3人の神の謝罪
いきなり背後に3人の人に立たれ動揺する紅音。
燃えるような赤髪と真紅の瞳をした若い女性。短い黒髪に金色の鋭い眼をした成端な男性。そして、淡い水色の緩やかなロングヘアと水色の大きな瞳をした少女が立っていた。
3人とも美男美女美少女だ。
「って、あれ?貴方達何処かで??」
どこか見覚えのある顔立ちに、紅音は首を傾げる。
だけど、すぐに思い出した。
「刻の女神アディーダ。時空の神パルアドルフ。ギフトの女神ルカリス・・・・」
さっき『神々の集の泉』の石像の中にいた神々に顔と風貌がよく似ていた。
石像と同じ外見した人達が目の前に立ち、紅音は、
「ああ!」
何かに気付いたように、ポンと握り拳で手を叩く。
「この街のコスプレイヤーさんですか?」
無意識に目の前の現実を自己解決しようとした。
「え、あ、違い、」
「あ、もしかして、ここコスプレイヤーイベントの待合室でした?すみません、私何も知らないでこの部屋に通されたものでして。すぐに出て行きます」
「げ、現実逃避しないでくださいぃぃ」
ソファから立ち上がり出口を探す紅音に水色の髪と瞳をした美少女が狼狽えながら慌てる。
「此処は貴女のスキルである『亜空間プライベートルーム』の部屋の中よ。小鳥遊 紅音」
赤髪と真紅の瞳の美女にそう言われ、紅音の動きが止まる。
なんで、この世界の人には『小鳥遊 紅音』と言う名はまだ誰にも打ち明けてはいないのに・・・。
強張った表情で3人方へ向き直る。
「わ、私は、竹中 紫です」
「それは、偽名だな。確か、父親の旧姓と母親の名前を掛け合わせた名前だったな」
黒髪に金色の眼の美男にあの時咄嗟についた偽名の名の由来を言い当てられ、紅音は無意識に目の前の3人から距離を取ろうと後ろへ下がる。
「ッ、どうして、それを・・・・」
「あああ!!すみません!!すみません!!逃げないで下さいぃぃ!!私達は貴女の敵では無いんですぅぅ!!」
それを見た、水色の髪と瞳の美少女が涙目で謝りだす。
「ほら!!姉様も兄様も!!紅音さんを怖がらせてはいけません!!」
「む、べ、別に怖がらせてなど、」
「・・・・・」
「今日は、紅音さんに謝罪をする為にこうして神現までして紅音さんの前に出てきたんですよ?誤解を生むような態度はやめて下さい。姉様も兄様もタダでさえ言葉足らずで誤解されやすいのですから」
「ぅぅぅぅ、ごめん」
「・・・・・・すまん」
何故か歳下であろう水色の髪の美少女に怒られる赤髪の美女と黒髪の美男。
「あの・・・・」
「ああ!!ごめんなさい!!!」
取り残された感が半端ない私に水色の髪の美少女が再び頭を下げて謝る。
「えっと、小鳥遊 紅音さん。突然の神現、申し訳ございません。まずは、私達の話を聞いて下さい」
見た目は12、3歳くらいに見える少女なのに、とても真剣な顔で私と向き合う彼女に、私は、
「分かりました」
彼女の話し合いに同意した。
とりあえず、部屋に置かれていた小さな卓袱台を囲うように座る紅音、赤髪の美女、黒髪の美男、そして水色の髪の美少女。
「えっと、まずは自己紹介からさせて頂きます。私は、創造神デミウルゴスの49女、ギフトの女神ルカリスです」
「同じく創造神デミウルゴスの29女、刻の女神アディーダ」
「同じく創造神デミウルゴスの19男、時空の神パルアドルフだ」
「・・・・・・改めまして、私は、この世界では竹中 紫ですが、本名は小鳥遊 紅音です」
「随分とあっさりと受け入れたんだな」
黒髪の美男、時空の神パルアドルフが、意外そうな顔をする。
「いや、いきなり異世界に召喚されて魔法やスキルやら聖女とか魔王討伐とか神々とか、自分で決めた事ですが異世界で独り暮らし。なんか此処まで来たら、警戒はしましたが神様達も案外受け入れられるものですね」
はははと苦笑する紅音。
「・・・・・・・・、すみません」
「ごめんなさい」
「すまない」
苦笑する紅音に済まなそうに頭を下げる。
「え、あ、いえいえ!!すみません!!大丈夫です!頭を上げて下さい!」
紅音が慌てて頭を下げて謝罪する3人に頭を上げるように言う。
仮にも神様に頭を下げさせるのはあまりにも恐れ多い。
だけど、こうして神様達が頭を下げさせる絶対的な理由があるはず。
「えっと、あの、皆さんが謝罪すると言う事は、私がこの世界に召喚された事に関係があると捉えていいんですね」
私がそう言うと、3人の神様は気まずそうに互いに顔を見合わせる。
「その通りだ。小鳥遊 紅音。貴女は、我々の不注意でこの異世界へ召喚された人間だ」
時空の神パルアドルフが神妙な面持ちで私にそう告げた。
「不注意、ですか?」
「ああ。・・・・今、この世界では、【バンケット】と言う祭が行われているのは、知っているか?」
不意に時空の神パルアドルフが私に質問した。
「【バンケット】・・・・・。名前だけは今日知りましたが、具体的にどう言うお祭かは、知りません。でも、私の世界では、確か【バンケット】は宴と言う意味があります」
私の答えに、彼は小さく頷く。
「ああ、【バンケット】は我が父、創造神デミウルゴスの子である神々が年に一度天界に座す父の元に集い、現状報告をすると言うものだ。
下界、今この地上では、世界中に点在する創造神デミウルゴスの子の神々が一同に集う【バンケット】をいつの頃からか神々の偉大な行事だと奉る様になったと言われている」
「と言っても、殆どは現状報告と言う名の里帰りで、父上への報告を終えると、本当に宴会が始まるんだけね」
刻の女神アディーダがそう言い、気まずそうに頬をかく。
「・・・・・・・・・・・・」
「ああ、大いにも盛り上がったな」
「ええ、久しぶりに兄様や姉様達に会えて楽しかったです」
「まあ、みんなそこまで変わりが無かったけどな」
「供物として捧げられた美酒に美食は毎年の楽しみだからな」
「はい、美味しかったです。みんなで食べて飲んで、歌って踊って」
「それで、99人も兄妹がいるとそれはもう盛大な大宴会になって、その、毎回ドンチャン騒ぎになって、何かしらの問題が、」
兄妹和気藹々と笑い合っていたが、3人の神様の声が段々と弱々しくなって行く。
「起きて、今現在私がこの異世界にいると言う現状になってしまっている、と言う事ですか」
私がそう言うと、
「「「すみませんでした!!!」」」
3人の神様は土下座する勢いで私に頭を下げて来た。
神様の土下座、初めて見たなぁ・・・・・。
紅音は思わず場違いな感想を考えてしまった。
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