4-2.えっ!?ボクのあだ名!?
「さて、さっきは済まなかったね。それだけライくんが継承した賢者の遺産はとんでもないのさ。それを自覚してほしかった」
「はぁ···」
「さて、続きだ。Sランク持ちは現在4人いる。SSSは私だが、大した力はもうない。名誉だけでつけたのさ。こうしておかないとガバナンスが効かないのでね」
「···は?ガバナンス?」
「それって···、『組織を長期的に維持するための方法』ってところですか?遺産の知識がそう言ってますけど?」
「その通り。さすがは遺産の知識だね。ちなみにSSもそうだよ。アノドさんが町を作る!って言い出したから、仕事がしやすくなるようにSSにしたんだ。実力で言えばライくんの方が上だけどね。冒険者ギルドとしても腕利きの職員4人派遣して、サポートはさせてもらってるよ」
「なるほど···」
「その際に私はアノドさんに『救世』というあだ名をプレゼントしたんだ。その方がカッコいいし、アノドさんの信用度も高まるのでね。というわけで、ライくんにもつけるけど、何かいいのはあるかい?」
「···ふぇっ!?あ、あだ名ですか!?」
「そう。なければ私がつけるけど?」
「ど、ど、どうしよう!?テオ!?何かある!?」
「なんでオレに聞くんだよ!?案なんてあるわけないだろ!?」
「そんな!?それって今すぐ決めないとダメなんですか!?」
「そうだね。明日の朝イチで『新しいSランク持ちが誕生した!』って大々的に知らせるからね。どうだい?」
「ふえぇ〜···。なんか恥ずかしいんですけど···」
「最初はそう感じるかもしれないけど、すぐに慣れるさ。今のSランクは全員名乗ってるんだし」
「ちなみに他のSランクの人ってどういうあだ名なんですか?」
「『剣聖』、『忍者』、『魔帝』、『武王』だね。みんな自分が得意なものを入れてるね。ライくんも得意なものを入れるといいんじゃないかな?」
剣聖ってのは剣術がすごいんだろう。おそらく『理に至ってる』って事なんだろうね。
忍者···、『忍ぶ者』って事って遺産の知識にあるね。アキさんの奥さんや娘さん一家が得意としていたみたいだ。
魔帝か···。魔法が得意なのかな?魔法を使う人の中での皇帝って意味?
武王は···、かなり武闘派な感じだね。テオのように格闘技が得意なのかな?
じゃあ、ボクは?どれもそこまで極めてるわけじゃない。どちらかと言えば知識なんだけど···、子どもなのに『賢者』って名乗るのもなぁ〜。変な目で見られそうだ。
剣術も確かにできるけど···、さすがに剣聖がいるのに『剣』の字を使ったらマズそうだ。機嫌を損ねちゃうよね?
じゃあ魔法?でも『魔帝』がいるしなぁ〜。
ボクが一番得意なのは雷魔法だ。アキさんが最も得意としていたしね。
···よし!これならいいかな?
「どうやら決まったようだね?顔に出てるよ?」
「···えっ!?そ、そうですか!?」
「ああ。深く考えて、いきなりニヤッとしたらね。じゃあ、聞かせてくれるかな?」
「···はい。『雷帝』で!」
「···ライ?自分の名前を入れたのか?」
「···え?あっ!?そうなるなぁ〜。雷魔法が得意だから、これにしたんだけど···。自分の名前も入っちゃったね」
「いいんじゃねえか?カッコいいと思うぜ!」
「そう?えへへ···」
「うん。それじゃあライくんは明日からSランク冒険者『雷帝』だ。テオくんは雷帝とコンビの竜だから『雷帝竜』って名乗ればいいよ。よろしくね、雷帝」
「オレにもつけんのかよ···」
「は、恥ずかしい···」
とっさに思いついたあだ名だったんだよ。自分の名前まで入ってたって、テオに言われて初めて気づいたしなぁ〜。
まぁいいや!悪くないと思うよ?ほかの人がどう言うかはわかんないけどね。
「さて、あと1つSランクについて説明しておくよ。依頼は請ける必要はないからね。Sランク専用の依頼をギルドから直接させてもらう形になる。こちらも請けるかは自由だ。あと、定期的に銀行口座に活動資金が振り込まれるから」
「···え?銀行口座?」
「そう。簡単に言えばお金を預かっておく場所だ。貸したりもするがね。大金なんて無限収納シリーズないと持ち運び自体が大変だ。だから、銀行というものがあるんだ。通帳という本に金額が記載されて、窓口が開いてる間だったらお金を預けたり引き出したりできる。今後大金が入るだろうから、こちらで手配しておくよ。定期的に引き出して無限収納シリーズに入れておけばいいさ」
「はい···。でも、依頼は請けようと思えば請けれるんですか?」
「もちろん。ただ···、確実に指名依頼が殺到するね。そうなると、ほかの冒険者の仕事を奪いかねない。そこは注意しなさい」
「わかりました。そういう経験あるので···」
「そうか。なら話は早いな。宿はSランク専用のフロアを用意している。無料だから好きにしても構わないからね」
「は、はい···。もうすでに行っちゃいました···」
ということは、301から304はそれぞれSランクの人の部屋なんだ···。ちょっと緊張するなぁ〜!
「私からは以上だ。何か質問はあるかな?」
「じゃあひとつだけ。ボイドって悪神をご存じですか?」
「あ~、あの女神か···。知ってるよ」
「どういった神なんですか?スタンピードを各地で起こしているようですけど?」
「ボイドは私のように、かつてこのエーレタニアに侵攻してきた世界の神の一人だ。一度は世界に戻ったのだが、どうやったのか災厄戦争の前に戻ってきてね。そして···、災厄戦争のきっかけを作った張本人だよ」
「なっ!?」
「なんだって!?」
とんでもない話を聞いてしまった!この世界がこんなにめちゃくちゃになっちゃったのは···、あの神のせいだったんだ!
「当時の私はあの時点で力がなかったのでね。対抗することはできなかった···。力がないという点はヤツも一緒だ。だが、ヤツは魔獣を知り尽くしていて、誰にも制御できない黒魔力を制御できるんだ。ヤツの目的は『遊び』だ。人々を騙し、魔獣をけしかけ、この世界が滅んでいくのを見て楽しんでるのさ」
「ひどい···」
「なんて野郎だ!」
「それに対抗するための組織がこの冒険者ギルドだ。キミたちにもいろいろと協力をお願いすると思うよ。その時はよろしくお願いするよ」
「···わかりました」
とりあえずエマさんのお話はこれで終わった。とんでもない情報までわかっちゃったよ···。
ボクたちの冒険者証は帰る前に回収されて、明日の朝のボクのお披露目会でSランクの冒険者証が渡されるんだって。
思ってた以上に大ごとになっちゃった···。あんまり目立ちたくはないんだけどさ···。
その後はギルドにあった食堂で食事をした。なかなか量が多い···。テオは大喜びで食べてたけど、ボクは小さいからこんな量は食べ切れないよ〜!
「おっ!?ライ、厳しいか?」
「うん···。この量はさすがに···」
「じゃあ、オレがいただくぜ!」
テオが全部食べてくれました。明日は別の店を探そうかなぁ〜。
そうしてボクたちは部屋に戻ってきた。あまりに豪華なので落ち着けない···。
たいていの小説では冒険者にあだ名がついていますね。というわけで本作でもあだ名をつけてみました。
ほかの4人のSランクのあだ名で登場する人物がある程度予想できるかと思いますよ。もうちょっとしたら登場しますので、あとちょっとお待ちくださいね。
そして悪神ボイドの正体と目的も判明しました。とんでもないヤツでしたね。でも、前作を読んでおられる方でしたら、こういった神もいるだろうなぁ~、って思われるかもしれませんね。こういう連中が初期のエーレタニアはしょっちゅう来襲していたんですよ。エーレタニアの創成神だったエレくんはよく頑張って防衛していたんですよ。本人はかなりいい加減な性格でしたけどね(笑)。
さて次回予告ですが、翌朝にライくんとテオくんの担当となるギルド職員さんがやってきてあいさつをします。その後、朝食前にレクトの国のみなさんに新たなSランク冒険者誕生のお披露目会が開かれますよ~!どんな決意を述べるんでしょうか?
そして、Sランクとなったライくんとテオくんに初めての試練が!いったいどんな試練なのでしょうか?
それではお楽しみに~!




