4-9.トルムさんの本性!?
ウインと朝の鍛錬をして戻ってきたら、お隣の部屋から『武王』って言われてるトルムさんが出てきた。見た目は人族なんだけど、本当は黒竜だったんだ!
そして、やっぱり試合することになっちゃったよ〜!
はい、またまたサムの転移でおなじみの国の外にやって来ちゃいました···。今日はここで目が覚めたんだよなぁ〜。
サムはもう転移役にさせられちゃったよ···。ウインには逆らえないんだなぁ〜。
「じゃあ、僕はテオと試合させてもらおうかな」
「えっ?ボクじゃなくて?」
「うん。ドラゴン族は強い者と戦うのが大好きって知ってる?もちろん、ライが弱いって意味じゃないんだ。ドラゴン族同士で久しぶりにやり合いたいんだよね」
「テオ?いいの?」
「ああ、いいぜ。オレも久しぶりにドラゴン族同士でやってみたいしな」
今回はテオがやる事になったよ。ドラゴン族同士の試合って、どんな試合なんだろうね?
「おい、ライ。ちょうどいいから魔法防御の練習もしとけ」
「え?サム、どういう事?」
「一応注意しといたぞ。どうなるかは見りゃわかる」
サムが注意って、どういう事?よくわかんないけど、一応物質化魔法の準備はしておいた。
これ、まさかあんな事になるとは思わなかったんだよね···。
「それじゃあよろしくお願いします!」
「おう!よろしくな!」
まずは人型でやり合うようだ···。すると、トルムさんの姿が変わって、頭には短いツノ、そして黒い翼としっぽが見えた!幻惑魔法を解いたんだね。
「じゃあ、いきます!」
トルムさんが突っ込んでいった!それをテオが受ける!
ここからは肉弾戦だった!すさまじい勢いでトルムさんはパンチとキックを繰り出した!
対するテオも同様にパンチとキックで応酬だ!うまいことトルムさんの攻撃をさばき切っていた!
技なんて関係ない!純粋に力同士のぶつかり合いだった!一発一発が『ドンッ!』、『バンッ!』って重低音が周囲に響き渡っていた!ものすごい威力があるんだろうなぁ〜。
「さすがですね!こんなに楽しいのは久しぶりです!」
「一撃一撃がすげえ重いじゃねえかよ!?よくこんな攻撃が続くな!?しかもどんどん重くなってきたじゃねえか!」
「はい!これしか取り柄ないですから!大した魔法は使えないんで!」
「十二分だ!まだ身体強化の倍率上げる気だろうが!?」
「ええ!300倍までいけますよ〜!」
「ちょ!?どこが大した魔法じゃねえんだよ!?」
「身体強化しか取り柄ないんで!」
う〜ん···。身体強化300倍ってすごすぎるんだけど?よく体がもつなぁ〜。ドラゴン族だからかな?
「くそ!このままじゃオレがもたねえ!そろそろキメるぜ!」
テオが何か仕掛ける気だ!両手の拳が輝き出した!魔力を集中させてるみたいだ!
「いくぜーーー!クラッシュナーーックル!!」
対するトルムさんはというと···!?構えも何もしてなかった!無防備で受ける気だ!本気なの!?
ズドーーーーン!!!
テオの渾身の必殺技が決まった!ボクも初めて見た技だったよ!すごい威力だ···。
土煙が晴れると···、そこにはトルムさんが立っていた!少し傷ついていたけどほぼ無事だったよ!?ただ···、様子がちょっと変だった。
「ふふふ···。はははは!あーっはっはっは!」
「な、なんだ···?いきなり笑い出しやがった···?」
「はははは!いいぞ···。オレの竜気を貫通するほどの威力···。この痛み···。この痛みだ!!もっと···、もっと痛みを味あわせろぉーーー!!」
「な!?なんだ!?こいつ、性格変わった!?」
トルムさんの目つきが変わった!?しゃべり方も···、これまでの丁寧なしゃべり方じゃなくなってる!!
「あ~、やっぱりこうなっちまうよなぁ~」
「···手加減しそうにないね」
「え?サム?ウイン?どういうこと?」
「トルムは本当は戦闘狂なんだよ。普段はおとなしくて礼儀正しい人格が表なんだが、ある一定以上の痛みを味わうと別の人格が出てくるんだよ。今のトルムは裏のトルムだ」
「え!?べ、別の人格!?」
「···今だったら目の前すべて敵扱い。···こっちにも攻撃が来るかも」
「そ、そうなの!?だったらテオとの試合を止めないと!」
「もう手遅れだ。ああなった以上、相手を倒すか自分が倒されるか満足するしか表の人格には戻らねえぞ。ヤバかったらオレたちも本気で加勢しないとまずいかもな」
「そんな···」
「···ライも魔法防御を。···私たちの後ろにいたほうがいい」
「わ、わかった!テオ!本気で倒さないといけないんだって!!」
「マジかよ!?こっちも結構厳しいぞ!?」
ちょっとマズいことになっちゃってるのかも···。ボクの時もそうだけど、なんでいつも『試合』って言ってるのに命をかけるような戦闘になっちゃってるのさ!?
「さあ!全力で!!オレを殺しにかかってこい!でなければテメエの命を食らってやる!!」
「願い下げだ!!これは試合だろ!?そこまでやらなくてもいいじゃねえかよ!?」
「あぁ!?ふざけんな!バカ野郎!!こんなに興が乗ってきてるのに水を差すな!!ここからが楽しい楽しい『死合』なんだぜ?テメエから来ないなら、こっちから行くぜーー!」
トルムさんの姿が消えた!?次の瞬間!!
ズムッ!!
「ガハッ!?ゲホッ!ゲホッ!」
重低音が響いた!音の発信源はテオのみぞおちだった···。トルムさんのパンチがテオの竜気を貫通してみぞおちにめりこんでテオが口から血を吐いちゃってる···。
「こんなもんかよ!?調子狂うな!せっかく久々に表に出れたんだから、もっと暴れたいんだよ···。もっとだ···。もっとオレを楽しませろぉーー!!」
「ぐっ!ロックガトリング!!」
「そんなおもちゃが通用するか!!なめんなーーー!!」
テオが放ったロックガトリングは無数の石の弾を撃ち出す魔法だ!しかし、トルムさんは石の弾をすべて叩き落してしまったんだ···。
「はっ!この程度かよ?もっと強力な魔法あんだろ?ナメてんのかぁ!?出し惜しみすんなーーー!!」
「ぐっ!うぐっ!がはぁっ!?」
トルムさんの怒涛の攻撃ラッシュをテオはノーガードで受けてしまった···。そして倒れてしまったんだ···。
「ちっ!つまんねぇな~。面白くもなんともねえ。これじゃあ、ただの弱いものイジメじゃねえか···。テメエならもっとオレに痛みを味あわせてくれると思ったのによ。そんじゃあ、次はそこのガキをいただくか!」
「···え!?ボ、ボク!?」
「そうだ!サムとウインは前にやりあってるから、お前だ。お前なら···、オレに痛みを···、楽しませてくれるよなぁ~?」
「くっ!」
ボクは身構えた!すると···、テオの右手がトルムさんの左足をつかんだ!
「ん?なんだ、まだやれるんじゃねえか?」
「···ライには、指一本触れさせねえ!」
「ははは!いいぞ~!そうだ!その目だ!やっとやる気になったようだな!それでいいんだよ!」
「···これはまだ試した事ないんだけど、ご先祖の最強魔法を味わってもらうぜ」
「ほう!?これは興味深いな!いいぜ!ノーガードで受けてやろう!中途半端な痛みだったら···、お前の竜生はここで終わりだ!」
テオのご先祖様の最強魔法···?あっ!?遺産の知識にもあるよ!その知識の通りにテオは両手に魔力を集中し始めた!さっきの体術技よりもさらに魔力が両手に集中していく!
テオの両手がまぶしく光り輝きだした!けれどもテオの顔はどんどん険しくなっていた!かなり苦しそうだ!
「これ···!?かなりきつい!!1発が限界だ···!だけど!これで決めてやる!!」
そしてテオは両手を組んで前に突き出した!両手を少し開くと竜の口のように見えるよ!?
「いくぜーーー!ご先祖の最強魔法!ドラゴンキャノーーーン!!」
ズドーーーーン!!!
そう!ドラゴンキャノンだ!超圧縮した魔力を一気に放出する、テオのご先祖様であるリオさんが開発した最強魔法だ!これなら···。
土煙が晴れると···、そこにはトルムさんの姿があった!全身血だらけになってるよ···。
「は···、ははは···。これだよ···。いい痛みだ···。やればできるじゃねえかよ···。まぁ、今日はこのあたりで終いだな···。久々に楽しかったぜ···」
そう言ってトルムさんは倒れた。そしてものの数秒で···、
「う~~ん···。あ、あれ···?えっ!?テ、テオさん!?」
「は、ははは···。も、もう···、限界···、だぜ···」
テオはその場で倒れちゃったんだ···。トルムさんは表の人格になったけど、血まみれなのに平気そうな顔だった···。
これが『武王』なんだなぁ~。すごい人に出会っちゃったなぁ~。
トルムくんは黒竜ということで、前作では策略にはまって滅亡寸前になり、クロくん一人だけでしたが、1000年経った今ではちゃんと集落ができるぐらいまで繁栄しました。
トルムくんは多重人格者でした。表の人格がメインで、一定以上のダメージを受けると裏の人格が出てきます。
戦闘スタイルも異なり、裏の人格だと魔法攻撃も多用してくるんです。かなり攻撃的になりますね。
しかし、裏の人格は口は悪いですが表の人格や仲間を気遣ったりしてるんですよ。ただ、表現方法が不器用なだけなんですね。ツンデレですかね?なかなかいいキャラになりましたよ。
さて次回予告ですが、トルムくんの裏の人格のお話のあと、夕方だったので町を散策に出かけます。すると、怪しげなおばあさんに声をかけられますよ~。
それではお楽しみに~!




