだったら温泉地とか巡ってみたかったよなぁ。あるかわかんないけど。せっかく異世界に来たのにこの城からほとんど動けていないというのは悲しい。


「そういえば、アイミィってどこからきたの?」

 

 ふと、気になって聞いてみた。

 もしかしたら、この世界の温泉地とか知ってるかもしれない。


《うーん、よくわかんないの。なんかフワフワして、気づいたらここにいたの》


「あれ、そうなんだ。じゃあ、ずっとここにいるんだね」

 

《んー? たぶん最近のことなのー》


「んん? そうなの? じゃあ、僕と一緒だね。僕も最近ここに来たんだ」


《一緒なの〜》


 正確には、連れてこられたんだけど。

 しかし、アイミィはあんまりこの世界のことは知らなさそうだな。記憶も曖昧な感じがする。精霊はみんな、こんな感じなのだろうか。

 

「僕、この世界とは別の世界から来たんだよね。なんかもう、遠い昔のことに思えるなぁ……」


《別の、世界なの?》


「うん、そうだよ。召喚魔法で、呼び出されちゃったんだよねぇ」


 アイミィにはこの話をしていなかったか。

 なんかもう、他のことで手一杯で全然僕の話をしていなかったな。


「よーし、今日は僕のいた世界について話そうじゃないか!」


《お〜、楽しみなの〜》


 アイミィがパチパチと拍手してくれる。

 うーん、ノリがいい。流石は僕の友達。


「さてさて、何から話そうかなー。まずは、僕の家族……から……」


 ……なんだ?

 ちょっと待て、家族? えーと、父親と、母親もいたよな? たしか妹も、いたはず……。


 いたはずってなんだ!?

 おかしい。家族の顔も、名前も、霧がかかったかのように思い出せない。あれ、僕どうしちゃったんだ? なんで、今まで……。


 元の世界のことを思い出そうともしなかったんだ?


《コウ!どうしたの!? 顔が真っ青なの!》


「……だ、大丈夫。大丈夫だよ、アイミィ。少し、のぼせちゃったみたいだ」


 他の人たちのことも思い出そうとするが、ダメだった。友達と遊んで楽しかったということはなんとなく覚えているのに、その友達がわからない。


 なんだ? 僕はどうしちゃったんだ?


「……ごめんね、アイミィ。ちょっと今日は、もう休むことにするよ」


《そうした方がいいの!賢者には伝えておくの!》

 

 そう言って、心配そうな表情をしたアイミィは飛び去っていった。なんだか申し訳ない。


 まだ頭が混乱している。

 ……部屋に戻って休もう。


 

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