2-14.領主邸に帰ったらギルド長が来てました···
「本当に浮遊大陸に行かなくてよかったのか?」
「ああ。やっぱり自力で行けなきゃ意味ないしな。それなりに実力を身につけてからでないと、墓参りに行ったら怒られそうだしな」
「そんな事ないと思うけどなぁ〜。まぁ、テオおじさんが元気に生きてたって事はあたいが帰った時に親戚たちに言っておくぜ!」
「おう!そうしてくれ。今日はありがとな!」
「この程度、ヒーローとしては当たり前だからな!」
ん?なんか聞いた事のあるセリフだなぁ〜。もしかして···?
「その言葉って、アノドさんって人を助けたドラゴン族が話してたって聞いたんですけど、レンさんなんですか?」
「助けた人って大勢いるからいちいち覚えてねえけど···。あたいはここ2年ぐらい地上で鍛錬してるけど、いつの話だ?」
「だいぶ昔って言ってました」
「だったらママだな!ママもあたいみたいにヒーローとして人々を救ってたって言ってたからな!」
「へぇ~。レンさんの家系って、代々人々を助けてるんですね!」
「ご先祖様が昔に世界中を回って、悪を懲らしめてたって話があるからな!集落によっては伝説にもなってるらしいから、みんなご先祖様に憧れてヒーローやってるんだぜ!もちろん、あたいもな!」
レンさんの家系はこうやって人々を助けてたんだね。かっこいいなぁ〜!『ひいろう』ってよくわかんない言葉だけど、レンさんのような人を指す言葉なのかな?
そして、ボクたちは東の森に戻ってきた。楽しい空の旅だったよ!
「レンさん、ありがとうございました。すごいものが見れて楽しかったです!」
「ありがとな、レン。浮遊大陸に戻ったらよろしく言っといてくれ」
「あたいも二人に会えてよかったぜ!そう言えばライもスマホ持ってたな?ちーむッス!ってアプリがあるだろ?それでいつでも連絡できるから、何かあれば連絡してこい!」
「え!?···あ!連絡先ってところにレンさんの名前が···」
「そういう事だ。あたいは次の嵐までいろんなところへ飛びまくってるからな!また会おうぜ!」
「はい!また会いましょう!」
「じゃあな〜!」
レンさんはそのまま飛び去っていった。レンさんが倒した魔獣はボクたちに引き渡され、謝礼はいらないということだった。『ヒーローは対価をもらわないんだ!』って言ってたね。かっこよかったなぁ〜。
今日の予定ではこの後は西の森での魔獣討伐だったけど、こっちはあっという間に終わってしまった。テオが張り切って魔法でやっちゃったからだ。
「うっし!これで最後だな!」
「テオ、今日は気合は入ってたね〜」
「まぁな。頑張って鍛えて、自力で浮遊大陸に帰りたいからな」
「でも、どうして自力にこだわるの?」
「···オレは元々体が弱かったってのは前に話したよな?」
「うん」
「今の力だとおそらく浮遊大陸に行っても、かなり弱い方だ。ドラゴン族は力が強い者が褒められるんだ。だから···、あんまり歓迎されないと思うんだよなぁ~」
「そんな···」
「それにな?浮遊大陸にはもう家族が···、身内がいねえ。オレが知ってる親戚は···、みんなとっくの昔に亡くなってる。オレの事は知ってるだろうけど、はっきり言ってよそ者と変わらねえんだよ」
「············」
「浮遊大陸に行っても、親父もおふくろの墓参りぐらいだけだな。もしかしたら、居心地悪くて地上に帰って来るかもな···」
「テオ···」
「そんな悲しそうな顔をするな。オレは賢者の遺産の管理者になったことを後悔はしてないし、こうなることも覚悟してたんだ。むしろ···、こうして病の苦しみもなく、元気に生きれるのが嬉しいんだ」
「···うん」
「今はこうしてライと一緒に旅をしている。寂しくなんてないさ」
「つらかったら···、ボクでよければ話を聞くよ」
「···気を遣わせたな。ありがとよ」
浮遊大陸···。テオが堂々と行っても大丈夫なように、ボクも一緒に頑張るよ。
今日は昼過ぎには戻ってこれた。町中は少しずつ日常を取り戻しつつあるようで、壊れた家の修理が始まったり、壊れたお店の前でものを売ったりしていた。兵士さんたちも後片付けを手伝ってたね。
そんな光景を見て、リークさんたちが頑張ってるって思えたんだ。早く元の生活に戻れたらいいんだけどね。
「おや?ライくんとテオくんじゃないか」
通りを歩いてたら、前からディーブ先生がやって来た。
「こんにちは、先生」
「おう!」
「その格好から察するに、魔獣討伐に行ってたのかい?」
「はい。今日で冒険者ギルドから請けた分はすべて片付きましたよ」
「それはすごいね!アスさんから話は聞いてたが、幼いのにすごいね」
「いえ、ボクはそれほどでも···。いろんな人たちのおかげなんです」
「そうか···。そうだ!ちょっとキミたちに頼みたいことがあるんだが···」
「はい?ボクたちでもできる事ですか?」
「キミたちにしかできないことなんだ。旅の話や冒険者としての話を学校でしてくれないだろうか?」
「···え?ボクたちの話···、ですか?」
「そうだ。こればかりは私では教えられなくてね···。みんなに外の世界を知ってもらいたいのだよ。どこの町もそうだが、壁の外側は魔獣だらけで危険すぎる。壁の内側だけでしか生活してなかったら、ここがよそとどう違うのかもわからない。それでは今後、この町は大きくならないのだ。キミたちの話でみんなの視野を町の外に向けてやりたいのだ。どうだろうか?」
「なるほど···。いいですよ!」
「オレもいいぜ!」
「そうか!ありがとう。時間はいつが都合いいだろうか?」
「明日以降ならいつでもいいですよ。用事は今のところほぼ片付いたので」
「じゃあ、学校の準備もあるので来週の今日でどうかな?」
「わかりました。予定を入れておきますね」
「私もぜひ聞いてみたかったのだ。楽しみにしているよ」
なんと!急に学校の先生になっちゃいました!って言ってもボクの事と旅のお話だけどね。
何を話すのか、帰ってから考えておこう!
領主邸に戻ると、使用人さんからギルド長が来てリークさんと会議してるそうで、ボクが帰ったらリークさんの部屋に来てほしいとの伝言があった。
「ギルド長···。あの怖いクマみたいな人だよね?」
「だろうな···。ありゃ、相当魔獣倒してると思うぞ。他の連中とは眼力がすごかったからな···」
ちょっと怖いけど···、リークさんがいるなら食べられないよね···?なんで魔獣より怖いって思うのか自分でもわかんないけど···。
そしてリークさんの部屋に着いて、扉をノックした。
「どうぞ」
「し、失礼します···」
···いる!今はリークさんと話をしていたのか、背中が見えてるけど。
そしてギルド長がクルッとこっちに向いた!!
「ひっ!?」
「ん?どうした?オレの顔に何かついてるのか?」
「い、いえ···」
そんなボクの様子にリークさんは気づいたようだ。
「シース、お前の顔が怖いだけだ。ライくん、大丈夫だ。コイツは顔だけ怖いが、内心はやさしい。だから心配いらないよ」
「おい!?リーク!顔が怖いとは失礼だぞ!?」
「毎朝鏡を見てないのか?もう少し柔らかい表情をすればいいのに···」
「これは生まれつきだ!!」
「生まれつきならば恐ろしい形相の赤子だったのだな?誰しも赤子はかわいいというのに···」
どうやらリークさんとギルド長は仲がよさそうだね···。
ディーブ先生はライくんに先生を依頼しましたね。
町の人たちは町から出る事はありません。ですので、よその場所の事を知りません。町という閉鎖空間の外側というのを知るというのは、客観的に自分の居場所はどういうものか?として比較するのにはいいんですね。いいところもあれば悪いところもある。悪いところなら改善することができますしね!
何もこの世界の話だけではないですよ。海外へ行くとまったく価値観や文化が違いますからね。皆さまも知見を広めるべく、いろんなところへ行ってみるのはいかがでしょうか?
さて次回予告ですが、ギルド長はどうもライくんとテオくんに用事があったみたいです。さらにはここで冒険者証の秘密が明かされるぞ!どんな秘密があったんでしょうか?
そして、テオくんはリークさんがちょっと怪しいぞ?と感じました。そこで直接問いただしますよ。どんな結果になるのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




