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スキル判明

「でわ、まずはユリア様からお願います」

「ハーイ」

「手をレイガンの瞳に翳して下さい」

「ハイ!ランスロット様」


 宰相のランスロットさんに勧められユリアは嬉しそうに水晶玉の前に立つ。

 水晶玉に手を翳すと水晶玉のオーロラが揺れ何かが映される。


【ユリア ヒメカワ 17 】

【スキル 聖魔法 幻影魔法 】


「やったぁ!!聖魔法だ!!」

「おお!!聖魔法か!?聖魔法は魔王を倒す魔法で最も有効である魔法!!しかも、幻影魔法まで!!」

「はい。ユリア様はとても優秀なお方でございます」

「わーい♪ありがとうございます!!」


 映されたスキルを見て喜ぶユリアと嬉しそうに褒める国王とランスロット。

 だが、紅音はサッと顔色を変える。


 水晶玉に名前が映されている。

 せっかく偽名を使ったのに、これじゃ本名バレちゃう。

 どうしよう、どうしよう・・・・・・。

 咄嗟に偽名を使った事に後悔していると、


(大丈夫)

「ぇっ?」


 またさっきの声が頭に響いた。


「ユカリ様もお願います」

「え、あ・・・・」


 少し躊躇ったが、ここで下手に断ると不自然だと思い、


「・・・・・・はい」


 紅音は水晶玉に手を翳した。

 水晶玉のオーロラが揺れまた何かが映し出されようとしたその時、水晶玉のオーロラが一瞬大きく歪んだ。


「え?」

「ん?」


 その事に気づいたのは紅音とランスロットだけだった様だが、ランスロットは特に何も言わずに映されたモノを見ている。


【ユカリ タケナカ 28 】

【スキル 鑑定 】


 水晶玉に映されていたにはそれだけだった。


 ぉぉぉ。名前が偽名で出てきた。よかったけど、でも、何で??


「スキル、鑑定・・・・・のみですか・・・・」

 

 名前が偽名で出てきた事に疑問を感じていると、それまでユリアを褒め称えていた空気が一気に静まり返った。


「あ、あの、鑑定ってどんなスキルなんですか?」

「鑑定とは、対象の状態を鑑定と言う形で見る事ができるこの世界では比較的よくあるスキルです」

「そう、ですか」


 私のスキルが鑑定だと解った途端、私を見る周りの空気が変わった。


「ほーら!!やっぱり、オバさんただのモブだったんだ!!」

「は?モブ?」

「私はぁ、この世界を救う為の救世主として選ばれたのに、何にも役に立たないスキルのオバさんなんてモブでしか無いでしょ!!ランスロット様!!このオバさんが召喚されたのは何かの間違いです!役に立たないオバさんはすぐにここから追い出して下さい!!」

「はぁ!?」


 いきなり捲し立てる様に私に指を指すユリア。

 この子は初見から私を目の敵のように見ていたから私のスキルが使えないとわかるや否やここぞとばかりに非難してくる。


「確かに、鑑定なんて探せばいくらでもいるスキルだ」

「今回の召喚は120年ぶりで、前例の無い二人同時の召喚成功です、片方にスキルが偏るのは、無くは無い話か・・・」


 周りの人達も訝しげに、そして、憐れむように紅音を見ている。


 一気に居心地が悪くなった。元々、居心地がいいとは思えなかったけど。


 この空気を私は知っている。


 18歳で入社した会社は入社して5年目で倒産したが5年間我武者羅に仕事に打ち込んで来たおかげ苦労はしたが仕事の実績が認められて約半年で再就職に漕ぎ着けた。

 だけど、どんなに仕事を頑張っても、(天涯孤独)(失業者)この二つのレッテルで周りの人達は私を腫れ物扱いし、一部の人達は笑いのネタにとイビって来た。


 この空気は、あの時の職場に似ている。


 だが、コレは好機だ。


 元々、魔王退治なんて危ない事はしたくなかったし、面倒事に巻き込まれるのも遠慮したい。

 ここで役立たずとしてこの場で解放してくれるかもしれない。


「あの、」


 バン!!!


「父上!!召喚は成功したか!?!?」

「ッ!?!?」


 いきなり入り口の大きな扉を蹴飛ばす勢いで入ってくる人物。

 皆が驚いて扉の方へ振り向くと煌びやかな服を着た青年がこちらへ向かって来る。


「来たか、チャルエットよ」

「チャルエット殿下」


 王様と宰相さんが乱暴に入って来て青年を咎める事なく、普通に向かい入れる。


「キャ!!チャルエット王子様!!!」


 またユリアのテンションが上がった。


「ん?」


 すると、ユリアと視線が合ったのかユリアの顔をマジマジと品定めする青年。


「父上。この者が僕の花嫁候補か?」


 ユリアの姿を見ていた青年がそんな事を口にした。

 王様に父上という事はこの青年がこの国の王子?

 と言うか、


「は、花嫁???」

「もしかして、幻の逆ハーフラグ?キャァ!」

「だから、何が?」


 花嫁と言うワードにユリアは顔を赤くさせ、さらにテンションを上げる。そしてそんなユリアについて行けない紅音。

 そんな顔を赤らめるユリアを王子が上から下まで観察する様に見ると、


「ふむ・・・・・些かモノ足らなくはあるが、悪くは無いな。合格だ」


 何故か上から目線でニヒルに笑った。


 いや、何様?あ、王子様だった。


「え、それって」

「お前を花嫁候補と認めてやろう」

「あ、ありがとうございます!!あ、あの私、柚莉愛って言います!」

「そうか、ユリアか。僕はこの国の第一王子チャルエットだ」

「はい!チャルエット様!!」


 いや、色々とツッコミたい。


 何故いきなり異世界に召喚されて、何故いきなり王子様登場で花嫁候補?

 そして、何故アナタはそれを嬉しそうに全て受け入れられているの?

 そして、何故周りの人達は祝福ムードなの?

 もう、切実に色々とツッコミたい。


「ん?その者は何だ」


 あ、王子様がこっちに気がついた。


「この者はユリア様と一緒に召喚されましたユカリ様で御座います。チャルエット殿下」

「ふぅん・・・・」

「あ、チャルエット様、」


 宰相さんの言葉に王子様がこちらへ近づいて来た。

 王子様の後ろでユリアが物凄く睨んでる。


「召喚に成功したと言う事はこの者も花嫁候補か」

「あ、いえ、その・・・・」


 王子様の質問に言葉を濁す宰相さん。

 と、その時、


「そのオバさんは違います!!」

「何?」


 突然ユリアが割り込むように声を上げる。

 その行動に王子様と宰相さんが一瞬眉を顰めたが、ユリアは気がついていない様子だった。


「そのオバさんは、何かの間違いでこの世界に私の『オマケ』でついて来た役立たずです!!」

「ッ、」


 ユリアは大勢の人達が注目している中、紅音を指差し断罪するかの様に叫ぶ。


「いい加減にしなさい!!」


 流石の紅音も、カッと怒りが湧き上げ、声を上げる。


「な、何よ、事実じゃない!王様も見たでしょう?あのオバさんのスキルが役に立たないクズスキルだって、」

「この国の鑑定スキルの人達に全力で謝りなさい」

「っ、な、なによ・・・・」


 私が静かな怒りを込めユリアをキッと睨むと、ユリアが怯む。

 が、その目はまだ私を目の敵の様に見ている。


 どうやら、この小娘はどうしても、私をこの場から排除したいらしい。


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