4-5.サムが本気でキレちゃった!?
レクトの町中を見物しよう!って出かけたら、みんな畑仕事に行っちゃって人がほとんどいなくなってしまってたんだ···。だからお店は帰ってくる夕方以降に開くところが全部ほとんどだったよ···。
仕方なく部屋に戻ったら、カギを勝手に開けてSランクの少年『忍者』さんがいたんだ!しかもアキさんの子孫だって···。
「サムさんはいつからSランクなんですか?」
「だ〜か〜ら〜!サムでいいって!3年前からだなぁ〜。家出しようとしたら、母ちゃんから『だったらちょうどいいから、地上で武者修行してこい!』って言ってきたんでな」
「···うわぁ~。とんでもねえ母親だなぁ〜」
テオがドン引きしてるよ···。ボクもそうだけどさ···。
「ま、浮遊大陸じゃ暇だったからいろんなイタズラしてたし、地上の方が面白そうだったんでな。自由に遊ばせてもらってるぜ!」
イタズラがひどくて追い出されたんじゃないの···?ボクの口から言えないけどさ···。もしかして、ギルドの職員さんにもイタズラしてるんじゃ?
「そういうライたちは?賢者の遺産ってどんなものなんだ?」
「簡単に言えばアキさんたちの知識や力だね。この前は『トランス』ってのも短時間できるようになったよ」
「なんだってー!?トランスできんのかよ!?」
「う、うん···。アキさんが言うには『お試し版』らしいけど···」
「ありえね〜!神狼族しか使えないはずのトランスが使えるのか···。じゃあ!オレと試合しようぜ!」
「えっ!?し、試合ですか!?」
「そう!本家本元のトランスを見てもらおうじゃないか!」
「は、はぁ···」
「そんじゃあ、今から行くぜ!かなり激しいバトルになるだろうから、国の外でやるぞ!」
「えっ!?バトルって!?試合じゃないんですか!?」
「どっちでもいいじゃねえか!さ!行くぜ〜!」
そう言ってサムはボクとテオの手を握った!次の瞬間!周りの風景が変わって、だだっ広い草原にいたんだ!これって転移!?ボク以外にも使えるのか!?
「ん?どしたライ?転移が珍しいのか?」
「い、いや···。ボク以外でも使えるんだなぁ〜って思って···」
「そりゃそうだろ?ご先祖が編み出した魔法を、オレが使えるに決まってるだろ?まさか···、自分だけしか使えないって思ってやがったか?」
「い、いや!?そ、それは···」
「···こりゃお仕置きだな。確かに継承者は特別だ。だが、それは自分1人だけじゃないって知ってながら、それでも特別だって思ってやがるな?···覚えておけ。世の中、上には上がいるってな。全力で殺しに来い!でないと···、オレがその生意気な顔を潰すぜ?」
「ま、待って!?」
「戦場でそんなのは通用しねえ!行くぜ!!」
サムの姿が消えた!?どこに行ったんだ!?
「後ろだ」
「え!?ぐわっ!?」
いつの間にか背後に回られて蹴られた!?ど、どういう事!?
「ライ!ライも使った『影移動』だ!」
「···あっ!?そういう事か!」
「『そういう事か?』だと?とんだ甘ちゃんだな。さっきは蹴ったけど、これが剣とか武器だったら今頃あの世行ってるぜ?よく今まで生き残れたな?」
「ぐっ···」
「じゃあ次だ!」
ボクは魔力剣を展開した!今日は鈍器モードだよ!
サムは一気に突っ込んできた!武器は持っていない!体術で攻撃か!?ボクが剣を振ると、そこにはサムはいなかった!
すぐにその場から飛び退いた!すると、ボクが立ってた位置にナイフが突き刺さった!
「甘いな。そう動くと思ってたぜ」
「な!?がはっ!?」
「ライー!」
またしてもボクの背後にいて蹴りをくらった!
どういう事!?ナイフはボクの前から飛んできていたはずだ!なのに実際には後ろにいた···!?
でも今はボクの後ろにいる!一撃食らわせるぞ!
「やぁああーーー!!」
ボクの一撃をサムは避けようともせずに受けた!しかし当たった感触がない!?
「どこを見てんだ?」
「なっ!?後ろ!?速い!!」
「違う。お前が遅いんだ」
「ぐわっ!?」
またしてもボクは蹴られてしまった···。つ、強すぎる!これが···、Sランクの実力!?
「どうした?もう終わりかよ?···興ざめだな。こんな弱っちいのにご先祖の一番の遺産が継承されたなんてな···」
「く、くそ···!まだ···、まだやれる!」
「いや、終わりだ。今ので3撃。これが戦場ならとっくにあの世だ。そんじゃあ、今度こそ本当に···、終わりにしようか。見せてやるよ。神狼族の真のトランスをな!!」
「···え!?」
「はぁあああーーー!!」
サムが気合いを入れると!?目が金色になって顔に紋様が出てきたんだ!こ、これが···、神狼族のトランス!?
「ふぅ~。さあライ!お前のトランスも見せてみろ!紛い物の力をな!!」
「···わかった。でも、紛い物でもアキさんがプレゼントしてくれた力なんだ。そう簡単にやられてたまるか!!はぁああーー!!」
「ライ!?」
テオが心配してくれてるけど、ここはボクがやらなきゃいけない!体中に力があふれてきた!
勝てないかもしれない···。でも、一矢報いる!!
「秘技、斬月・桜花!!」
「ほう···?そう来たか。なら、こっちもそれなりな技で相手してやろう。···暗殺技、流鏑馬」
サムが剣を構えた!そして次の瞬間!また消えた!
次は···、どこに出てくる?落ち着け!サムがいる場所ではなくて方向だけでもわかればいい!
いつもボクの背後をとっていた。だったら···、次も同じ手で来るはず!
···ん!?何か飛んできた!その瞬間!ボクの周囲の時間がゆっくりになった!この前の感覚だ!
振り返ると、やっぱり後ろからだ···。剣を投げてきたんだ!それをボクは斬月で弾き返そうとした!
その時だった!背後にサムの気配がした!振り返ると前方には飛んでくる剣!そして後方にはサムだ!どっちも同時には対応できない!!
だったら···!!こうだ!!
バシッ!!
「(ボキィッ!!)ぐああっ!?」
「(ドスッ!!)ぐふっ···!や、やっと···、一矢···、報いれた···」
「ちょ!?ライ!!サム!!」
途中でボクは斬月の攻撃対象を変更した。旋風斬の要領でその場で急回転してサムのみ攻撃したんだ!
サムはボクが攻撃してくるとは思ってなかったようだ。ノーガードで魔力剣が左腕に当たって左腕をへし折ってやった。
その代わり···、ボクは投げられた魔力剣が背中から突き刺さって貫通していた···。
これ···、本当に試合じゃないよ···。痛みを···、感じない···。今回は···、ダメ···、か···、も···。
前作をご存知の方でしたらおわかりかと思いますが、サムくんの先祖であるナツちゃん、その母であるハルちゃんは暗殺術が非常に得意でした。そのため、サムくんも一通りの暗殺術は使うことができます。
ライくんも賢者の遺産のおかげで一部の暗殺術は使用できますが、さすがにサムくんにはかないません。
さらに前作にはない新技も登場しましたね。1000年も経つと進化してるんですよ。
そして真のトランスまで使いました!ただ、実はサムくんはこの状態にあまり慣れてないんです。ですので、前作のハルちゃんたちのような使い方までには至っていません。これから少しずつ成長していきますからね〜。ちゃんと鍛えるシーンもこのあとご用意しております。
さて次回予告ですが、試合と言っておきながら瀕死の重傷を負ってしまったライくん。ちゃんと治療してもらいますよ〜。そしてサムくんと仲良くなります。
そんなライくんとサムくんのやり取りをお楽しみに〜!




