オーバー・ゲート
異世界の神様である3人の謝罪を受け取り、取り敢えず、事情を年長者であるパルアドルフから聞く事にした紅音。
ちなみに妹であるアディーダとルカリスはせっせとお茶を用意していた。
何処からティーセットを出したのは謎だけど、今は状況整理を優先させよう・・・・・。
「えっと、話をまとめると、バンケットの大宴でお酒に酔ったパルアドルフ様が他の御兄妹の口車に乗せられて、時空の一部を展開して、同じくお酒に酔ったアディーダ様を始めとする数人の御兄妹がそれに便乗。
ルカリス様は事情をよく分からないでで御兄妹の暴走に巻き込まれて、数百年に一度起こす『オーバー・ゲート』と言う大魔法をうっかり宴会の余興として発動してしまったと、」
「誠に、面目ない・・・・」
「えっと、ええぇぇ・・・・・・」
パルアドルフ様が、申し訳無さそうに謝罪する。
紅音は予想の範囲外の規模が桁違いの事情に早くもキャパオーバーになりつつ、なんとかパルアドルフの謝罪を受け入れる。
「えっと、その『オーバー・ゲート』と言う魔法で私はこの異世界に召喚されたんですか?」
とにかく、状況を把握したい私は神様相手でも積極的に質問した。
「正確には、『オーバー・ゲート』の発動に便乗され、この世界、ルディーメイヴィスに召喚されたと考えるべきだな」
「便乗、ですか?」
「ああ、まず、『オーバー・ゲート』と言う魔法は、簡単に言えば、本来なら関わり合うことがない複数のある異空間の世界との境界線を一時的に薄くするものだ」
パルアドルフ様が徐に右手を握り、パッと握り拳を開くと、淡い光の砂が宙に舞い宇宙模型図の様な絵が現れる。
「コレが本来なら関わり合うことがない複数のある異空間の世界の図だ。大分大まかではあるがな。紅音のいた世界もこの図の何処かにあるはずだ」
「おおお!!」
「そして、この世界に増え過ぎた余分な魔素を他の世界に流すと言う大魔法が『オーバー・ゲート』だ」
「ん?魔素?」
魔法っぽい説明方法に感心しているとまた聞き慣れない言葉に紅音は首を傾げる。
「この世界で魔法を使うためのエネルギーだ。だが、この魔素が増え過ぎると、生態系が狂い出したり、魔獣や人体や自然にも何かしらの影響が出る。最悪の場合では、気候や自然の急激な変化。魔獣系が凶暴化して人間が生存出来ない世界に成り果ててしまう事も有り得る。
だから、数百年に一度、増え過ぎた魔素を別の点在する異世界に細かく分散させて散らすために『オーバー・ゲート』を開ける必要があるんだ」
「え、そんな大掛かりな魔法なんですか?」
簡易的ではあるが、まるでテレビの映像のように動く魔法の説明。
聞く限り、人類存亡の危機フラグの大惨事に口元がひくつく。
「ああ、本来なら我々兄妹が10人がかりでやる、大魔法だからな。
だが、魔素が異常に増える事はそうそう無い。数百年かけて蓄積されないと人体に影響が出る事も無い。前回の『オーバー・ゲート』も今から120年前に発動したばかりで、少なくともあと300年以上は『オーバー・ゲート』を開く必要は無かったんだ」
「120年前?」
「ん?どうした」
120年前と言うワードに反応した紅音にパルアドルフが気付く。
「いえ、この世界に召喚された時にアルメディアス王国の宰相、ランスロット様が前回の聖女召喚に成功したと言っていたのも確か120年前だと聞きました。それと何か関係があるのですか?」
「ああ、『オーバー・ゲート』を開くと一時的ではあるが、この世界の魔力が集められた魔素の影響で魔力が上昇する事が稀にある。
つまり、通常では難易度が高度且つ大規模な魔法、特に異空間の世界との境界線を一時的に薄くするなる事で、異世界召喚系の魔法が『オーバー・ゲート』を開いた間だけは、成功の確率が上がる。
だから『オーバー・ゲート』に便乗して大掛かりな魔法に挑戦する輩は少なくは無い。
今回、紅音がこちらの世界へ召喚されたのもおそらく、そのせいだ」
うん。それに私が巻き込まれたと言うことか。なんとも傍迷惑な・・・・・。
「あの、私はこの世界を脅やかす魔王を倒す為に召喚されたとアルメディアス王国国王に言われました」
正確には、一緒に召喚された柚莉愛と言った女子高生が言っていた事だけど。
「先程も言ったが、魔素が増え過ぎると、魔物が凶暴化し、力も強くなる。それこそ生まれたばかりのスライムが魔王レベルに強さが跳ね上がる事もある。120年前の『オーバー・ゲート』で魔王レベルの魔獣が大暴れしていたからな」
なるほど、王様も宰相のランスロット様も嘘は言っていなかったか。
むしろ、少なくともあと数百年は開くことが無いはずなのに、急に『オーバー・ゲート』が開いて、再び未曾有の危機を感じて一か八かの賭けで聖女の召喚に乗り出した。と言った所か。
コレはあくまでも、私の推測だけど。
「あの、私の他に柚莉愛と言う高校生くらいの女の子もこちらの世界へ召喚されたんですけど、彼女も手違いで召喚されたんですか?」
「ああ」
私の質問に頷くパルアドルフ様。
「何せ、酔いに任せて発動だったからな・・・・。むしろ被害が2人だけで済んだのは不幸中の幸いだっただろうな」
「・・・・・・なんだか、開き直ってませんか?パルアドルフ様」
「うむ・・・・・」
私の言葉に気まずそうに視線を逸らすパルアドルフ様。
その時、
「その柚莉愛と言う女、少々厄介だぞ」
「ふぇ!?」
ビクン!!!
いきなり背後から聞こえた知らない男性の声に、私の体は座った状態で飛び跳ねてしまった。
「ッッッ!!」
振り返ると、新たに三人の美男美女が私の後ろに立っていた。
「ま、また増えた・・・・」
おそらく、自分に無関係では無いだろう神様達の登場に最早、慣れすら感じている紅音だった。
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