4-4.ライとテオ、Sランクと初顔合わせをする!?
「···ほかのSランクとの顔合わせだよ!!」
「············は?」
ボクとテオは呆気にとられてしまった···。スタンピードより厄介なんですか···?
ボクたち専属のギルド職員であるレートさんがボクたちに課した最初の任務は、ほかのSランク冒険者との顔合わせだった!?
いや、確かに大事だけどさ···。スタンピードより厄介ってどういうことなのさ!?
「それって、スタンピードより本当に厄介なんですか?」
「ライくんたちは会ったことがないからそう言えるんだよ···。あのワガママし放題のじゃじゃ馬連中は!!」
「そ、そうなんですね···。今は部屋にいるんですか?」
「いや、この1週間の間に戻ってくるはずなんだがね···。きっと寄り道したりして帰ってくるはずだから、いつ帰ってくるかがわからないんだ···」
「そ、そうですか···。ボクたちも道に迷って目的地に到着が1月ほど遅れたこともありましたけど···?」
「···そ、そうなのか!?こんなにしっかりしてるのに!?」
「ご、ごめんなさい···。気をつけますので···」
「まぁ、いいか。とりあえずそれまでは自由にしてていいからね。何かあれば部屋の入口の扉の下に手紙をいれておくからさ。ほかに何かあったら下の受付じゃなくて部屋にある呼び出しボタンを押してくれたらいいからね。アイツらは部屋にいる時に暇だからボタンを連打したりしてるけど、ライくんたちはそんな事はしないでね!私が休みの時は代務の者が対応することになってるからね!」
「は、はぁ···。わかりました···」
思っていた以上にSランクの人たちはヤバそうな感じがするなぁ~。でも、会ってみないとわかんないこともあるからね。もしかしたら、実はいい人だったってのもあり得るし、ギルドの職員さんたちと相性が合わないって事も考えられるよ。うん、そういうことにしておこう。
「さて、おそらく今日はSランクの人は帰ってこないだろうから、レクトの町の中を見て回ろう!」
「おう!まずはどこに行くよ?」
「ギルドの依頼掲示板かな?どういった問題があるかがわかるからね!」
「そうだな~。まぁ、オレらがやるものはないんだろうけどな」
食堂を出て依頼掲示板のあるところにやってきた。ここは町が大きいせいか、壁に貼りだすのではなくて掲示板が独立して立っており、裏表に依頼の紙が貼れるようになっていたよ。残っている依頼を見たら、この町の傾向がわかるからね。どれどれ~?
・旦那の浮気調査!生死は問わないよ!むしろ〇してくれたら嬉しいね!保険金掛けてるから!
・迷いネコ探しています!人見知りが激しいので、ヘタに近づいたらかみ殺されます!
・食い逃げ犯を捕まえてくれ!たらふく食うだけ食って逃げやがった!生死は問わん!生きてたら首輪つけて一生働かせてやる!
・信じていた友人に騙されて100万ジール奪われたんだ!相手は犯罪組織だから、取り返すのを手伝ってくれ!
・水源地の清掃依頼
···うん。ここは結構平和なようだね。人間だけで完結してしまう依頼ばっかりだった。ほかの町だと護衛や魔獣討伐がほとんどで、こういった依頼はほとんどなかったからね。
「とりあえずこの町が平和だってことはわかったよ」
「···ライの平和の基準がわかんねぇなぁ~。思いっきりヤバイ犯罪なのがあるじゃねぇかよ···」
「え?だって魔獣が絡んでないでしょ?」
「そりゃそうだけどよ···。まぁ、オレらが請けるわけじゃねぇからな。関係ないな」
「それじゃあ、町に出かけてみよう!何か欲しいものがあったら買うよ~!」
「じゃあ、おいしいもの買おうぜ!」
「そうだね~!屋台巡りもやっちゃお~!」
町は人が多かった!こんなに人が多い町は初めてだよ~!
この町はダイナモの町のモデルになったらしい。ただ、ダイナモはこれよりも一回り小さいね。大きい分、人がたくさん住んでるので賑やかだ。
朝のこの時間はみんな町の中の壁の外にある農地へ畑仕事に出かける人が多いようだ。朝から屋台が出ていて、みんなそこで買って畑に向かって行くようだね。町からどんどん人がいなくなっていった。
そう、この町では畑仕事に力をいれてるみたいだった。だからお昼を食べようとすると···
「なんで···、お昼の時間なのに屋台が閉まってんだ!?」
「食堂もほとんどお休みだね···。っていうか、町中に人があんまりいないよ?」
「みんな畑仕事しかしてねーのかよ!?」
「そんな事ないと思うけど···。どこも営業時間は夕方からがほとんどだよ?」
「え~!?って事は、昼はギルドの食堂ぐらいしかないのかよ!?」
「そうっぽいね。もっと探せばあるんだろうけど···。また夕方に来ようか!」
というわけでギルドに戻って昼食にして、部屋で休むことにしたんだ。
部屋に戻ってカギを開けて中に入ると···、
「おっ!?やっと戻ってきたな!あんたらがあたらしいSランクだな?」
なんと!?部屋の真ん中にあるソファの上で寝っ転がっている少年がいた!銀髪にちょっとだけ青みがかった髪をして丸っこい犬耳をした獣人だったよ。
「だ、誰!?」
「てめぇ!どこから入りやがった!?」
「おっと!?自己紹介してなかったな~。おれはサム。『忍者』って呼ばれてるな!ちゃんとそこの扉から入ったぜ?オレの手にかかれば、カギなんてあってないようなものだからな!···あっ!?誰もいなかったからノック忘れてたわ!ははは!」
「『忍者』!?あなたがSランクの1人なんですか!?」
「そうだぜ!ちびっ子!それと···、へぇ~、白銀竜か。オレが知らない間に浮遊大陸から降りてたのか?見たことないヤツだけど···」
「そりゃそうだ。オレは地上にはるか昔に降りて『賢者の遺産』の封印を守っていたんだからな」
「···あっ!?思い出したぜ!確か···、テテ···、だっけ?」
「テオだ!!間違って覚えてやがったな!?ケンカ売ってんのか!?」
「···あ~!そうだったそうだった!わりいわりい!そういう人がいるって話は聞いてたんだけど、内容までは全部知らんかったからなぁ~。そっちのちびっ子は?」
「ボクはライです。『雷帝』ってあだ名があります」
「へぇ~、雷帝ね···。かっこいいじゃんかよ。賢者の遺産の継承者なんだな?」
「はい。そういうサムさんは?」
「サムでいいぜ!オレはこの魔力剣とスマホ、それに蓄魔の腕輪だな!」
「えっ!?それってボクと同じなんですけど···?」
「そりゃそうだろ?オレは『神狼族』なんだから、『賢者の遺産』を作ったアキがご先祖様だしな!アキ一家が持ってた神器を継承したんだぜ?」
「ええ~~!?アキさんの子孫なんですか!?」
「オレで30代目ぐらいかな···?よく覚えてねえけどな!まぁそんなことはどうでもいいさ!これからよろしくな~!」
忍者と呼ばれるサムさんはアキさんの子孫で、伝説の戦闘種族と言われた『神狼族』だったんだ···。
依頼掲示板はちょっとカオスでしたね(笑)。これ、前作でもそうですが、いろいろ変な依頼を考えるのが楽しいです。
ライくん自身は魔獣が関わっておらずに人だけで解決できるのは平和だと考えてしまってましたね。でも、人の争いは魔獣以上に闇が深いって事を知らないだけなんですよ。賢者の遺産があるとはいえ、ライくんはまだ5歳ですからね。
どっちかといえば厄介なのが人の争いなんですけどね···。魔獣は退治すればいいだけですから。実力は求められますけどね。
最初のSランクは前作のアキくんの娘であるナツちゃんの子孫であるサムくんです!
ちょっとノリがナツちゃんの旦那さんであるヨウくんに似てますね。もちろん神狼族ですから、非常に強いんですよ〜。ちょっとデリカシーないですけどね。
鍵開け魔法は前作でナツちゃんが某竜退治の3作目のゲームで登場した某魔法を再現したものでしたね。ちゃんと子孫に伝承されてますよ〜。
さて次回予告ですが、サムくんからちょっと腕試ししようぜ!と誘われて、ライくんと試合をします。思った以上に白熱してしまい、結果はどうなるのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




