4-13.Sランクの初のお仕事
Sランクのみんなと試合という名の交流をして数日経った。
その日、レートさんが部屋にやってきたんだ。
「ライくん、テオくん。今日はお仕事を頼みたいんだけど、いいかな?」
「はい。いいですよ」
「どんな仕事なんだ?」
「スタンピードほどじゃないんだけど、Aランクでも撤退せざるをえない魔獣がいるみたいでね。そいつの討伐をお願いしたんだ」
「わかりました。それで、その魔獣はどこにいるんですか?」
「ここから南に行ったペルトンという町なんだ。歩いて丸1日ぐらいなんだけど、テオくんに飛んでもらったら日帰りで行けるんじゃないかな?」
「そのくらいなら夕方前までには戻ってこれると思うぜ!」
「さすがドラゴン族だなぁ~!そうそう、出没している魔獣はファイアーケラトという3つのツノを持つ4本足の巨大な魔獣のようだよ。その名の通り、火魔法を使用するから知能が高い。十分に気を付けてね!」
「わかりました!それじゃあ行ってきますね~!」
というわけで今日は魔獣退治に出かけるよ~!巨大な魔獣とのことだから、以前に戦ったレックスデラックス並みかな?魔法にも十分気を付けるようにしよう。
さっそく国の外に出てテオに乗せてもらって南へ飛んでもらった。ここレクトから出ている道は東西南北4方向に伸びているんだ。どれも整備されているので、上空からでもどこに道があるのかはっきりしているね。これだったら迷うこともなくたどりつけそうだよ。
1時間ほどでペルトンの町に着いた。外壁は1カ所がボロボロに崩れていたんだ···。どうも突進して突き破ったような跡が残っていた。
町中までは侵入できなかったようで、どうやら壁の近くで戦闘をしたような跡が残っていた。倒すことよりも追い返すことを優先したようだね。ある意味防衛に成功したようでよかったよ。
ボクたちは門の外で降りて、門番さんに声をかけた。
「こんにちは。ギルドから魔獣討伐でやってきましたライです。こっちはテオです」
「···え?子ども?」
「あ~、見た目はそうですけど、これでもSランクなんで···。はい、これが冒険者証です」
「へ!?ほ、ほんとだ···。これは失礼しました!」
「状況を教えていただけますか?」
「はい!ここではなんですので、部屋へご案内します!」
そうして連れてこられたのは門の近くにある詰所だった。そこの一室に案内されると、隊長さんらしき人がやってきたよ。
「待たせたね。状況を説明してほしいとの事だが?」
「はい。いつやってきてどうやって追い返したか?ですね」
「2日前の昼頃だったな。ものすごい音をたてながら、この町にやってきたんだ。壁に何度も体当たりして突破しようとしていてな。ちょうどAランク冒険者がいたので緊急で手伝ってもらったのだが···。見ての通り崩されてしまってな。そこからは全戦力で向かったのだが、魔法も矢も効かなくて···。もうダメだと思ったその時にちょうど雨が降り出してな。そしたら急におとなしくなって引き返してしまったんだ。あの雨に助けられたような気がしてるよ」
「なるほど···。その魔獣はどっちに行きましたか?」
「ここから北東方向だ。たくさん木々をなぎ倒しながら進んでいったから、後を追いやすいんじゃないかな?」
「わかりました。それじゃあ行ってきますね!」
「気を付けるんだぞ!」
これだけ情報があればなんとかなるかな?魔獣レーダーもあるし、テオに飛んでもらえればどこに行ったかもすぐにわかりそうだよ。
またテオに飛んでもらった。確かに上空から見ると北側の門から北東方向へ曲がりながら木々がなぎ倒された跡があった。これを追えば魔獣がいそうだね!
そして···、いたよ!しかし···、
「デカいな!?」
「こんな大きな魔獣がいるんだね···」
最初は小さな岩山だと思ってたんだよ。そしたら、その岩山に魔獣レーダーが反応していたんだ!大きさは5mぐらいかな?
とりあえず退治するか!テオはファイアーケラトの後ろに降り立った!テオは竜モードで戦うつもりだよ!
「まずはオレの先制攻撃だ!食らいな!!ガァアアアアーーーー!!」
テオがブレスを吐いた!もちろん直撃したよ!
ズドーーーーン!!
あたりにものすごい煙が舞い上がった!しばらくは状況がわからないから、警戒しつつ待機していた。すると···、
ズシーーン!ズシーーン!
大きな地響きがした!どうやら倒せていないようだね···。すると次の瞬間!
ズドーーーン!!
「うわっ!?」
「なに!?うぉっ!?」
いきなり爆風が押し寄せた!ボクとテオは吹き飛ばされてしまったんだ!
そして、ファイアーケラトがこっちを向いて立ち上がっていた!どうやら土煙を払うために魔法を使ったようだね···。さて、どうしようかな?相手はテオのブレスを受けても大したダメージにはなっていない頑強な魔獣だ。ボクの魔力剣で通用するか···?試してみる価値はありそうだ!
「テオ!今度はボクがやるよ!いけーーー!秘技!弦月斬!」
思いっきり魔力を込めた斬撃を飛ばした!なんとかキズをつけることはできたけど、かなり硬い!これは危険だけど接近戦で直接斬りつけるしかなさそうだね!
そう思ったその時!ファイアーケラトが突っ込んできた!テオは上空へ、ボクは右へ大きく跳んで回避した!これは強敵だなぁ~!
となると、あれは効きそうかな?やってみる価値はありそうだ!
「テオ!もう1回ボクがいくよ!」!
「おう!気をつけろよ!」
テオは空を飛びながら魔法で気を引きつけてくれている。ファイアーケラトはテオに火球の魔法で撃墜しようとツノが赤く光りながら何発も撃ち込んでいた!
ボクはそのスキに背後に回って胴体部分に魔力剣を突き刺した!
「ギャァアアアー!!」
「おっと!?危なかった〜!」
ファイアーケラトは刺された方へ寝転がってボクを押しつぶそうとした!とっさに剣を抜いて大きく後ろへジャンプしたよ。
そして巨体を起こしたその時に、ボクは雷魔法を撃ち込んだ!
「サンダーハープーン!いっけぇーー!!」
雷魔法で具現化した銛をボクはファイアーケラトのさっきの傷口へ撃ち込んだ!
ドスッ!!
「ギャァアアアー!!」
「スパーク!!」
ボクがそう叫ぶと、撃ち込んだ雷の銛へボクの雷魔法が伝わってファイアーケラトは感電した!外側がダメなら内側からってね!
「グ···、グアァアアーーー!」
しかし!ファイアーケラトは最期の悪あがきか、大きな火魔法を撃ち出そうとしていた!全身が赤くなり、体全体で撃とうとしている!?
だったらこうしてやる!
「テオ!離れて!ボクがトドメを刺す!」
「わかった!」
テオが離れたのを見て、ボクは特大の水球を魔法で作り出した!
「これで終わりだ!特大ウォーターボール!!」
ボクが魔法を放ったと同時にファイアーケラトも渾身の火魔法を撃ち出した。
ズドーーーーン!!
「うわっ!?」
「ライ!?グッ!?」
ボクとファイアーケラトの魔法がぶつかった瞬間に大爆発が起きた!!
「ゲホッ!ゲホッ!ラ、ライ!?大丈夫か!?」
「ゲホッ!ゲホッ!だ、大丈夫···。思ったよりすごかったなぁ〜」
「あれは何だったんだ?」
「あれは『水蒸気爆発』だね。遺産の知識にあったから再現してみたんだ」
「『水蒸気爆発』?」
「水は蒸発すると大きさが一気に膨れ上がるんだよ。ボクが作った水がファイアーケラトの火魔法で一気に蒸発して爆発したんだよ」
「へぇ~。そんな事があるんだな」
「まぁ、魔獣の魔法を利用したってわけ。···うん。レーダーに反応ないから倒せたね!」
「さすがだなぁ〜!ライはすげえぜ!」
「すごいのは遺産の知識だって!じゃあ、報告して終わりだね〜!」
こうしてボクたちの初めての仕事が無事終わったんだ。
ライくんとテオくんのSランク初仕事は大変でした。
ライくんが魔力剣を突き刺してから、そこに雷魔法を撃ち込みました。人間もそうですが、皮膚はそれなりに抵抗値が高く、電気を通しづらいんですね。ところが体内は体液で満たされてるので電気が通りやすく、特に神経が通りやすいのです。
ですので感電すると後遺症が残りやすいのは、神経系がやられてしまうからなんですね。筋肉を動かす信号電流は微々たるものなので、そこに電流を流すので焼けちゃうんです。
また、感電する時は汗をかいてるときが多いです。汗で通電しちゃうんですね。感電死亡事故が最も多いのは8月なんですよ。ちなみにコンセント電源の電圧で亡くなる方がほとんどです。
感電は電圧はあんまり関係なく、電流が原因なんですね。そういう意味では実は回路の組み方によっては乾電池でも感電の可能性もあるんです。特殊すぎるので、普通の家電では大丈夫ですからご安心くださいね。
さて次回予告ですが、サムくんからスタンピード討伐に誘われます。どんな感じでやるのでしょうか?前後編に分けてお届けしますよ〜。
それではお楽しみに〜!




