1-2.ライ、生まれた村から外に出る
本日は本格的な投稿初日!ということで一挙6話投稿します!
ここは2話目ですね。ここから読み始めた!という方は1話前からお楽しみください。
賢者の遺産を継承してから1月が経った。
この間、ボクは賢者の遺産の知識を使いこなすべく、いろいろやったんだ。
剣術でしょ?魔法でしょ?それと料理も挑戦してみたんだ!
無限収納カバンには『肉焼きセット』なる魔道具があったんだ。これ、串焼きもできるし、串が太いので上に鍋だって置けるんだ!
なぜか焼いてる間は頭の中で楽しくなるような音楽が鳴ってるんだけどね。鳴り終わってちょっとしたタイミングで火を止めるととってもおいしいんだ!
レシピも知識にあったし、スマホの中にもあったよ。アキさんは料理も得意だったみたいだね〜。ありがたく使わせてもらってます。
「さて···、テオ?だいぶ遺産について使いこなせるようになったと思うんだけど、そろそろ村の外に出ようかな?って思うんだ」
「いいぜ〜!オレも浮遊大陸以外知らないからな。どんなところか見てみたいぜ!」
「浮遊大陸?」
「空を飛び回ってる大陸だ。神様が創ったらしいけどな」
「···あっ!?遺産の知識にもあったね!でも行く手段がないなぁ〜」
「オレでも帰るのはムリだな〜。まぁ、親や友達はとっくの昔に死んじゃってるだろうから別にいいけどな。どこへでもライと一緒に行くぜ!」
「よし!じゃあ、行く前に木を切っておくよ。家を建てるには乾いた木じゃないといけないらしいから、出かけてる間に乾かせば帰ってきたら家建てれるしね!」
「あ〜···、それな?ライはここに帰ってくる気なんだな?」
「え?そうだよ?ここはボクの生まれた村だもん」
「よそで住むって気はないのか?」
「今はないかな···。どうなるか分かんないけどね。じゃあ、今日は木を切るぞ〜!」
村以外で住むなんて発想はなかったなぁ〜。でも、ボクはこの先どうなるんだろうね?
魔力剣と魔法で木を切っていった。切った木は雨が当たらない岩場のところへ持っていって、下に木を入れて寝かせておいたよ。これならいいんじゃないかな?
これで出発準備はできた。明日は村から初めて外に出るよ!
翌日、ボクは生まれた村から初めて別の町へテオと一緒に行くことにした。
「よし!じゃあ、竜モードになるぞ〜!」
「おぉ〜!初めて見るよ〜!」
「それっ!!どうだ〜?」
テオは竜になったよ!ボクの倍ぐらいの大きさでモフモフだ!白銀の大きな翼がとてもきれいだよ〜!
「テオ!かっこいいね!」
「そうか!そう言ってもらえると嬉しいな!じゃあ、翼の付け根の前に乗ってくれ!」
「うん!よいしょっと!」
「飛んでる間は落っこちないように魔法がかかってるから心配ないぞ。で、どっちに行くんだ?」
「ここから道があるでしょ?その道の先に村長さんが取引してる町があるんだよ」
「ライは行ったことないんだよな?」
「うん。村長さん以外は村から出ちゃダメだったからね」
「そうか。じゃあ、行くぞ〜!」
「よろしく、テオ!」
テオは翼を軽くはためかせて飛び上がった!
「うわぁ〜!すごいすごい!」
どんどん地上から離れていくよ!みんなのお墓も小さく見えてしまうね。···行ってきます!
飛び上がって30分ぐらいかな?前方に建物が小さいけど見えてきたよ。すごいなぁ〜!村長さんは3時間以上かかるって言ってたけど、テオが飛んだらあっという間に着いちゃったね!
「テオ!目の前の町の手前で降りてくれるかな?」
「いいぜ〜!あそこがいいかな?」
そう言ってテオは町の手前にある川岸にゆっくりと着陸したよ。
ボクが降りたらテオは人型に戻った。
「テオ!景色がきれいだったよ!ボク、こんな景色って見たことなかった!」
「そりゃそうだろ!飛べるのはドラゴン族だけだからな。喜んでもらえて嬉しいぜ!」
「じゃあ、町に行ってみよう。どんなところなんだろうなぁ〜?」
川岸の土手を上がって道に出た。ここらへんの道はそこそこ広くてしっかりと踏み固められてた。ボクの村へは途中から細い道に分かれた先にあったんだよね。
ボクたちは町の入口にある門のところへやって来た。簡単な木の柵で町を囲っているようで、並んでる人は少なかったね。
「次の人〜!···えっ!?子どもだけ···?」
「は、はい。ボクはライと言います。こっちはテオです」
「···キミたちはどこから来たんだい?親はどうしたの?」
「村が···、魔獣たちで全滅してしまって···」
「ま、まさか!?そういえばここ最近マイカの村長が来ないと聞いていたが···。キミたちは村の子なのかい!?」
「はい···」
「···わかった。ちょっと話が聞きたいから、そこのイスに座って待っててくれるかな?」
どうやら、町では村長さんが来ないことを心配していたようだ。門でボクに聞いてきた兵士さんが慌てて中に入っていったんだ。
この時、ボクは初めて村の名前を知ったんだ。マイカって名前だったんだ···。
しばらくすると、別の人が出てきたよ。
「待たせたね。よく無事ここまで来れたもんだよ。ちょっと話を聞きたいので、こっちに来てもらえるかな?」
ボクたちは案内の人と一緒に門の中に入り、すぐそばにあった詰所に入って誰もいない部屋に案内されたよ。
「さて···。私はここの警備を任されているスナという。まずはキミたちの名前を聞かせてもらえるかな?」
「はい。ボクはライと言います」
「オレはテオだぜ!」
「ライくんとテオくんだね。テオくんの背中には翼があるが···、初めて見る獣人だなぁ~」
「そりゃそうだろ?オレはドラゴン族だしな!」
「ドラゴン族だって!?あの伝説の!?」
「あの伝説って何のこと?」
「かつて地上で魔獣を専門に狩って人々に平和をもたらしたといわれてるんだが?知らないのかい?」
「オレはライと出会うまで数百年寝てたからなぁ~。起きたのも1か月ちょっとだぜ?」
「そうなのか···。マイカの近くにドラゴン族がいたのもビックリだよ···。ライくんは村の子だったんだね?」
「はい···」
「問題なければ村がどうなったのか?を教えてくれないかな?」
「···1か月ほど前の事です。急に空が暗くなって、大雨が降った直後にすごい数の魔獣が村にやってきたんです」
「急に空が暗くなった···。今初めて聞いたけどライ、それは『黒魔力嵐』だぞ」
「『黒魔力嵐』?」
「黒魔力ってのは魔獣を生み出す汚れた魔力なんだ。特定の場所で湧き出してるし、ある一定以上の魔力消費をする魔法を放つとこれが発生してしまうんだ。そして、これが溜まりに溜まって流れ出すと魔獣を引き寄せてしまうんだ。それが黒魔力嵐だ」
「そうなんだ···」
「なるほど。そういった現象も初めて聞いたが、ライくんの話からすると本当のようだね。魔獣たちは村を出た後にどっちに行ったかわかるかい?」
「わかりません···。ママがボクを見つからないように床下の倉庫に押し込めてしまったので···」
「···悪いことを聞いてしまったね。すまなかった」
「いえ···。ボクが脱出したら、村はすべて壊れてしまってました···」
「···よく今まで生きてこれたね?1か月もどうして過ごしたんだい?」
「それは···。(賢者の遺産の話はしない方がいいかな?)食べれそうなものを探してました。壊れた村の家の倉庫とか···」
「つらい目にあったね。この事は領主様にも報告しておくよ。そうそう、キミたちはこれからどうするんだい?この町に避難してここに住むというのもいいけど?」
「テオと一緒にいろんなところを見て回ろうと思ってます」
「それは危ないよ!?武器もお金もないだろ!?」
「テオがいますから···。お金は···、どうしよう?」
「とりあえず、今日はこの町の宿を手配しておこう。そこでゆっくり休みなさい。身分証とかも持ってないんだろ?」
「はい···」
「なら、ここで手配しておくよ。テオくんもね。それでいいかな?」
「おう!頼んだぜ~!」
というわけで、今日は町の宿で1泊することになりました。宿って初めてなんだけど、どんなところなのかな?
今のエーレタニアではスタンピードは珍しくない現象になってしまっています。それだけ魔獣で溢れかえってしまってるんですね。そのため、どの町でも『いつ襲われるか?』を常に考えているので見張りや警備は厳重です。逃げるしか手がないですからね。
そしてライくんはまだこの世界の常識を知りません。村の名前すら知らされてないほど閉鎖的な村に住んでいたために知る状況ではなかったのです。これにも理由がこの後明かされます。
さて次回予告ですが、ライくんは初めて宿で泊まります。そこで驚くべきことが判明しますよ~!
翌日は町中を見物します。お店なんて見たことないから興味津々ですよ~!
次の投稿は12時過ぎあたりを予定しております。それではお楽しみに~!




