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王都ルーダ

 足元がグラグラと揺れるような感覚からしっかりとした足場に足がつくと包んでいた光が治っていく。


「ん、ぁ・・・・」


 光の眩しさに閉じていた目を開けると、そこは窓が無い小さな個室のような場所だった。


「ここが、ルーダ?いや、関所前のワープポイントかな?」


 誰もいない個室で恐る恐る出入り口のドアを開けると、


「わあ!!」


 ドアの外は人が行き交う大通りだった。

 老若男女の人間、ケモ耳尻尾が着いた獣人っぽい人。大荷物を乗せた馬車を馬に引かせる商人風の人達。

 様々な人種の人達が少し離れた場所に聳える大きな門に向かっている。

 アーチ型の門の上に看板が掲げられている。


「王都ルーダ・・・・・?」


 全く知らない文字のはずなのに、読む事が出来た。

 これも、召喚者に付属された能力という事かな?


「・・・・・・・・・・」


 紅音は一旦、先程まで居た個室に戻り、宰相さん、ランスロット様から貰った皮の小袋を開くと中には百円玉くらいの金貨と五百円玉くらいの金貨が入っていた。


「これ、幾らなのか・・・・えっと、スキル『鑑定』発動」


 転移される前にランスロット様からスキルの発動の仕方を教えてもらったので、頭の中で強く念じると、目の前にゲームで出てきそうな半透明なディスプレイが出て来た。


「おおお!!」


 現れたディスプレイの中央に大きな円が現れた。

 紅音は直感的にその円越しに小さい金貨を一枚掲げると、


【小金貨。アルメディアス王国で流通する硬貨の一種。小金貨一枚は日本円1万円に値する】


「おお」


 次に大きな金貨を円越しに掲げると、


【金貨。アルメディアス王国で流通する硬貨の一種。金貨一枚は日本円10万円に値する】


「・・・・・おお」


 小さな金貨は日本円で1万円。大きい金貨は日本円で10万円。

 皮袋の中には小金貨が30枚。金貨が30枚入っていた。


「えっと、小金貨が30枚で30万円で金貨が30枚で300万円。合計330万円か、」


 なかなかの大金だった。

 現代社会だったら、住居を構え仕事を探すには十分な金額だった。


「うん。助かります。ありがとうございます」


 私は思わず手を合わせて、せめてもの気持ちで感謝の念を王様とランスロット様に送る。


 だが、私は知っている。

 お金は有れば有る程助かるが、有れば有るだけトラブルの元になる。

 その事を元の世界の経験上いやと言うほど知っている。

 私は、皮袋から小金貨3枚を取り出し、残りはリュックの奥底に押し込んだ。


 次に、紅音は自分の身なりを確認した。

 服は、この世界に来た時のままの上着に黒のロングカーディガン、白のハイネックのシャツ。ボトムはスキニージーンズ。靴は宰相ランスロットからもらったショートブーツ。

 外を見た限り、今の自分に似た服装の人は居なかった。

 考えた末、紅音は黒のロングカーディガンの前のボタンを全て留め、付属の布のベルトを腰に巻いた。

 リュックから入れていた新品の藍色のタオルをターバンの様に頭に巻いた。

 見た目は黒のワンピースの下に白のハイネックのシャツ、紺色のズボンを履いているように見える。

 そして、ランスロット様からもらったドッグタグ風のペンダントを首にかけ、カーディガンの下に忍ばせる。


「まあ、こんなものか。一人旅の旅人で誤魔化せるといいんだけど」


 見据えるドアの向こうが急に怖く感じるが、同時に、未知なる世界への一歩に早く踏み出したいと思う自分がいた。


「・・・・・・・っ、よし!!行くぞ!!」


 意を決して、紅音はドアを開け、外へと踏み出した。



 関所の門に向かう人達に紛れ、門へ向かう。


「・・・・・・、」


 関所へ歩みを進め、関所の門へ近づく程に悪い事をした訳でも無いのに、とてつもない緊張感を感じる。


 前を歩く人達に習い、関所の番人の兵士に銀のカード型の通行許可証を見せ、許可証を番人の兵士に預ける

 番人の兵士は紅音を観察する様に視線を向ける。だが、すぐに表情が穏やかになり、許可証を返してくれた。


「拝見しました。どうぞ、王都ルーダへ」


 そう言って、番人の兵士は紅音をルーダの街へ通してくれた。


「わあぁ!」


 門を通り過ぎて、紅音の目に入って来たのは、中世のイギリスかヨーロッパみたいな海外の活気のある街並みだった。

 西洋風の建築物に道を歩く多くの人達。

 上を見上げると建物の間に旗や幟が飾られている。

 人波に乗りながら大通りに出ると、そこには屋台がずらりと並んでいる。

 屋台には小物や雑貨、果物、お菓子、食材が活気よく売られていた。中には魔法関連の商品を売っている店もあり、ここが改めて異世界なのだと認識させられる。


「わぁ、すごいなぁ・・・」


 だが、気分的には、海外の異国へ観光旅行に来た気分の紅音だった。


「いやぁ、いらっしゃい」


 物珍しそうに鎮座するブラウンケットの様な大きな布の商品を眺めていると、店の店主であろう男の人に愛想よく声をかけられた。


「、こんにちは」

「はは、こんにちは。お姉さん珍しい格好してるね。観光旅行かい?」

「ええ、旅の途中で立ち寄ったんです」

「それは、それは。お姉さん運がいいね。今日は王都ルーダで一番の祭、【バンケット】の最終日だからね。楽しむといいよ」

「、ええ、ありがとう」


【バンケット】とはどんな祭かは知らないが店主に話を合わせた。


「そうだ、お姉さん、お祭見物のお供にドドリーバードのチキンサンドはいかがかい?」

「え?」


 そう言って店主は出来立てであろうホットサンドイッチを勧めてくる。

 こんがりと両面黄金色に焼けたパンはホカホカと薄く湯気が立ち、真ん中から二つに切られた断面から細かく切られたお肉と玉ねぎっぽいお野菜、そして白乳色のソースがなんとも食欲をそそる。


「っ、・・・・・・」


 無意識のうちに生唾を飲み込む。


「ひ、一つ下さい・・・・」


 目の前の食欲と言う誘惑に負けた。


「おう!!そうだ、可愛いお姉さんにはドリンクをオマケして銀貨一枚と銅貨一枚でどうだい?」

「ッ、買います」

「毎度あり」


 小金貨を一枚払い、紙に包まれたホカホカのホットサンドと薄い木製のコップに注がれたドリンクを受け取る。


「はい、お釣りの銀貨8枚に銅貨9枚ね」


 なるほど。さっき鑑定で支払った小金貨が1万円相当とだとすると、銀貨が1,000円。銅貨が100円単位と言うことか・・・。覚えとかないと。


「隣に椅子とテーブルがあるからそこで食べるといいよ。食べ終わったらコップはこっちに返してね」

「はい。ありがとうございます」

「おう、ごゆっくり」


 代金のお釣りを貰い、愛想のいい店主の勧めで隣のブースにあるテーブルの席に腰を下ろした。

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