2-13.テオ、親戚に出会う!?
おはよう!昨日は1日大荒れな天気だったけど、今朝は雨が止んだよ。空はまだ黒い雲が多いけどね。
昨日はボクたちの稽古が意外なほど盛り上がったんだ。大人が子どもに教えられるなんて嫌がる人多いんじゃないかな?って思ってたんだけどね。
さて、今日は引き続き森の中の魔獣を退治して回るよ。多分、今日でギルドから押し付けられた依頼は終わりそうなんだけどね···。ちょっと報告に行くのがなぁ~。あの受付のお姉さんだったら嫌なんだけど···。
そう思って今日の朝食の時にその話をリークさんにしたんだよ。そしたら···、
『なら、別のギルド職員をここに派遣してもらうよう手配しておこう。そうすればライくんはギルドに行く必要はないからね』
だってさ。そんな特別なことしてもらってもいいのかなぁ~?
まぁ、もう手配されちゃってるからいまさら断れないよね?お言葉に甘えさせてもらうことにするよ。
さあ!今日も東の森で気配を消す訓練をしつつ、魔獣退治をするよ!ただ、この日は状況が変わっていたんだ···。
「···あれ?魔獣が倒されていってる?」
「ほかの誰かがやってるんじゃないのか?」
「でも、町の冒険者さんたちは森にまだ出たがらないから、違うと思うんだけどなぁ~」
「それじゃあ、別のところからやってきたやつじゃないか?」
「かもね~。どうする?」
「様子だけでも見に行こうぜ。魔獣が倒されていってるってことは腕はそれなりにいいはずだしな!」
「そうだね。参考になるかもね!」
ということで、魔獣レーダーを見ながら森の奥に進んでいった。
1時間ほど歩いた先で、魔獣を倒している人をついに見つけた!ただ···、普通の人じゃなかったんだ···。
「え?ま、まさか!?」
「マジか···。本当にオレ以外のドラゴン族が地上にもいたんだ···」
そう、その人はドラゴン族だった!髪も翼も輝くような金色の···、金竜のドラゴン族の少女だった!
かなり大柄な魔獣を、右足を金色に光らせながら強烈なキックを食らわせて吹っ飛ばし、そして爆発した!
「ふぅ~。なかなか手ごわかったじゃないか···。でもまぁ、あたいの敵じゃねえな!」
かなり強そうだね···。って、ドラゴン族って最強種族って言われてたからそうなんだろうね。
「さてと···、そこにいるのは誰だ?覗き見なんてしてないで出て来いよ」
うわっ!?ボクたちに気づいてた?まぁ、襲ってくることはないだろうから出ていくことにしたよ。
「なんだ?子どもと···。えっ!?ド、ドラゴン族!?」
向こうも驚いてるね。そりゃ、地上にはいないって話だったから同族がいるとは思ってなかったんだろうね。とりあえずあいさつしておくか。
「こ、こんにちは。ボクはライ。そして···」
「白銀竜のテオだ。地上で活動しているドラゴン族がオレ以外にもいるって聞いたけど、アンタなんだな?」
「ああ!あたいはレン。数々の伝説を作ったご先祖様のように立派な『ヒーロー』になるべく、鍛錬をするために地上にやってきた金竜だぜ!他だったら親戚の赤竜のコルメが地上に降りたって聞いてるけどな。けど···、白銀竜で地上に降りてるって聞いたこと···、あっ!?昔にご先祖様の宝と一緒に眠った白銀竜がいるって聞いたことあったけど、もしかして!?」
「ああ、オレの事だな。賢者の遺産の管理者としてはるか昔に地上に降りて、今はライが遺産を正式に継承したから目覚めて、こうして一緒にいるんだ」
「そうだったのか···。ってことは、テオおじさんとあたいは遠い親戚だな。確か、亡くなったひいばあちゃんが小さいころに一緒に遊んだって言ってたらしいな···」
「ひいばあちゃん···、もしかして、エルの事か?」
「そう!エルひいばあちゃんだ!まさか生きてたって聞いたら、ひいばあちゃんは喜んだだろうなぁ~」
「そうか···。あまりにも長いこと眠っちまってたからな···。エルにも悪いことをしたな···」
「仕方なかったって聞いてるぜ。そう言えば二人はどうしてこんなところにいるんだ?」
「魔獣退治の依頼で来たんだ。って、もうここは倒し切ってるみたいだな」
「そうだな!魔獣レーダーで確認しても、もういなさそうだしな!」
そう言ってレンはポケットからスマホを取り出した!えっ!?ボク以外も持ってる人がいたんだ!?
「ん?何を驚いてるんだ?」
「い、いや···。それ···」
「ん?あ~、これか?あんたも持ってるじゃんか。何を珍しがってるのさ?」
「いやだって···、それって神器でしょ?」
「そうだぜ?うちの親戚はいくつか持ってて、地上に降りる時には持っていくように言われてるんで、あたいは持ってるだけだぜ?コルメも持ってると思うぞ?」
「そ、そうなんだ···」
「そういえばテオおじさんは浮遊大陸に帰らないのか?」
「帰る方法がないんだよ」
「···え?高速飛行魔法使えないのか?」
「···ああ。使えたら帰れるのは知ってるけどな」
「遺産の知識にあるんじゃないのか?」
「イメージがいまひとつなんだよなぁ~。わかっちゃいるんだけどな」
「だったらあたいが使えるから、乗ってみるか?」
「おっ!?そりゃ助かるぜ!」
「せっかくだし、ライもあたいに乗りなよ!」
「えっ!?いいの?」
「ああ!二人乗っても変わんないしな!」
ということで、金竜のレンちゃんに乗せてもらうことになった。竜モードのレンちゃんはテオよりも一回り大きかったね。
「そんじゃあ、遊覧飛行と行くぜ!」
「うん!よろしくね!」
「よろしく頼むぜ!」
レンちゃんはふわりと飛び立ち、森の木々の上に出た。そしてゆっくりと上昇しながら飛び始めた。
「じゃあ、そろそろ高速飛行魔法を使うぜ!よく見とけよ~!」
そう言って、レンちゃんの両翼の下に魔力の塊が発生した。青白く輝きはじめ、そしてゴーーーっという爆音が響き始めた!
そして、魔力の塊から後方へ噴出する魔力が見えると、一気に加速を始めた!!
すごい!どんどん流れる風景が速くなる!一気に上昇して雲を突き抜けてしまった!さらに上昇してその上の雲すら貫通してその上に飛び出た!
雲のはるか上空はきれいな青空だった。見渡す限り雲ばかりで地上はまったく見えない。これが···、真の空の上なんだね···。
「こんな感じだな!本当は青竜のコンの方が飛ぶのがうまいんだけどなぁ~」
「なかなかいい加速だったぜ!そういう風に魔法を使うってだいたいわかったぜ!」
「そうか!あたいがやってあげれるってこれぐらいだからな!おっ!?右上を見てみな!浮遊大陸が見えてるぜ!」
「えっ!?テオ?あれが···?」
「そう、浮遊大陸だ」
浮遊大陸···。テオから以前に聞いていた空飛ぶ大陸···。雲の上に陸地が載ってるような感じだった。しかも思ってたよりも巨大だったよ···。
「浮遊大陸は存在を隠すために嵐をまとっているんだ。ドラゴン族でさえ高速飛行魔法を使ってもたどり着くのが難しい場所でもあるんだぜ。一時は人族の技術が進みすぎて簡単に浮遊大陸に近づかれたこともあったけど、今はもう失われたから襲ってくるヤツもいないし平和だけどな~。あたいはそれがつまんなかったから、こうして地上に降りて鍛錬をしてるんだぜ!」
レンがそう説明してくれたけど、ボクはその話が聞こえてなかった。近くに見える浮遊大陸の大きさに目を奪われていたからね。
前作をお読みの方でしたらお気づきかと思いますが、嵐というのは浮遊大陸が近づいた証拠なんです。嵐をまとっていますからね。
さらにレンちゃんの先祖は金竜のアトラちゃんですね。スマホにあった特撮ものにハマってヒーローに憧れて活動してましたね。その活躍ぶりが伝説となり、代々憧れになっちゃいまして、レンちゃんもヒーロー活動をやっておりますよ。
以前アノドさんを助けたのはレンちゃんのお母さんです。レンちゃんではありませんからね。
レンちゃんのひいおばあさんはテオくんを知ってたと言うことですが、言うまでもなくテオくんが知っている人たちは全員この世を去ってしまってるんですね。ですので、親戚と言われてもほぼ赤の他人も同然なんです。このあたりは仕方ないとは言え、テオくんにとっては寂しい話でもあるんです。
でも、テオくんはこうなることは覚悟の上でしたし、今はライくんがいますので寂しいとは感じていません。むしろ、『病の苦しみのない夢のような世界で生きてる』という気持ちなんですね。このあたりの詳しい描写は後で登場する予定です。
さて次回予告ですが、町に戻るとディーブ先生にばったり会い、そこで学校でライくんの話をしてくれないか?と頼まれてしまいます。さらに領主邸に戻るとギルド長が来てるので会ってほしいと言われます。ライくんとしてはギルド長が怖いんですけど···。
それではお楽しみに〜!




