4-18.スタンピード狩りを手伝ってくれませんか?(トルム編)
「ライさん、テオさん!ちょっとお願いがあるんですけど···」
ボクたちが朝の鍛錬を終えてギルドの食堂で朝食をいただいていたら、トルムさんから声がかかったんだ。
「おはようございます、トルムさん。お願いってなんですか?」
「僕と一緒に今からスタンピード狩りを手伝ってくれませんか?」
「いいですけど···。そんなに規模が大きいんですか?」
「そうでもないんだけどね?ちょっとライくんたちと一緒にやれたらなぁ〜って思ってね。もちろん報酬は半分だけど出すよ」
「テオ、どうする?ボクはいいけど」
「別にいいぜ!」
「ありがとう!ライくんたちの戦いも見てみたかったんだよね〜」
「そうですか。ボクもトルムさんの戦いを見てみたかったですよ」
「あぁ~、僕の戦いは面白くないよ?アルムが出てきたら大惨事になっちゃうし···。出ないようにはしてるけどね」
「あ、あはは···。そうですか···」
トルムさんは常時回復魔法かかってるし防御が鉄壁過ぎるから、よほどのことがないと傷つかないんだ。それを超えてダメージを受けると···、アルムさんっていう別の人格が出てきて文字通り大暴れしちゃうんだよなぁ〜。
というわけで、今日はトルムさんと一緒に出動したんだ。
「へぇ~!テオさんも速いじゃない!」
「トルムもな!ついていくのが精一杯だぜ···」
「それだけ飛べたら浮遊大陸に戻れるんじゃないですか?」
「たぶんな···。まぁ、機会があればライにも見せたいしな」
「浮遊大陸かぁ〜。遠目でしか見れなかったから、ボクも楽しみだよ」
「大したものはないんですけどね。そうそう、ライさん?そろそろ僕の事は呼び捨てにしてくれませんか?」
「えっ?どうしてです?」
「確かに僕がSランクでは年上だけど、年齢なんて実力の前では関係ないよ。それに、こんなに仲良くなってるんだから」
「わかりました。よろしくね、トルム!」
「ありがとう!ライ!」
トルムも呼び捨てで呼ぶことになったんだ。そんな話をしていると、今回の目的地であるガバナにやって来た。
ここガバナはレクトの北東方向にある国だ。今回は国に襲いかかったスタンピードを退治するのがお仕事だ。
この国は先週襲われたそうだ。国の周囲には高くて分厚い壁で囲われているため、魔獣たちは周囲を囲って壁を攻撃していた。
じゃあ、どうやって知らせたか?というと、なんと国の外にある山に魔獣監視所なるものがあるそうで、そこで発見して国に鏡を使った光で合図して、さらに国からギルドへ救援要請をして別の町に知らせたそうだ。よく考えられてるなぁ〜。
さて···、上空からとりあえず状況はわかったので、テオとトルムは門の内側に着陸しようとしたら!?矢で撃たれちゃった!!
「いてて!おい!?なんで狙うんだよ!?」
「ボクたちが魔獣って思われちゃったんだよ!お〜〜い!敵じゃないです〜〜!救援に来た冒険者で〜〜す!!」
ボクが大声をあげたら聞こえたのか、矢が飛んでこなくなった。う〜ん···。この方法しか国の中に入れないもんなぁ〜。
広場に着陸したら、テオもトルムも人型に戻った。今日のトルムは翼としっぽを隠してないんだ。さっきまで竜モードだったから、隠す必要ないもんね。
広場にはどんどん人が集まってきた。そんな中、立派な服を着た人が出てきたので、その人にトルムはあいさつをしたよ。
「驚かせてごめんなさい。僕はトルムと言います。こちらはライとテオです。僕らは全員Sランク冒険者としてスタンピード討伐に来ました」
「私はここの警備隊長をしているスロットという者だ。こんな形で救援が来るとは思わなかったが、ありがたい。状況は···、空を飛んで来たのなら説明は不要だな?」
「はい。ここの守りは硬いですね!壁の外の魔獣の掃討でよろしいですね?」
「そうだ。壁の上からも攻撃はしてるのだが、なにせ数が多すぎるのでな···」
「わかりました。お昼すぎまでには片付けますね!」
「そ、そんなに早く!?」
「ええ。任せておいて下さい。僕は西側半分やるから、ライとテオは東側半分をお願いできるかな?」
「いいですよ!」
「任せとけ!」
というわけで今日も魔獣退治を始めるよ〜!
まずは着地点の魔獣を倒す!壁の上から飛び降りつつ、ボクの雷竜剣で一掃してやった。そこからボクとテオは東側、トルムは西側へ倒しながら進んでいくんだ。
「よし!まずはコイツだ!食らいな!ドラゴンキャノンーー!!」
ズドーーーーン!!
テオは着地までの間に魔力を圧縮していたようだ。すぐに発射して直線上の敵を消滅させてしまった!
範囲外で倒しきれなかった魔獣はボクが斬撃を飛ばして真っ二つだ!こうやって前へどんどん進んでいくんだ。
すると、倒した隙間を埋めようとさらに東側にいた魔獣たちがこっちにやって来た!どうやら移動する手間が省けたね!
ボクが斬撃を無数飛ばして接近させないようにしている間に、テオは次の大規模殲滅魔法の準備が整った!
「さあ新魔法の実験だぜ!アイスペタルストーム!!」
テオの新魔法、アイスペタルストームは小さい氷の刃を無数作り出し、その刃を前方へ飛ばして直線上にいる敵を斬り刻む魔法だ!ボクが以前使ったアイスペタルダンシングは範囲がちょっと狭いんだけど、ストームの方は刃が多いほど攻撃範囲が広いんだ!
ちなみにこの魔法はコルメが教えてくれたんだ。ボクも使えるよ。
こっちは順調だ!一方のトルムは···、
「いっけぇーー!ペンタ・ボム!!」
ズドーーーーン!!
ダーツって言う神器には魔力がこもっていて、使い方次第でいろんな魔法が展開できるんだって。今のは5本一斉に投げて五芒星っていう形に配置したら、それを結ぶ円内に大爆発を起こすんだ。さらに、
「はああっ!とりゃあっ!」
ただのパンチとキックなんだけど、身体強化300倍というとんでもない強化のせいで、パンチを放てば突き出した拳の風圧で魔獣が吹っ飛んでるんだ···。キックすれば斬撃にも等しい何かが飛んで、直線上の魔獣が文字通り潰されて行ってたんだ···。
当然攻撃も受けるけど、防御が硬すぎてノーダメージのようで、意に介さず攻撃を繰り出していたんだ。しかし!
「グゥオオオ!!」
ドズーーーン!!
魔獣が持ってた巨大な棍棒がトルムに直撃しちゃったんだ!
···あっ、これはマズいかも?
「フハハハ!!今のは良かったぜぇーー!いい痛みだ!!オレをこんなに気持ちよくさせてくれたから、コイツはお礼だ!釣りはいらねえぜ!!突竜拳!!」
ズドーーーーン!!
あぁ〜、ケガしちゃったからアルムが出てきちゃった···。もう治っちゃってるけどね。
とりあえずは放置でいいや!助けに行ったらボクたちまで『邪魔すんじゃねえ!!』って敵認定されて魔獣とまとめて攻撃されそうだ!
ボクたちはアルムの救援には向かわずにひたすら前方の魔獣をなぎ倒すことに専念したんだ。仕方なくだよ!
結局アルムが西側を全滅させたあと、こっちにやって来たよ···。ヤバい予感がするよ···。
「おいおい?この程度の連中にどんだけ時間かけてやがんだよ!?お前ら殺り方がヌルいんだよ!オレが手本見せてやる!派手にやってやるぜぇーー!黒竜双波ーーーー!!」
ズドーーーーン!!
アルムの両腕から黒い竜が撃ち出され、魔獣たちを飲み込みながら大きくなっていき、最後に大爆発した!
「うわっ!?」
「うぉっ!?」
ボクとテオは爆風がすごすぎて吹っ飛んでしまったんだ···。すごい威力だよ···。
「アハハハ!!心地よい風だぜーー!オレに楯突いた事を後悔しな!!まぁ、あの世に行っちまったから後悔できねえだろうがな!!アハハハ!!あ〜、今日も気持ちよかったぜ···」
そう言って目を閉じた直後、トルムさんに戻ったんだ。
「···あ、あれ?ま、まさか···!ライ、テオ!もしかして僕···!?」
「う、うん···」
「···そういうこった」
「や、やっちゃった···」
トルムは顔が真っ青になっていた。というのも···、強固だった外壁がさっきの一撃で一部壊れちゃってたんだ···。
この後、警備隊長さんにみんなで謝罪しました。『魔獣に壊されたということにしておくよ。事故って事で···』って言われちゃった···。
ホント、ごめんなさい!
アルムくんが大暴れの回でしたね!周りに被害が出ちゃいましたけどね。そういった事を考えなしで暴れちゃうんですよ。
アルムくんは結構魔法を使います。ダーツを使った魔法も初使用でしたね。使う本数が多いほど威力が上がるんですよ。前作のクロくんが使用した魔法以外も今後使いますよ〜。
さて次回予告ですが、最後はコルメちゃんがライくんとテオくんを誘いますよ〜!
ただ、コルメちゃんはスタンピード狩りと言ってますが、場所はすでに滅ぼされた国でした。どうして滅んだ国に居座ってる大量の魔獣を退治するんでしょうか?
それではお楽しみに〜!




