4-19.一緒にスタンピード狩りに行くわよ!(コルメ編)
「ライ、テオ!聞いたところ、最近ほかの人と一緒に狩りに行ってるそうじゃないの?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、今回はあたしの狩りに付き合ってもらうわよ!」
「···えっ!?強制で!?」
「どうせ暇でしょ?」
「確かに今日は特に用はないけど···。みんなボクたちの予定を聞いてからだったから···」
「じゃあ問題ないわね!今すぐ行くわよ〜!」
「ちょ!?ちょっと!引っ張らないでよ〜!」
「お、おい!コルメ!強引すぎるぞ!」
「いいからいいから!テオも行くわよ〜!」
「ちょ!?おい!なにしっぽ持ってやがんだ!?いてて!」
コルメは強引だったよ···。元気いっぱいが取り柄なんだろうけどさ···。
というわけで、どこに行くのか、どんな規模なのかの説明もなく、ボクたちは飛び立ったんだ。方角からして北西方向···、グランドの町の方角だね。高速飛行魔法をコルメは使ったから、かなり遠くのようだ。
飛んで2時間ほど、途中遠くにグランドの町が見えたけど通らずにたどり着いたのは···、滅んだ国であるゲートだった!
ボクたちは以前調査でやって来て、この世の地獄の様相だったと覚えてるよ。
「コルメ?ここって滅びた国じゃ···?」
「そうね。今はね!」
「えっ?どういう事?」
「国を再建するって話があるのよ。ここは天然の要塞だし、何もないところから国を新しく作るよりも楽でしょ?」
「そうだけど···。誰が再建するの?」
「この国の王族よ」
「えっ!?生きてたの!?」
「そうらしいわよ?真っ先に逃げ出して無事だったらしいけどね」
···そういう事か。調査の時に城に船が1つもなかったのは、王様たちが脱出するために使っちゃったからなんだ···。そのせいでこの城の中の人たちは···。
「···ボク、この仕事やりたくないんだけど」
「オレもだな···。胸くそ悪いぜ···」
「···確かにあたしもそうよ。この国の状況はライたちが調べたんですってね?だからあたしも知ってるわ」
「だったら!」
「これは仕事よ。個人の感情なんて関係ないわ。まぁ、選択の自由はあたしらにもあるけど、あたしらがやらなかったら、ほかの冒険者たちがやるわよ?相当な犠牲者が出るでしょうけどね」
「············」
「だ〜か〜ら〜!あたしたちがやるのよ。でも、依頼主の王族は気に食わないわよね〜?」
な、なんだか···、コルメが怖い笑顔をしながら言ってきたよ!?な、なにする気なの!?
「だからこの国、全部ぶっ壊しましょう!!」
「えっ!?」
「はぁ!?」
いきなりとんでもない事を言い出したよ!?どういう事!?
「そりゃあたしだって聞いた時は頭にきたわよ!そこであたしは依頼文をよ〜く見たの。すると、こんな事が書かれてたわ〜!『魔獣殲滅における建造物などの被害は考慮しない』ってね」
「えっ···?そ、それって···」
「そう!思いっきり壊しまくっていいって事よ!あの湖の上のお城も!ぜ〜んぶ壊しても魔獣を倒すために必要だから、文句言わないって事!テディもいい条件引き出してくれたわね〜!」
テディさんはコルメの専属ギルド職員さんだ。いつも顔を真っ青にしてうつむきがちに歩いているお兄さんだ···。きっとコルメがやらかした後始末をさせられてストレス溜まってるんだろうなぁ〜。
「全部ぶっ壊してもいいだなんて最高な条件、あたしが見逃がすわけないでしょ!?だから、ライたちもここでいろんな技を実験したらいいわ!こんな素晴らしい実験場、ほかにはないわ!国の外であたしが魔法の実験したら『やかましい』だの『地面が揺れて棚の上から物が落ちてケガした!』なんて言いがかりつけられてたからね〜!」
···そんだけ威力がすごいって事ね。テディさんは依頼以外にも尻拭いをさせられてるんだろうなぁ〜。
まぁいいか!というわけで、先制はコルメが南門に向けて魔法を撃った!!
「さ〜て!最初はこれね!Wエクスプロージョン!!」
ズドーーーーン!!
なんと!?両手に爆裂魔法を用意して両手を合わせて一気に解き放ったよ!?2発分以上の威力で、崩壊していた南門は跡形もなく吹き飛んでしまったよ···。
「あぁ〜!!これよ!この快感!!ここ最近、全力で撃てなかったからストレス溜まってたのよ!さあ!どんどん壊し···、ゲフンゲフン!魔獣殲滅するわよ〜!」
···これ、ボクたちの出番ないんじゃないかな?どっちかと言えばコルメを止める役割なんじゃ···?
コルメは次々に大規模殲滅魔法を、それはもう満面の笑みで手加減ナシでぶっ放していた!
いろんなところが巨大な穴ボコだらけになってるけど···。見なかった事にしよう。『これは魔獣との激しい戦闘の結果だった』って事で。
ウソはついてないよ!?ちゃんと魔獣1体に対して大規模殲滅魔法を撃っちゃったからね!···うん。ウソではないね。
「アハハハ!今日は最高ね〜!超気持ちいい!!こんなに全力で撃ち放題だなんて!あたしの竜生に一片の悔いなしよ!」
···うん。今日はボクたちの出番はなしって事で。たぶん、これでボクたちが魔法撃ったら···、『ちょっと!?邪魔しないでよ!?これからいいところなんだから〜!』って怒られそうだ···。
そうして国のわずかな平野部が穴ボコだらけになり、残るはお城と岸辺とをつなぐ橋になった。
しかも魔獣レーダーをみたら、どちらにも魔獣がご丁寧にもいたんだよ···。当然コルメも魔獣レーダーは見れてしまうので、確認した直後にさらに不気味な笑顔になってたよ···。
もう『魔帝』じゃなくて『魔王』でいいんじゃね?昔、アキさんの時代には大魔王ってのがいたらしいけどさ。
「さ〜て!それじゃあ最後はご先祖様が開発したっていう物理系究極魔法でトドメよ!」
「トドメって···。コルメ?なにするの?」
「ライ!見てなさい!全魔力つぎ込むから、帰りはヨロシク!」
「えっ!?どんな魔法使う気なのさ!?」
「はぁああああーーーー!!」
全然聞いてくれなかった···。仕方ないので、好きにさせとこう。この時の判断が、後で間違ってたなんて思ってなかったよ···。
「出てきて!!ゴールデンピコピコハンマー!!」
コルメが地面に両手をかざすと、地面から巨大なハンマーが現れた!?大きさはコルメの5倍以上あるよ!?
そして柄を持って右肩に担いだ!そして、翼を大きく広げて飛び立った!!
「ぺしゃんこになれーーーー!!」
ズドーーーーン!!
ハンマーがお城のてっぺんに当たった瞬間!頂上から建物そのものが消えていくように押しつぶされていった!!しかもハンマーに当たってない部分すら衝撃で吹き飛ばされていった!
そして地面に到達した瞬間に大爆発を起こし、橋も衝撃に耐えられずにすべて崩壊してしまったんだ···。
「す、すごい···」
「これがコルメの···、赤竜に伝承された魔法かよ···。おっそろしい威力だぜ···」
魔法を撃ち終わったコルメは、更地になった地面の上に大の字で寝転がってたよ。
「はあっ!はあっ!ちょ、超気持ちいい〜〜!!後は···、お願いね···。きゅう···」
コルメは魔力切れで気を失っちゃったよ···。
この後、ボクの転移でレクトに戻ってボクがテディさんに報告しておいた。コルメの部屋にはボクは入れないので、合い鍵持ってたテディさんと協力してコルメの部屋に入ってベッドに寝かしつけたよ。
後日、依頼主である王族から猛抗議があったそうだ。『あそこまで破壊されてるなんて思わなかった!!』だってさ。テディさんは『条件に書いてある』って突っぱねちゃったせいで、王族は事前に払っていた前金しか払ってくれなかったそうだよ。
今後、再建した国にはギルドは置かないことも決まったようだよ。そりゃ、約束破って踏み倒す人たちを誰も相手にしないよね?···うん。やり過ぎってのはわかってるけどさ。
今回はボクたちは何もしてなかったので、全額コルメに振り込んでもらったけど、『あたしを運んでくれたじゃない!』って事で運賃だけいただきました。めでたしめでたし?
コルメちゃんの大暴れ回でした!
皆さんも契約書はちゃんと読みましょうね~!コルメちゃんの担当のテディさんはコルメちゃんが絶対に建物も潰すだろうなぁ~と考えて先手を打っていたんですね。契約書に書いてあるのは向こうも知っていましたが、まさかここまでやりたい放題されるとは思ってなかったと言っていますが、契約書にサインした時点で了承していますので、文句を言われる筋合いがなくなってしまったんですよ。
このように契約書は不利になった場合は免責となるという条文がめっちゃあるんです。気をつけましょうね~!って言っても作者もよく読まずに契約しちゃってる事もありますが(笑)。
さて次回予告ですが、別の国のお偉いさんがライくんたちと話がしたいという依頼が舞い込んできます。どうやらコネを作って何かあった時に守ってもらいたいって下心があるとテオくんから言われますが、ライくんは面会します。すると、思いもしなかったお願いをされてしまいます!どんなお願いだったのでしょうか?
それではお楽しみに~!




