3-9.本当にこっちであってるのか?
おはよう!昨日は温泉が湧き出ているところでキャンプをしたんだよ。
温泉があると知ったとたんに遺産の知識、アキさんがボクの頭の中で猛烈な勢いでしゃべりだした時はびっくりしたよ···。でも、とてもいいものを教えてもらったよ!
さっそく今日の朝も温泉に入った。湯加減調整に時間がかかったけど、『朝は眠気覚ましに少し熱めがいい』ってアキさんがまたやかましくしゃべりだしたのでそうさせてもらった。確かに眠気は覚めるね!
さて、軽く朝食を済ませたら出発だ!今日も東へ向けてテオに飛んでもらうよ!
「テオ!今日もよろしくね!」
「おう!確か今日中には着けるって話だったな!」
「そうだね~!どんなところなんだろうね~」
そうしてテオは飛び立った!
飛び立って3時間。そろそろお昼なので、適当な場所に着陸してから食事にしたんだ。昼食を調理していると、ここでテオが不穏なことを言い出した!
「なあ、ライ?」
「なに?テオ?」
「···本当にこっちであってるのか?」
「···もしかして、また?」
「なんか怪しいぞ?そこそこ高いところを飛んでるから、かなり遠くまで見渡せるけど、それらしい町や国は見当たらないぞ?」
「···まずいなぁ~。今まで飛んでて村や町って見かけたけど···」
「全部廃墟だったもんな。これは道を尋ねようにも···」
「あ~、また迷子になっちゃったかぁ~」
···あのね?ボクたちだって、好きで迷ってるんじゃないよ!?
地図アプリはあるけども、1000年前の地図を見ても今と全然違うんだよ!災厄戦争のせいで地形が大きく変わってるんだよ!
道を聞こうにも町や村はことごとく滅ぼされていて、廃墟だから聞くことすらできないんだよ···。
だからといって歩いてってのもなぁ~。戦争前の人の行き来が多かった時代は道が整備されて、山を貫くトンネルってものや『鉄道』なんていう鉄の道を走る機械の馬車とかもあったらしいんだよ。
でも、魔獣だらけになってしまって道は荒れに荒れて、馬車とかも基本的には通れるような道がほとんどないんだ。歩いて移動といっても魔獣に襲われるのが確実だから、行き来できる人自体が高ランク冒険者とかしかいないんだよね。だから道なんてほとんどないのと同じなんだよ。
「う~ん···。とりあえず飛ぶだけ飛んで、町を見かけたらそこで道を聞こうか?」
「それしかないよなぁ~」
まぁ、慌てて行かないといけない場所じゃないしね。寄り道してもいいんじゃない?グランドの町のように、いい人たちが住んでる町もあるだろうからね。
そして午後も再びテオに東へ飛んでもらった。すると、目の前には木が生えてなくて砂だらけの場所が見えてきたんだ。
「ライ?あれって砂漠だな」
「砂漠?」
「木とか生えてないし、川もないから生き物が住めない場所なんだよ」
「へぇ~!初めて見たよ。でも、魔獣レーダーにはいっぱい反応あるよ?」
「魔獣は特別だ。あいつら、どうやって生きてるのかもさっぱりわかってないからなぁ~。黒魔力があれば生きれるんじゃないか?」
「そうなんだ···。とりあえず、ここを越える?」
「もちろんだ!こんなところに町なんてあるわけ···、あった!!」
「え!?どこどこ!?」
「ちょっと左側だ!少し木もあるようだな···。オアシスってやつかな?」
「オアシス?」
「砂漠のど真ん中で湧き水が溜まってる場所のことだ。建物っぽいのが見えたから、そこに誰かいるかもな!」
「じゃあ、とりあえず行ってみようか!」
とりあえず見えたオアシスってところへ行ったんだけど···。ここも廃墟でした···。
降りる必要もなかったんだよ。元は人々がこの砂漠を旅して休める場所だったんだろうけど···。今は魔獣たちの憩いの場になってしまっていた。
「···テオ?もう、人が住んでる場所ってほとんどないのかな?」
「なんとも言えんなぁ~。住んでる場所が相当限られてるのは間違いないんだろうけどな」
「昔はいろんなところに住んでたんだよね?」
「少なくとも災厄戦争の前まではな。あの戦争で多くの人が犠牲になり、さらにはオレらドラゴン族が地上を去ったから、スタンピードが頻発したせいで生き残った人たちもかなり減ってしまったんだろうな」
「············」
「だからといって、あきらめてない人だっているってのはライも知ってるだろ?アノドのじーちゃんもそうだったし、リークさんだってそうだ。急に人はいなくなってしまったから、そう簡単に増えることはないだろうけど、まだなんとかなるかもしれないだろ?」
「···うん。そうだね」
「だからといって、ライがアレコレやらないといけないってわけじゃないからな!『賢者の遺産』は、ライが幸せに生きるためにあるんだからな!そこんとこ、忘れるなよ!?」
「そうだね。いつもありがとう。それじゃあ、このまま日が暮れるまで東へ飛んでみようか?どこかに町はあると思うしね」
「よし!もしくは夜に飛ぶってのもありだけどな!」
「えっ!?真っ暗で危なくない?」
「天気が良かったら大丈夫だ。夜になれば町に明かりぐらいついてるだろ?人がいるってすぐにわかるぜ!」
「なるほどね···。じゃあそれでいこう!テオ、ムリしないでね?」
「わかってるって!」
そうして砂漠を越えてさらに東へ飛んだ。エールさんは『砂漠を越える』って言ってなかったから、こっちじゃないんだろうなぁ~。まぁいいけどさ!
時間はもう夕方。西の空が茜色に染まり、真正面の東の空はどんどん青色が深くなってきた。
「きれいだ···」
「どうした?ライ?」
「空が···、西の空の夕焼け、そして東の空がどんどん濃い青に染まっていく···。とてもきれいだなぁ~」
「あ~、確か地上はほこりとかが多いから、ここまできれいに見えにくいんだよなぁ~。浮遊大陸だったら雲海に沈む夕日とかがもっときれいに見えるぞ!」
「そうなんだね?浮遊大陸にも···、行ってみたいんだけど···」
「ん?どうした?」
「いや、テオはあんまり行きたくないんでしょ?」
「行きたくないわけじゃないぞ?ただ、知り合いは誰もいないってだけだからな。ただの旅人として行くなら別にいいんだけどな」
「でも、それには高速飛行魔法を習得しないといけないんでしょ?」
「おう。まぁ、もうちょっとでできそうだとは思うんだけどなぁ~」
「ボクも練習に付き合うからさ。行く機会があったら行ってみない?」
「いいぜ!それじゃあ、落ち着いたら練習するぜ!」
そして日が完全に沈んだ。夜の闇が一気に広がり始めたその時だった!
「ライ!右側に明かりが!」
「えっ!?あった!あそこだね!」
「おう!あそこに向かうってことでいいな!?」
「うん!よろしくね!」
やっと人がいる町を見つけた!どういった場所なんだろうなぁ~?
またまた道に迷ったライくんとテオくんでした。
まぁ、歩くのと呼ぶのとでは全然違いますからね。かなりあさっての方向に飛んでしまってます。
ちなみに砂漠のオアシスはFC版ドラクエ2のムーンペタ〜ルブガナ間の途中に本来は実装予定だったオアシスをイメージしました。今度のHD-2D版だとどうなるんでしょうね?
さて次回予告ですが、夜間飛行で見つけた明かりですが、ただの明かりではなくて魔獣に襲撃されて燃えている明かりでした。すぐに救援に向かって討伐を始めますが、ここでライくんはとある攻撃方法を考案して実践してみます。
さらに今回の魔獣襲撃になぜか人が関与してました!何者なのでしょうか?
それではお楽しみに〜。




