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【完結済】継承者ライ、荒廃した世界を生き抜く!  作者: ぷちきゅう
第2章 迷子になった先で···

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2-23.ゲート国の惨状

 本日2話目の投稿です。朝に1話投稿してますので、先にそちらをご覧下さいね。

「おはよう、テオ」


「おう!おはよう、ライ」


「今日は長距離の飛行になるけど、よろしくね!」


「任せろ!いい天気だし、飛ぶには問題ないから大丈夫だぜ!」



 門の修理が完成したので、もうこの町にいる必要もなくなった。当初の予定では今日この町から出発するつもりだったんだけど、どうしても気になっていた事があったので出発を1日延期したんだ。


 気になる事、それはこの町が属していたゲートの国というところだ。リークさんの話によれば、ここ3か月の間、一切連絡が途絶えてしまってるらしいんだ。


 この町からの連絡を担当していたベテラン冒険者さんも戻ってこないから、『何かがあった』と思ってるようだ。ボクもそう思うよ。


 この辺一帯を治めていた『鉄壁』とも呼ばれた強国のゲートが今どうなっているのか?これを知っておかないと、今後の旅で困るだろうと考えた結果、門の修理が終わって魔獣の脅威が薄らいだ今、確認しにいこうと考えたんだ。



 朝食はいつも通りリークさんとアスと一緒にいただいた。



「ライくん。もしゲートの国が無事であれば、この書状を城へ届けてもらえないかな?」


「はい。大丈夫ですよ」


「それとこれを二人に渡しておく。グランドからの伝令者である証明のペンダントだ。これをかけていれば怪しまれずに済むだろう」


「ありがとうございます。預かりますね」


「いや、それはキミたちにあげるよ」


「え···?」


「大した意味はない。この町を救ってくれた事に対するお礼みたいなものだ。それを持っていればほかの町でも怪しまれることはあまりなくなるだろう。旅をする以上、何か後ろ盾というものがあれば危険やトラブルを回避できるというものだ。持っていきなさい」


「わかりました。ありがたくいただきますね」


「ありがとな~!」


「今日は帰ってきたらパーティーを開くから、ちゃんと戻ってきなさい。いいね?」


「はい!それじゃあ、行ってきますね!」


「気を付けてね!ライ!」


「うん!テオ、じゃあ行こうか!」


「おう!」



 ボクたちは門の外に出た。門番さんから『魔獣退治、お疲れさん!』って声をかけられたけど、『ゲートの国にお使い(・・・)です』って言ったら驚いてたね。



 さて、町の外でテオには竜モードになってもらい、ボクたちは飛び立った。飛ぶ方向は北だ。ボクたちがやった街道整備は町の北にあった森の中だけ。森の北側には川が流れており、狭い石造りの橋がかけられている。そこから北は山になっており、山と山の間の谷を進んでいくんだ。


 そのさらに北は草原地帯で、風の通り道らしく木が生えないそうだ。その先に周囲が山に囲まれて中央に大きな湖がある場所にゲートの国はあるとの事だった。



「テオ!山を越えたら草原地帯って言ってたから、これであってるね!」


「そうだな!結構特徴的な地形のところにある国だから、遠くからでもわかりやすいと思うぞ!」


「そろそろ休憩する?もう2時間ぐらい経ってるし」


「そうだな!早めに弁当にしようぜ!」


「もうテオ!食べることしか考えてないでしょ!?」


「そんなことないぞ!飛んでたら早く腹が減るんだからな!」


「いつもと変わんないと思うけど?魔獣レーダーにはこのあたりに反応ないから、ここらへんで降りようか?」


「おう!」



 今回はリークさんが道を詳しく教えてくれたから今のところは迷ってないよ!ボクたちは草原地帯に降り立った。さっそくシートを敷いてお昼にしたんだ。


 今日も領主邸でお弁当を作ってもらった。このお弁当も···、今日が最後だろうなぁ~。



 1時間程度休憩してから、再度飛び立った。すると前方若干左側、つまり北北西方向にリークさんが言っていた地形が見えた!



「テオ!ちょっと左にリークさんが言ってた地形があるよ!」


「周囲が山に囲まれて真ん中に湖があるんだったっけ?確かにあれだな!」


「じゃあテオ!よろしくね!」


「おう!」



 30分後、ボクたちはゲートの国に到着した。しかし···、そこはすでに廃墟となっていた···。



「これは···」


「間違いねえな···。スタンピードの跡だぜ···」



 この国は周囲が山という、天然の壁に囲まれた場所だったんだ。出入りするためには湖から流れ出ている川沿いにある3か所の門からしかできないみたいだね。その門は壁ごと破壊されていた···。


 周囲には戦ったと思われる兵士さんの鎧とかたくさんの魔獣の死体が散乱していた。ここで激しい戦いがあったんだろうと様子からして想像ができたよ。


 テオには低空飛行で飛んでもらい、国の中をぐるっと1周飛んでもらうことにした。その前に休憩でいったん破壊された門に降りてもらい、テオは人型になった。


 そのまま歩いて門に入った。やはり誰もいない···。


 中はほとんどがれきで埋まっており、かろうじて残っていたのは休憩所っぽい部屋で、テーブルの上には食べかけの食事やコップがそのままの状態だった···。まるで時間が止まっているような感覚がしたよ。


 休憩した後、テオにはゆっくりと飛んでもらった。門の内側には川と道にそって家屋があったようだけど、今は何も残っていなかった···。おそらく、スタンピードの侵攻ルート上だったので、踏みつぶされてしまったんだろう···。


 町中に入ると、見るも無残な惨状だった···。原型をとどめている建物がほとんどなかった···。燃えた跡もあって、そこは完全に灰になっていたよ。


 町の至る所に魔獣の死体とともに、ところどころに住民だったと思われる骨状態の人が倒れていた。おそらく、逃げ遅れてしまったんだろう···。多くの魔獣が徘徊しているのも見えた。


 湖の中にお城はあった。これなら容易には攻めることはできないだろうね。しかし···、お城までの長い橋は落ちてしまっていた。


 橋の岸側では多くの人が倒れているのが見えた。みんな、お城に避難している最中にスタンピードに巻き込まれてしまい、間に合わなかったんだろう···。とても見てられない状況だった。


 テオにはお城に向かってもらった。もしかしたら、誰か生き残ってるかもしれない!そう思って向かってもらったんだけど···、中は想像以上に悲惨な状態だったんだ···。


 みんな···、飢えて亡くなっていたんだ···。それもつい最近まで生きていたみたいだった···。橋が落とされ、町中に魔獣が徘徊していたので、船でも岸に近づけなかったんだろう。そして船着き場には船が一隻もなかったよ。


 蓄えていた食料が完全に底を尽きてしまったんだろう···。そして、争った跡やかみつかれて殺されてしまったと思われる人もいた···。そこまで···、そこまで追い詰められて絶望して亡くなってしまったようだ···。



「ひでぇな···。こりゃ、逃げ切っても地獄だったな···」


「···うん」


「確かに戦争だったらここは鉄壁だったんだろうな。それが···、スタンピードだったら逆に兵糧攻めになってしまったってか。皮肉なもんだな···」


「お城の中はもう誰もいなさそうだね···。テオ、もうちょっとこの周りを飛んでくれる?もしかしたら、山に逃げ延びた人もいるかもしれないよ」


「わかった。もうちょっと探してみるか!」



 お城の跡からテオが飛び立った。もう町中は絶望的だったので、山の周囲を飛んでもらったけど、ここにも避難して力尽きた人たちが骨の状態でちらほら倒れていた···。これじゃあ···、逃げることができた人はほとんどいなかったんじゃないだろうか···?



 もう、ボクたちができることはなかった。この国は···、完全に滅んでしまった···。


 誰もいない『本当の意味で全滅』という報告をリークさんにしないといけないと思うと···。

 スタンピードは並大抵の戦力では手も足も出ません。鉄壁と言われても、数の暴力で押しつぶされてしまうんですね。犠牲となった人たちはほとんどが魔獣のエサにされてしまうんです。


 さらには兵糧攻めまで食らってしまいました···。兵糧攻めは長期戦にはなるんですが、時間をかければ確実に勝つことができます。今回は魔獣にその意図はなかったものの、結果的に完全に外との関係を絶たれて食料が尽きてしまって全滅してしまったんです。悲惨な状況にライくんもつらい思いをしてしまいました···。

 ちなみにお城に船がなかったのにはちゃんと理由があります。それはこの後明らかになりますよ。ひどい理由なんですけどね···。


 さて次回予告ですが、ゲートの国の惨状を報告し、そしてグランドの町をから出発しようとします。その前に、ライくんはアスちゃんにあるプレゼントをしますよ。ライくんらしいプレゼントなんですが、いったい何なのでしょうか?


 明日は第2章完結なので朝に本編、夜にネタバレ集を投稿します。ゴールデンウィークの2話投稿は好評で、PV数も良かったです。ご覧いただき、ありがとうございました!


 それではお楽しみに〜!

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