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【第一章完結】僕は英雄ではないが、英雄は僕である  作者: 綾丸湖


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33. 強くなる理由


 精霊が視えるようになった翌日。

 あの後、躍起にになって運命の精霊とやらを探し回っていたが、途中で諦めた。というか、冷静になって考えると運命ってそういうのじゃないなと思ったのだ。周りの精霊も若干呆れていたような気もするし。


 そういえば、訓練場には精霊がたくさんいたが、外に出るとそんなに見かけなかった。賢者の周りに多く集まっているだけかもしれないけど。


 日課の走り込みも終わり、今は散歩中だ。

 もしかしたら、運命の出会いがあるかもしれない。


 適当にぶらぶらと歩いて、城の庭園にさしかかる。

 そこには、何やらせわしなく動く人影があった。


「……キリラちゃん? なにしてるの?」


 なぜか庭園の前の道を行ったり来たりしている。


「コウ様……おはよう……ございます」


 走りながらなので、息切れをしているようだ。

 なんとなく眺めていると、満足したのか動きを止めてこちらにやってきた。


「……お見苦しいところを、お見せしてすみません」


「いや、なんか邪魔してごめんね。何してたの?」


 キリラちゃんがいつもの無表情でこちらを見ている。

 

「……走れば、強くなれるとおっしゃったので」


 僕のせいだった。


「そ、そっか。頑張ってね」


「はい、頑張ります」


 そうしてまた、タタタッと駆け出した。

 ……まあ、走るのは悪いことでもないし、強くなるというのも嘘ではないから見守るとしようか。


 しばらくたって、食事の時間が近づいてきたので一緒に城に戻っていく。しかし、なんで強くなりたいと思ったのだろうか。


「キリラちゃんは、どうして強くなりたいの?」


 まあ、気になったし聞いてみよう。


「……強くなったら、助けられます」


 うーん、誰か助けたい人がいるのか。

 こんなに小さいのに、立派な動機だなぁ。


「キリラちゃんは偉いね。僕なんて、自分のことで手一杯だよ」


「コウ様は、英雄だから、みんなを助けてくれるのでしょう?」


 純粋な眼差しで、そう返される。

 そうだよね。キリラちゃんやここの人たちにとっては、僕も英雄の一人なんだ。


「……うん、そうできればと思ってるよ」


 今の僕にはできない。

 でも、鍛えていけば誰かを守ることだって、できるようになると思う。


「私も、頑張ります」


 無表情ではあるが、力強い目をしていた。


「お互い、頑張ろうね」


「はい。それでは、食事を用意してきます」


 そう言ってお辞儀をすると、キリラちゃんは去っていった。たぶん、厨房に向かったのだろう。僕も食堂に向かおう。


 ……


「ごちそうさまでした」


 さて、食事も終わったし、訓練場に行こう。

 今日も賢者が精霊魔法を教えてくれることになっている。なんでも、精霊と契約していなくても使える魔法もあるらしく、それを伝授してもらえるそうだ。


 城の廊下を歩いていると、前方から誰かがやってきていた。あれは、アイマさんか。


「おはようございます、アイマさん」


「これはこれはコウ様、おはようございます」


 アイマさんは丁寧に腰を折って挨拶をしてくれた。その洗練された自然な動きは、プロっぽい。確か、キリラちゃんのお祖母さんなんだっけ。


「……キリラと、仲良くしていただいてありがとうございます。何か、失礼なことを言ってはいないでしょうか」


「え、キリラちゃんが? とんでもない!とってもいい子ですよ!」

 

 僕があのくらいの歳の頃、あんなにちゃんとしていただろうか? 絶対にしてなかったと断言できる。むしろ、敬語すら使えていたか怪しいレベルだ。


「そうですか……、それはよかった……」


 アイマさんは心底安堵している様子だった。

 キリラちゃんは僕の前だと無表情だから、なにか誤解をされているのだろうか。


「ええ、働き者のいい子ですね。仕事もしっかりしているので、安心してください」


 これ、僕が言うセリフではない気がするな。

 何様なんだよ……。自分は働いてないくせに……。


「ありがとうございます。それを聞いて安心いたしました。それでは、失礼いたします」


 そう言って、アイマさんは去っていった。

 今度、なにか手伝えないか聞いてみようかな。いや、普通に邪魔か。


 なんとなく自己嫌悪に陥りつつ、訓練場に向かう。

 まあ、切り替えて魔法の訓練をしよう。


 ……


 

「さて、始めようか」


 訓練場に置いてある椅子に座り、賢者の講義を聞く。

 いやー、やっぱりここには精霊がいっぱいいるな。


「コウくんが今視ているように、この世界には精霊が存在する。で、ものすごくざっくり分類すると、契約精霊と未契約精霊に分けられるんだよね」


 この前賢者に紹介してもらった精霊たちが契約精霊だな。今も賢者の隣で虎っぽいラィズゥと黒髪のヤーシィが寝ている。フゥサはいないみたいだ。そして、周りにたくさんいるのが未契約精霊ということだろう。


「今日教えるのは、未契約精霊の力を借りて発動する精霊魔法だね。コウくんが契約するまでは、基本的にこちらの魔法を使うことになると思うよ」


「契約精霊の魔法とは、何が違うんだ?」


「契約精霊の魔法は、強力で、独特なんだ。精霊と契約者の性質が色濃く反映される。一方で、未契約の精霊魔法は、その場にいる精霊の力を借りるから、精霊の属性に影響されるね」


 んん? よくわからなくなったな。


「精霊によって、得意な魔法が異なるんだよね。まだ違いがわからないかもしれないけど、触れ合っているうちにだんだんわかってくるよ」


 小さい精霊たちは同じように視えるが、それぞれに個性があるということか。


「環境によって、住んでる精霊も変わるから注意してね。水の魔力が濃い場所には水の精霊が多い、みたいな感じだね」


 ふむ、これはなんとなくわかるな。

 きっと、火山なら火の精霊がいるのだろう。


「まあ、ここにはどの属性の精霊もいるから、訓練にはうってつけだね。さっそく、いろいろ試してみようか」


 おお、すぐに教えてもらえるのか。

 なら、やってみたい魔法がある。

 

「飛びたい!!飛んでみたい!!」


 港で賢者が飛んでいるのを見てから、自分も飛んでみたいと思っていた。これは是非、教えてもらいたい。


「うーん、飛行かぁ。いきなり難易度の高い魔法に挑戦するんだねぇ」


「え、そんなに難しいの?」


「そこそこかな? 失敗したら体が爆散するかもしれないけど、頑張ってみる?」


「遠慮しときます!!!」


 なんだよ爆散って。

 そんなの頑張れないよ。


「そう? それならまずは、火を熾す魔法を使ってみようか。できると便利だからね」


「それでお願いします!」


 飛べなかったのは残念だが、火をつけるというのもそれはそれでやってみたい。肉を焼く時とかに便利そうだ。


「やることは、精霊にお願いするだけだから簡単だね。お願いするときに自分の魔力を渡すんだけど、あげすぎには注意してほしい。干からびちゃうからね」


「えぇ……」


 なんかちょっとずつ怖くなってきたんだが。


「契約精霊なら手加減してくれるけど、他の精霊たちは私たちのことをよくわかっていないからね。特に、強大な精霊にお願いする時とか、大規模な精霊魔法を使う時は、受け渡す魔力も膨大になるから気をつけないといけないよ」


「覚えておきます……」


「それじゃ、まずは私が使ってみるからよく見ておいてね」


 そう言って、賢者が前に進み出る。

 そうして、訓練用の的に手をかざした。


 ボッ、と的が燃え上がる。


「おおー」


 これはめちゃくちゃ魔法っぽいな。

 魔力を見ていたが、精霊の方に魔力が流れて、魔法が発動するときに精霊が瞬いていた。これ、精霊が視えなかったら何が起こってるかわからないだろうな。


 感心していると、賢者がこちらを振り返った。


「さあ、とりあえずやってみようか」


 いきなり!?

 

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