4-3.Sランクお披露目会
「(コンコン!)おはようございます!起きてますか~!?」
ん?なんだ···?
「(コンコン!)今日は朝からSランクお披露目会ですよ~!起きてくださ~い!」
···あっ!?そうだ!昨日エマさんから、今日お披露目するって言ってたよ!時間を聞いてなかった~!」
「はーーい!すぐに準備しますねーー!!」
「朝食はお披露目会で出ますから、着替えたら降りてきてくださいね~!」
ボクはすぐ隣の部屋で寝ているテオを起こしに行った!
「テオ!起きて!急いで準備しないと!」
「···ん~?もう···、朝~?」
「そうだよ!今日はボクたちのお披露目会だって!急いで準備して!」
「···あ~、そういえばアイツ、そんな事言ってたなぁ~」
テオはあんまりエマさんの事が好きじゃないようだね。相性の問題もあると思うけどさ。
そして10分で準備を終えて、ボクたちは宿の前に下りてきた。すると、ギルドの職員さんらしき人が待っていたよ。
「おはよう、ライくん、テオくん。私はレート。キミたち専属のギルド職員だ。よろしくね」
「おはようございます。こちらこそよろしくお願いします」
「············」
「···?あの···?」
「はぁ~~~!礼儀正しいなぁ~!キミたちの専属になれてよかったよ~!」
「···え?どういうことです?」
「どういうことも何も、Sランクは揃いも揃ってワガママで勝手し放題のじゃじゃ馬連中なんだよ!ケンカして辞めてしまった同僚もいたから、今回は貧乏くじひかされた···、って思ってたけど!大当たりだった~~!!···あっ!?今言ったことは他のSランクには言っちゃダメだよ!?」
···まだ、Sランクの人たちって会ったことないけど、とんでもない人たちの中にボクたちは入っちゃったんだなぁ~。ちょっと顔合わせするのが怖くなってきたんですけど?
「わかりました。お披露目会をするって話ですけど···、どこでやるんですか?」
「ここだよ。時間とかは指定してないんだけど、新しいSランクが誕生したって話は昨日のうちにレクトの国中にお知らせしてあるから、外にはたくさん人が来てるよ~!」
「えっ!?そんなにたくさんいるんですか!?」
「もち!そりゃ、人類の救世主が新たに誕生したんだんだから、みんな見たいだろうさ!さあ、こっちだ。3階のテラスに出てあいさつをちょこっとするだけで終わるからね~!」
「え!?ちょ、ちょっと!?引っ張らないでくださいよーー!?」
「お、おい!?ライを連れて行くなーー!」
無理やりボクを引っ張っていくレートさんだった···。そもそもボクは5歳だから小さいので、レートさんと歩幅がまったく違う。だから、レートさんが速足だとボクは走らないとこけてしまうんだ···。レートさんって結構強引なんだなぁ~。
そしてテラスに出た。外には大勢の人がボクたちが出てきたのに気づいて大歓声をあげてくれたよ!
「皆さん!お待たせいたしました!本日、ここに新たなSランク冒険者が誕生しました!『雷帝』のライくんと『雷帝竜』テオくんです!それでは2人のあいさつと意気込みを聞きましょう!どーぞー!!」
レートさんは手に棒状のなにかを持って話し出すと、テラスの両端あたりにあった箱から大音量の声になってあたりに響き渡った!そして、レートさんが言い終わると、棒状のなにかをボクに持たせた!···これを持って話せばいいの?何を話したらいいのかなぁ~?
そうだ!グランドの町でボクの話をしたなぁ~。あの話を短くして話せばいいか!
「皆さん、おはようございます。ボクはライ。こっちはテオです。ここから北西にあったマイカ村というところから来ました。ボクの村は···、魔獣に目の前で滅ぼされてしまいました···。ボクだけ生き残ったんです···。とてもつらい思いをしました···。でも、こっちのテオと一緒に旅をして···、いろんな人たちに出会えました。ボクたちが皆さんの役に立てるかはわかりません。でも、これ以上ボクと同じ思いをする人を···、ボクは見たくありません!そのために頑張ろうって思います。これからよろしくお願いします!」
「············」
···あれ?何かおかしかったかな?もしかして、魔獣に村を滅ぼされた話がまずかった···?そう思ってたら···!?
パチパチパチパチ!!
「がんばれーー!!」
「みんな、キミたちの味方だからねーー!!」
「とてもつらかったのに···!ムリするなよーー!」
大きな拍手とともに励ましの言葉がたくさん飛んできた!···よかった。うまいこといったみたいだ。
「それではSランクお披露目会を終了しま~す!これから2人の活躍を見守ってあげてくださいね~!···お疲れ様!うぅ···、そんなつらいことがあったんだね···」
「ちょっとレートさん!?泣かないでくださいよ!?」
「ライくん!?無茶言わないでよ!?あんな話を聞かされて『泣くな!』だなんて···。うぅ~···」
「···テオ?どうしよう?」
「どうもできねえよ···。オレ、腹減ったんだけどなぁ~。早く朝飯食いたいぜ···」
結局泣き止むまで5分かかりました。そのあと、ボクたちはギルドの食堂で朝食をいただいたんだ。なんと半額だった!
当然テオは特盛にしてもらっていたよ。朝ごはん待たされていたからね···。
レートさんも一緒に朝食を食べた。そして食べ終わってから今後の話が出たんだ。
「お披露目会はこれまでのSランク以上に盛り上がったので大成功だったね!さて、まずは冒険者証を渡しておくね。はい!」
「ありがとうございます」
当然ながら冒険者証には『S』の表記があったよ。ただ···、
「あの~、レートさん?」
「ん?どうしたんだい?記載内容に誤りがあったかい?」
「いえ···、ボクの名前の前に···」
「あ~、それね!二つ名があるんだから、それも当然表記されるよ!」
そう!ボクの名前の欄に『雷帝 ライ』って書いてあったんだ!ちなみにテオには『雷帝竜 テオ』と記載されていた···。は、恥ずかし~~!!
「キミたちは人類の希望なんだから、堂々と書いておかないとね~。覚えやすくもなるよ!」
「は、ははは···。そ、そうですね···」
···うん。こうなったら開き直るしかない!今後は雷帝として活動していかなくちゃね。そして、ここからレートさんが手を組んだ上にアゴを載せて、マジメな顔をして言ってきた。
「さて、ここからが本題だ。さっそくで悪いんだけど、ライくんたちに対応してほしいことがあるんだ」
「···え?それは何ですか?いきなりスタンピードを退治しに行くんですか?」
「いや、そんな生やさしいものではないんだよ···」
「···え?スタンピードより厄介なんですか!?」
「···ああ。正直、いきなりこの任務はハードすぎると思うんだけど···」
レートさんがものすごく言うのがつらそうな顔をしてるよ···。スタンピードより厄介だなんて···。ボクとテオで対応できるならいいんだけど···。聞くだけ聞いてみよう!
「···わかりました。どんな任務なんですか?」
「それはね···」
「············(ゴクッ!)」
「···ほかのSランクとの顔合わせだよ!!」
「············は?」
ボクとテオは呆気にとられてしまった···。スタンピードより厄介なんですか···?
ライくんのお披露目会で、ライくんはしっかりと決意表明をして、皆さんに温かく迎えてもらえました。
これからライくんとテオくんは主にスタンピード対応で活動することになります。
って、スタンピードは災害級なんですけどね···。しょっちゅう発生しているのでSランクは引っ張りだこなんですよ。そりゃ、単騎で軍隊以上の戦力ですからね。
ただ、お値段はそれなりにしますけどね。そうでないと軍隊持たずに業務委託されちゃ、たまったものではないですからね。
そのあたりはギルド担当がちゃんとやっております。ライくんとテオくん担当のレートさんは仕事ができる人なんです。
そんなレートさんがスタンピードよりも厄介だというほかのSランクとの顔合わせ···。次回予告も兼ねますが、最初は『忍者』のあだ名がつく人です!どんな人なんでしょうね?
それではお楽しみに〜!




