浮島
「はい、それでは、サブギルドメンバー用のクエスト『薬草採取。モルラーシュの花の採取』を受理しました』」
「ありがとうございます」
無事にクエストの手続きを終える事ができた。
「お待たせしました」
手続きを終え、少し離れた所でビースターのメンバーが待っていてくれた。
「よし、じゃあ、行くか」
「はい、よろしくお願いします」
アドルフさんを先頭に歩き出す。
でも、
「あれ?何処に?」
ビースターの人達はギルドの出口には行かず、奥の部屋へと進む。
「ラマーニーニの草原は少し遠いからな。魔法転移装置を使う」
「え?魔法転移装置って、関所の所に有る、アレですか?」
「え?アカネ、関所の所の魔法転移装置使った事あるの?」
「はい、ちょっと特例で」
お城から出る時に使いました。
「まあ、緊急時や非常時などで使用は許可されているからな」
アドルフさんが、そう言いながら奥の部屋の前の受付から何かを受け取っていた。
そして、それを皆に配っている。
「アカネ」
「は、はい」
私もアドルフさんから木で出来たブレスレットを受け取る。
「このブレスレットが魔法転移装置の通行許可証だ。無くすと魔法転移装置に乗れ無いから気をつけろ」
「はい」
受け取った木のブレスレットは細くシンプルで小さな青い石が二個付いている。
紅音はそのブレスレットを右手首に着ける。
「・・・・・ちょっと大きい、かも」
「アカネさん、手首ほっそ・・・」
「アカネ、落とさ無い様に気をつけてね」
「はい・・・・」
受け取ったブレスレットは少々紅音の手首とのサイズが合わず、大きかった。
だが、手首から抜け落ちる、程でも無かったので、落とさ無い様に気をつける事にした。
「大丈夫?」
「はい。落とさ無い様に気をつけます」
ジャミールさんがさり気無く、気に掛けてくれた。
「大丈夫です!もし、許可証を無くしても俺が紅音さんを抱えて行きますから」
「う、うん、なるべく無くさない様にするね」
だから、ジオルくん。そんなに目をキラキラさせて、こっちを見ないで。
「アホか」
「ほら、おバカな猫は気にしなくていい」
「アカネ、段差があるから気をつけてね」
「なんか、みんな今日俺の扱い雑過ぎるんだけど!?」
猫耳と毛を逆立て不機嫌な威嚇する猫みたいなジオル。
なんだか、ジオルくんの扱いが金運の神ドルーネ様に似てきているような・・・。
「ジオルくん。行こう」
「!!はい!アカネさん」
私が声をかけると、ジオルくんは嬉しそうにコロッと笑顔になる。
本当に可愛い子だ。
「アカネ、あんまりジオルを甘やかさないでね」
「は、はい」
甘やかしているつもりは無いんですが。
「チチ(ご主人様)」
「ん?なに?」
「チチチチ(もし、ご主人様が何か落とされれば、私が拾いに行くのでご安心を)」
「ありがとう、シロ」
「ん?どうかしたの?」
「私が落とし物したら、シロが拾ってくれるそうです」
「本当に頭がいい子ね」
キャロラインが感心した様に微笑む。
「ウチのジオルと大違い」
「おい!?」
そうこうしている内に奥の部屋に入ると、大きな円盤の様な台が鎮座していた。
お城を出る時に乗った台は人が5人乗れるくらいの大きさだったが、この台は20人は軽く乗れるくらい大きかった。
「大きいですね」
紅音は素直に思ったことを呟いた。
「大掛かりな上級クエストを受けた時に複数のパーティーと協働する事があるから、大人数でも一度に転移出来る大型魔法転移装置を設置されているんだ」
「でも、ここまで大型な魔法転移装置が置いてあるのはこのグランドギルドアツモリと世界各国の大教会の宮殿くらいなんですよ?凄いでしょ!」
「なんでアンタが偉そうなのよ」
ベシ!
「イテ」
何故か自慢げなジオルの頭をキャロラインが叩いた。
「ほら、お前ら戯れていないでサッサと乗れ」
「は、はい」
アドルフは呆れ顔で、魔法転移装置の台に乗り、皆もそれに続いた。
「では、行くぞ」
アドルフがそう言うと、魔法転移装置の台に魔法陣が現れ淡く光出し、台に乗っている5人を包んで消えた。
足元がグラグラと揺れるような感覚からしっかりとした足場に足がつくと包んでいた光が治っていく。
「着いたぞ」
光の眩しさに閉じていた目を開けると、そこは石造りの建物の一室だった。
白い大理石みたいな壁と天井に光る石シャンデリアみたいで明るい雰囲気の印象的だった。
「足元、気をつけろ」
「は、はい」
アドルフさんに気をかけられながら紅音は円盤の台から降りる。
部屋から出ると、同じような部屋が三部屋並んでいた。
そして、目の前に一昔前の駅のホームの様な改札口が立っていた。
改札口の向こうには冒険者のような人や獣人の人達が何人か行き交っている。
(なんか、ハロウィンの仮装みたい)
こうして見ると、元の世界の10月以降某駅構内や某所でよく見かける風景に似ている気がする。
「アカネさん!こっちこっち!!」
「え?」
振り返ると、大きな窓の前でジオルが紅音を呼んでいた。
「ジオルくん?」
「こっち来て見て下さいよー」
「窓?」
ジオルに促され、窓の外を見ると、
「っ!!」
紅音は一瞬、息を呑んだ。
紅音の目の前に広がるのは、青い空、白い雲。
そして、雄大に雲の様に空を浮かぶ島だった。
土肌剥き出しの岩の様な島もあれば、草木が豊かな島、遠くには島半分が水で覆われた島。火山が見える島。奥にも更に巨大な大陸が空に浮いて見えた。
「・・・・・」
下を見下ろすと、ちゃんとうすい雲の下に地上が見える。
という事は、私は今、空の上にいるの?
「・・・・人がゴ、(いや、ヤメトコウ)」
「チチチチチ?(どうかなさいましたか?)」
「うんん、なんでも無い・・・」
思わず、あのセリフを言ってしまいそうになるのを寸出で止めた。
「あれ?アカネさん浮島見るの初めて?」
「浮島?」
「魔鉱石と浮遊石を豊富に含んだ大地が宙に浮かんだ土地の事だ」
「アドルフさん」
アドルフさん達も窓際にやって来た。
「こう言う、浮島やダンジョン、魔海には魔素が多いからクエスト向けな素材や魔獣が多く生息している」
「魔素が多い所には素材や高価なレア物、稀少な魔獣や植物も多い。私達冒険者からしたらお宝の宝庫だからね」
「だけど、その分危険も多い為にギルドに所属していない者の立ち入りは禁止されている」
アドルフさんとキャロラインさんが説明してくれているなか、窓の外で大きな翼が生えたワイバーンみたいな生き物が目の前を飛んでいった。
「あ、あの、もし、浮島から落ちたら?」
「ほぼ確実にあの世に逝くな」
うん、分かっていたけど、やっぱり落ちたら死ぬよね・・・。
うん。さっきまで、元の世界のハロウィンのコスプレみたいだと現実逃避していたが、ここが異世界だと現実に引き戻された気分。
「大丈夫よ。今から行くラマーニーニの草原は広大な浮島だから、よっぽど島の端に立たない限り、落ちて死ぬ事は無いわ」
「そ、そうですか・・・・」
とりあえず、落下死は免れそう・・・。
「落下死よりも、凶暴な魔獣に襲われる確率の方が高いわよ?」
「あ、あはは・・・ソウデスネ」
別の危険性が出て来た。
「大丈夫です!!もし魔獣が襲って来たらアカネさんは俺が守ります!」
「ありがとう、ジオルくん・・・・」
その笑顔が、眩しく見える。
(でも、出来たら、危ない目には遭いたくはないなぁ・・・・)
紅音は、引き攣った笑顔でそう心の中で呟いた。
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