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【第一章完結】僕は英雄ではないが、英雄は僕である  作者: 綾丸湖


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26. この世界での日常


 風呂でのぼせた翌朝。

 ちゃんと早朝に起きて、日課の走り込みをこなしている。リュウに追い立てられていないのでいつもよりは遅いが、ちゃんと走っているのだから許してほしい。


 毎日続けているだけあって、最近は少し慣れてきた気もする。こんなことをリュウに言ったら走る距離を増やされるだけなので絶対に言わないが。


 それにしても、清々しい朝だ。

 魔力制御の感覚も掴めてきたし、気分がいい。


 ヨロイが女性であったという衝撃の事実が判明したが、一晩経って冷静に考えるとどうでもいいなという結論に至った。神とか龍とか言ってるやつにもいるのに今更だ。


 走り込みを余裕を持って終え、食堂に向かう。


「コウ様、どうぞ」


「ありがとう、キリラちゃん」


 キリラちゃんはあれから名前で呼んでくれている。最近では、少し世間話をしてくれるようにまでなっていた。なにげにめちゃくちゃ嬉しい。


「……コウ様は、どうしていつも走っているのですか?」


「え、うーん。強くなるため、かな?」


「? もう、お強いのでは?」


 首を傾げて、問われる。

 純粋なその目に、心が痛い。


「えーと、その、もっと強くなるためかな」


 いかん、動揺してしまった。

 そうだよね。英雄様はもう強いはずだよね。


「そう、ですか……。私も走ったら、強くなれますか?」


「体力は、つくんじゃないかなぁ」


 なんか誤魔化してるみたいだな。

 いや、でも今のところ嘘は言ってないと思うんだ。


「そう、なんですね」


 なんだか納得したような感じで、キリラちゃんは去っていった。え、どうしよう。もしかして走り込みを始めるのかな。



――――――



 食事を終え、訓練場に向かう。

 足取りは軽やかだ。なんせ、今日からは魔力制御の次の段階に進めるんだから。


「お願いしまーす」


 訓練場に入ると、鎧を着てないヨロイがいた。


「え、なんで?」


「いや、まあぶっちゃけパネルってめんどくさいよね。他のみんなが帰ってくるまではこれでいいかなって」


 ヨロイがいいならそれでいいが。

 しかし、なんだか新鮮だな。


 昨日は気恥ずかしくてよく見てなかったが、ちゃんと見てもやっぱり女性だ。見間違いじゃなかった。


「なにジロジロ見てんのー? もしかして変態かー?」


「いや、それはない」


 本当に何も感じない。

 自分でも驚くほど何も感じない。


「ま、そりゃそうだねー。そんじゃ、今日の特訓はじめようか」


「よっしゃー!!」


 気合いは十分だ。

 今なら多少辛くても頑張れる気がする。


「魔力を動かす感覚は掴んだみたいだから、今日からは持続時間を伸ばしていこうか」


 持続時間?

 まあ確かに今は一瞬動かせただけだもんな。


「よし、まずは()()いってみようか!」


 ん? 半日?


 ……



「無理!」


 大の字に寝転んで叫ぶ。

 十秒ももたないんですけど!? これを半日!? 頭おかしくなるわ!!

 

「ほらほらー全然時間伸びてないよー?」


「うるっさいわ!!」


 なんでこいつ煽ってくるんだ。

 パネルだったら見なきゃいいけど、声だと嫌でも聞こえてくる。もう鎧を着てくれよ!!

 

 ……よし、やるか。

 やらないと成果は出ない。魔法を使うにはやるしかない。


「……できる。僕はできるんだ」


「おーおー、いい感じになってきたねー」


 何も聞こえない。

 聞こえないったら聞こえない。苛立ったら体に力が入ってしまう。そうなると魔力制御はできない。


 目を瞑り、自然体になる。

 そして、自分の中の魔力を見つけ、動かす。ゆっくりと魔力を誘導し、手のひらに向かって進める。あ、いや、まってそっちじゃないよ……。


「五秒」


「わかってるよぉ!!」


 いやもうほんと難しい。

 めちゃくちゃ繊細な作業を集中して行わないといけないのに、力が入っちゃいけないってどういうこと??


「これも地道にやるのが近道だよーがんばれー」


「……はい、頑張ります」


 精神的には、まだ最初の訓練よりマシだ。

 あれはほんとにすすんでるのこわからなくて不安だったが、今回はちょっとずつでも上達しているのがわかる。半日かけて五秒だけど。


「よし!」


 気合いを入れ直し、訓練を再開する。

 目指せ半日!!……いや、十秒!!

 

 

――――――



「ああー、染み渡るぅー」


 訓練の後は、やっぱり風呂に限る。

 なんかもう風呂のない生活には戻れないと思うね。


「ああー、気持ちいいねぇー」


 気にしない。気にしない。

 いや、まて、なんでヨロイは一緒に入ってんだ。


「別で入ればよくない!?」


「んー? まあ、別にいいじゃん。どうせボクなんだし」


 いやー、そういう問題?

 あんまりよくない気もするんだけどなぁ。ま、いっか。


「賢者たちは明日くらいには戻ってくるかなぁ」


「うーん、そうだね。たぶん救出自体はなんの問題もないから、すぐに戻ってくるでしょ」


 それは確かに。


「それよりも、救出した兵士たちの方が気になるね。変な人たちじゃないといいけど」


「あー、そんな心配もあるのか」


 いきなり現れた奴らが英雄と持て囃されていたら、いい気はしないだろう。特に、マユルワナさんの言っていたジュルトラさんとかは国を守ってきた自負もあるだろうし。


「何事もないといいけどねぇ」


「そうだなぁ」


 なぜだかあまり心配はしていなかった。

 みんながいれば、大丈夫だろう。


 ほどほどのところで、風呂から上がる。

 今日はのぼせたくなかったからね。



――――――



「ふぅ……」


 夜眠る前に、軽く魔力制御の訓練をするのも日課になっていた。日々の努力が大事だよね。


 しばらく訓練をして、ベッドに横になる。

 十一秒くらいには、なった気がするな。


 今日も充実した一日だった。

 しっかり寝て、明日の朝もまた走るとしよう。



 この世界での、日常が過ぎ去っていく。

 ゆっくりと、馴染んでいきながら。

 


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