3-11.魔獣同化能力
「最初はまずそうな住民どもをと考えていたが···。貴様らのほうが美味だろう!おいしくいただくぞ!!」
なんだこいつ!?人間が人を食べるだって!?冗談じゃないぞ!!こんなヤツにおいしくいただかれてたまるか!!
町を探していたら、なんと魔獣に襲われて火事になっている町だったんだ!町中に入り込んだ魔獣を次々に退治したボクたちの前に、怪しい男が現れてボクたちを食べるなんて言い出した!
「ストーンバレッド!!」
テオが躊躇なくストーンバレッドの弾丸を男に撃ち込んだ!これなら!?と思ったら、なんと多少キズがついただけだった!
「ほう?なかなか高威力の魔法じゃないか。だが、その程度ではこのオレは倒せんぞ!」
「なんだと!?ライ!こいつ、人間じゃねえぞ!!」
「なんだって!?」
「人間の姿をしているだけのバケモノだ!」
「違うな!オレは正真正銘の人間だよ。まぁ、ちょっと普通ではないがな!もう終わりか?なら次はオレだ!!」
男が突っ込んできた!すごく速い!
「なっ!?ぐあっ!!」
「テオ!?」
男はテオを思いっきりぶん殴った!普段ならテオは竜気で攻撃をガードできているはずなのに、思いっきり吹っ飛ばされたんだ!そして次はボクに来た!!
「死ねやぁ!!」
「ぐっ!うわぁっ!!」
ボクにはガードできる防具がない!だから魔力剣で向かってきた蹴りに向かって振り下ろした!足を切り落とすつもりでやった!でも切ることができずにボクは吹っ飛ばされてしまったんだ!
「ふん、神々の遺産持ちと聞いて、そこそこやれるのかと思ったが興覚めだ···。では、まずはガキからいただくとしようか!このガキとドラゴン族のチビを食えば!さらに長く生きれるぞ!」
「う、うぅ···」
まさか···、レックスデラックスって凶悪な魔獣でも切り裂いた魔力剣が効かないなんて···。あぁ···、そうか···。これが···、この考え方が『力に溺れる』って事だったんだ···。アノドさんが言ってたのは···、そういうことだったんだなぁ~。
どうする···?このままじゃ···、やられちゃう···。ここまで···、なのか···?
その時だった。
『ライくん?立ち上がれるかい?』
「···え?」
『まだだ。まだ終わってない!遺産の力はこんなものじゃないよ。さあ!立ち上がって!キミに···。『賢者の遺産』の次の段階の力が真に解放される。その力は強大だ。使いどころが非常に難しいんだ。これまで封印していたのは、力に振り回される危険があったからなんだ。でも、力に溺れる状態を認知した。もう慢心しないと心に決めた今!この力を、『トランス』を使いこなせると思うよ。さあ、ボクたちと一緒に···、羽ばたこう!』
アキさん?この力は···?体の奥底から力があふれ出てくるようなこの気分は!?
「···ん?まだ立ち上がれるのか?ではトドメを···!?な、なんだ!?目が金色に!?」
「ラ、ライ!?それは···!?」
「···させないよ。ここでお前を倒しておかないと···、失われる命が多くなってしまう!!」
「···そうか!?貴様、『トランス』したな!?たかが人間ごときがなぜできる!?そうはさせんぞ!!」
トランス···?そういえば遺産の知識もそう言ってたね。でも、そんなのはどうでもいいよ。コイツは敵だ!いますぐに···、倒す!
「秘技、斬月・桜花」
ボクはカウンター体制に入った!相手が強いほど効果が上がるこの技、今が使いどころだ!
「死ねぇーーー!!」
「ここだ!だぁああーーーー!!」
「なに!?ぐぁああーーー!!」
男の攻撃が当たる直前に横一文字に一閃した!そして返す剣で袈裟斬りしてやった!!見事にカウンター技である斬月が決まったよ!
しかし!致命傷になってるはずなのに、普通に立ち上がってきたよ!?
「ぐぅっ!やはり神々の遺産持ちは伊達ではなかったという事か!ならば!こちらも切り札を使わせてもらうぞ!ここでやられるわけにはいかんのでな!」
「切り札!?」
「なんだそれは!?」
「ふっふっふ!すぐにわかるさ!『同化』!!」
男が何かを叫んだ!すると、男の体が服を破ってどんどん大きくなっていく!?
「はっはっは!ングゥッ!?グゥゥッ!!グォオオオオーーーー!!」
どうなってるんだ!?そしてオーガみたいな魔獣の格好になった!?その姿を見たテオが思いっきり叫んだ!
「テメェ!『魔獣同化能力』持ちかよ!まだこの世界で生きてやがったのか!!」
『グフフフ!イキテヤガッタ?チガウナ!オレハイキルタメ!マジュウニオビエルノデハナク、マジュウトトモニイキルタメニ、コノカラダヲカイゾウシテモラッタノダ!!モハヤヨワイヒトノジダイハオワリ、マジュウガシハイシャトナルジダイナノダヨ!!』
「なんだって!?」
「ハハハハ!ガキニハコノスウコウナカンガエガリカイデキマイ!マジュウノチカラノスバラシサヲ、アジワウガイイ!!」
···まさに悪魔の発想だ。魔獣に倒される側に立つのではなくて魔獣として生きると···。そんな考えを持ってる人がいるなんて···。コイツはもはや人じゃない!ここで倒さないといけない!
「テオ!いける!?」
「ああ!さっきは竜気を貫通する威力だとは思ってなかったから油断した。もう油断しねえぜ!ライはその金色の目、大丈夫なのか!?」
「うん!アキさんから教えてもらった。これがあればなんとかできると思うよ!」
「よし!周囲の魔獣はオレが倒しておく!アイツはライに任せてもいいんだな!」
「うん!やってみせるよ!」
···今ならあれができるかもしれない。目の前にはもはや人ではなくなった魔獣がいる。しかも、ただの魔獣じゃない!ものすごく強化された魔獣だ!
ボクも全力全開でやらないといけない。ボクの中にある『賢者の遺産』の力を信じよう!
「キサマラヲクラッテヤル!オレヲイキナガラエルタメニ!!クタバレェーーー!!」
「そうはさせないよ!」
巨体なのにスピードが速い!あっという間にボクに近づいてきた!けれども···、その動きは途中からいきなり遅く感じた。アキさんの知識では『スローモーション』っていうらしいけど、どうも今のボクにはそうやって見えている!
左こぶしを握り締めて前に繰り出そうとしている?ということはパンチを食らわせるつもりのようだ。予想通り、左ストレートパンチを繰り出してきた。かなりゆっくりに見えるから、慌てずに右足を引いて体をひねって交わす!その時に右手に持っていた魔力剣をヤツの軸足である左足に当ててやった!
今の魔力剣は刀身がきれいな蒼色に輝いている!切れ味は良さそうだね!そして···、スパッ!と切り裂いてしまった!!
「ギィャアアアーーー!!オレノアシガーー!?ナゼダーー!?」
「···これで終わりにしてあげるよ。皆伝秘技!万仭剣!!」
皆伝秘技は全ての技を極めて『理に至った者』が使うことでその威力を発揮する!ボクはまだそこまでできていない···。
けれども!ここが使い所だ!そう思って使った瞬間!遺産の知識がボクをサポートしてくれた!
これは···、アキさんの息子さんの知識···?目の前がまたスローモーションになった。さっきよりもさらにゆっくりになっている。
そして···、アキさんの息子さんが、ボクの両手にそっと触れたような気がした。そして···、息子さんの手が『このように剣を振るうんだよ』というお手本を示すように···、ゆっくりと剣を振るって教えてくれた···。
全ての技を順に繰り出していく···。螺旋斬、疾風迅雷、大噴火斬り、紅葉、斬月、弦月斬、そして夢想裂波···。
流れるような···、まるで大きな川の流れのように···、緩やかに、そして力強く剣を振るった!
「ギャアァアアーーー!」
ボクは後ろを振り返った。そこには無数に切り刻まれたヤツがいた。ボクの皆伝秘技は成功したようだった。
今回のお話は作者がやってみたい実験の1つなんです。
それは、『人が魔獣側に立った場合、どうなるのか?』です。
このエーレタニアでは昔から人と魔獣はお互いに捕食者として対立しており、ドラゴン族や神狼族が誕生するまで、人は魔獣の猛攻にあえいでいました。
そんな中、ドラゴン族や神狼族の活躍もあって人側が盛り返したんですね。ここまでが前作です。
しかし、災厄戦争以降、この2つの種族が浮遊大陸に避難してしまう事態を人が招いてしまったために魔獣の猛攻が始まってしまったんです。
すると、『助かりたい!』と考えて人を裏切る行為に出てしまう人がどうしても出てしまいます。
そこで誕生した狂気が『魔獣同化能力者』です。自身が人を捨てて魔獣となって生きていくという選択をしてしまった人たちが現れてしまったんです。詳しくは次回で説明しますね。
ここからの物語は前作までの『人対魔獣』の構図のほかに『魔獣同化能力者』まで加わって、魔獣同化能力者を滅ぼす事が話の主軸になってきます。
さて次回予告ですが、テオくんは魔獣同化能力者の事を知っていました。そのため、ライくんがどういったものなのか?をテオくんに聞きます。すると、驚愕の事実が判明してしまいます。どういった内容なのでしょうか?
それではお楽しみに~!




