2-20.ボクに絡んだら痛い目見ますよ?
本日も朝と夜に1話ずつ投稿しますよ〜!
鍛冶屋さんで門に用いる鉄板に高周波焼入れの試験を終えた翌日から、ボクたちは毎日鍛冶屋さんに行くことになった。おおよそ4日で全部のパーツの鍛造が終わるそうだ。
それを現地で組み立てて完成というわけだ。とんでもない重量を支えるヒンジ部も今回ひん曲がってしまったので全交換するらしく、大工事になっていた。
このヒンジ部を今日は焼入れを行った。全部で20個、昨日焼入れをやった時間をテオに計ってもらっていたので、ある程度の加減のコツはつかめた。
「ふぅ~。これでいいんじゃないですか?」
「お疲れさま!休憩室でお茶用意してるから、飲んでけ!」
「はい、アトさん。ありがとうございます」
休憩室に行くと、他の職人さんたちも休憩していた。みんな大量に水を飲んでたね。そりゃ、汗かきまくるんだもんね〜。
そこで、職人さんに声をかけられた。
「おう!ちょっと聞きたいんだが、いいか?」
「はい。いいですよ」
「雷魔法で鉄の強度を高めたらしいが、あれってどうやるんだ?」
「雷魔法は雷がまっすぐ進むのが多いですよね?あれを行ったり来たりするようにした状態で鉄に触れるんです。すると、表面に近いほど熱くなるっていう現象なんですよ」
「雷を行ったり来たり···」
「そこがポイントなんです。かなり高速で行き来しないといけないので、難しいですよ?」
「オレは魔法が少しだけ使えるんだ。雷魔法が使えたらあれはできるか?」
「イメージさえきっちりできれば···。テオ、そうだよね?」
「おう!まぁ、そんな簡単にイメージってできないからなぁ〜。なんとなくこんな感じ?ってぐらいからやるとコツをつかめるかもな!」
「なるほどな···。って事はボウズはどこでそんなきっちりしたイメージができたんだ?」
「えっ!?そ、それは···、知り合いにこういったのがあるって教えてもらったぐらいで···」
「へぇ~。そんなあやふやなイメージであれやったのか···。大したもんだな〜。うん、ためになったぜ。ありがとな!」
「いえ、頑張ってくださいね」
さすがに遺産の知識って言うわけにはいかないし、これはアキさんが元いた世界の知識なんだよね···。この世界の知識じゃないからなぁ〜。
さて、今日の仕事はこれで終わりだ。領主邸に戻る前にどこかで食べてから帰ることにしたんだ。
大通りを歩いてると、いいにおいがしていた。食堂には行列ができて、屋台も繁盛していた。ほぼ元の生活に戻ったんじゃないかな?
今日は屋台で買い食いすることにした。テオは屋台巡りが好きみたいなんだよね〜。今も両手に串を持って食べ歩きしてるよ。
そんな時だった。前から感じの悪そうな5人組がボクたちに声をかけてきたんだ。
「おい!そこのガキども!」
「え···?ボクたちですか?」
「ちょっとツラ貸せや」
「···え?どういう意味です?」
「こっち来いって意味だ!これだからガキは···」
「ボクたちはあなたたちに用はないんですけど?」
「いいから来いっつってんだろうがよ!」
5人のうち、1人がボクに襲いかかってきた!ちょっとびっくりだけど、これでお返ししておくか!
ボクにつかみかかりそうになったその時!
バチッ!!
「ギャア!な、なんだ···!?」
「ボクに気安く触らないでください。どういうご用件ですか?」
「やかましい!お前らのせいでオレらの仕事がねえんだよ!どう落とし前つけんだ!?ああん!?」
「ということは、冒険者さんですか?悪いですけど、ギルドからはボクに指名依頼で直接お仕事を持ってくるので、あなたたちの仕事は取ってませんよ?受付さんにお願いしたらいいんじゃないです?」
「どうせグルなんだろぉ!?がっぽり稼ぎやがって···。オレら先輩に上納金差し出すのが筋だろうが!!」
「そういうのはボクわかんないですけど···。これ以上ボクに絡んだら痛い目見ますよ?通行の邪魔になっちゃってますし···」
「だったらオレらが教育してやる!その体に刻みつけてやるわ!」
そう言って今度はボクに一斉に襲いかかってきた!しかも、武器を抜いた···。じゃあ、こっちも堂々と反撃させてもらうよ!
剣がボクに振り下ろされた!でも、ボクは防御やかわすつもりもなく棒立ちのままだった。周囲の人たちから悲鳴が上がった!でも、大丈夫だよ。ほら!
バシッ!!
ボクに向かって振り下ろされた剣は当たる寸前で弾き飛ばされた。
「んあ?」
「おいバカ!なに油断してんだよ!次はオレだ!」
バシッ!
「んなっ!?」
「どうしたのさ?2人も武器がスッポ抜けちゃって」
「クソッ!武器がダメなら!!」
バシッ!
「ぐあっ!!」
素手で殴りかかったけど、それでも弾かれてボクには届かなかった。
これ、遺産の知識にあった雷魔法なんだよね。さっきの高周波焼入れと同じように交流電流を体に流すと、ボクに向かってくる金属製品は全部弾かれちゃうんだ!『電磁誘導の法則』ってヤツらしいんだよね。よくわかってないけどさ。
だから武器も弾くし、鉄の鎧を着込んでたら人ごと弾き飛ばしてしまえるんだ。
さらにボクに触れると思いっきり感電してしまうんだよ。自衛するには最適な雷魔法なんだよね。遺産の知識によると、アキさんが好きだった雷魔法らしいんだよ。
「クソッ!全員でかかれぇ〜!」
「やっぱりそうなるのか···。じゃあ、ボクもいくよ!」
身体強化魔法をかけてから、先頭で襲ってきたヤツの足を思いっきり払ってやった!体が軽く空中を舞っている間にボクがもう1回転して回し蹴りを、雷魔法付与で食らわせた!
「「「ギャア!!」」」
ふっ飛ばされたヤツが仲間2人にぶつかって、一緒に感電して気絶したね。あと2人だけど、そっちはテオがもうお仕置き済みだったよ。屋台で買った串焼きを食べながらだった···。
「こっちは片付けたぞ〜!こいつら、どうするよ?」
「う〜ん···。ボクがギルドに行って話してくるよ。テオは見張ってて」
「わかったぜ」
やれやれ···。面倒な事になっちゃったなぁ〜。ボクはギルドに向かって受付で事情を話した。
すぐにギルド長のシースさんが出てきて、ボクと一緒にチンピラのところへ向かった。
まだ気絶してたからテオは手を出してなかったよ。手には食べ終わった串がいっぱい握られてたね。それも十分武器になるけどさ···。
「ライくん!テオくん!本当に迷惑かけた!」
「いいんですが、なんか逆恨みされましたよ?仕事取られたって···」
「実は···、今ある仕事は稼げないのがほとんどでな···。可能な限り魔獣退治はライくんに任せないようにしてるのだが、それでも少なくてな。かといって高額な魔獣となるとCランク以上でないとムリなのだよ···」
「両極端になってるって事ですか?」
「そのとおりだ···。だから仕事を回してほしかったのだろうが、こいつらはあまりにも自分の実力を過信しすぎてるな」
そのシースさんの言った言葉はちょっと気になった。ボクも、遺産の力を過信してないだろうか···?
これまで遺産の力に何度も助けられた。でも、それでも助からない場合もあるんじゃないかな?
今回はこの人たちが自分の実力を過信してボクを倒そうと考えてた。これをボクと魔獣に置き換えたら···?
これからはもっと慎重に魔獣の力をよく見てから退治しようと心に決めたんだ。
今のライくんに襲いかかって勝ち目のある人はそうそういません。護身用の雷魔法ありますからね。
ライくんが5歳というちびっこにも関わらず驚異的な力を持っているので、どうしても見た目と実力の乖離が激しすぎるために『何か不正してる』とか思われてしまうんですよ。致し方ないとこともありますが、そもそも武力でやり合おうとする時点でダメですけどね。
さて次回予告ですが、ライくんも携わった門の修復作業を見学しますよ〜!一応製作者の1人ですからね。どんな作業風景でしょうか?
次回は本日夜に投稿します。お楽しみに〜!




