2-7.ギルドでは依頼が溜まりすぎて困ってました
本日2話目の投稿です。朝に1話投稿してますので、先にそちらをご覧下さいね。
「ライ?ほかに行きたいところってある?」
「じゃあ···、壊された門のところかな?」
「わかったわ!こっちよ」
この町の門が修理完了するまで、この町の護衛をすることをアスのお父さんから頼まれたんだ。だから、今のうちにこの町のことを知るために回ってるんだ。アスが案内してくれるから、非常に助かってるよ~。
学校から15分ほど歩いたところにその門はあった。
「うわぁ~。これはひどい···」
「そりゃ、あんなでかい棍棒で殴り続けたらこうなるよな~」
門は分厚い鉄でできてたのに、ひしゃげるどころか裂けて破られていたんだ···。ここの門は森側へ開くような扉タイプだったんだ。だから扉の内側から太いかんぬきをかけたら、突進して体当たりしても構造上ビクともしないようになってたんだけど···、巨大な棍棒で何度も叩かれて壊されてたんだよ···。
「わたしも初めてこれ見たけど···。ライとテオはよくこんなことする魔獣を倒したわね···」
「あはは···。あの時は必死の思いだったからね···」
「ドラゴン族は魔獣狩り専門だからな。今のオレならあの程度だったら余裕だな!」
「二人とも、そんなすごいとは思えないんだけどなぁ~」
「え?それって弱く見えちゃうってこと?」
「そうね。ライなんかただの幼い子どもにしか見えないものね。テオはやんちゃなガキ大将って感じかしら?」
「ははは···。やっぱそう見えちゃうよね···」
「ガキ大将···。オレってそんな風に見えるのか···」
何気ないアスの言葉でちょっとだけ傷ついたボクたちだった···。
続いて案内されたのは冒険者ギルドだった。ここも魔獣の被害は多少あったみたいで、建物が一部壊されていたよ。
中に入ると、冒険者さんの姿はほとんどなく、代わりに依頼を出す人たちが多く訪れていたんだ。
「食料が不足しだしたんだ!狩りで森に行きたいから護衛を頼む!」
「水道が濁ってるんだ!川からの取水口を見に行きたいんだが、護衛をお願いしたいんだ!」
「けが人が多すぎて薬草が不足してるのよ!薬草採取を依頼したいの!」
受付がごった返していたので、ボクたちは依頼掲示板を覗くことにしたんだ。だいたいお昼ごろだったら目ぼしい依頼はほとんどなくなってるのがダイナモの町のギルドだったんだけど、ここはこの時間でもたくさんの依頼が張り出されていたんだ···。
「ライ?こんな時間なのにたくさん出てるぞ?ここの冒険者たちの数が足りてないのか?」
「ほら、先日の魔獣襲撃で多くの冒険者さんたちが傷ついて休んじゃってるってアスが言ってたでしょ?だから請けたくても請けれる人がいないんだよ」
「そういう事か~。ライはどうするんだ?」
「う~ん···。リークさんからこの町の護衛を依頼されちゃってるんだから、ここの依頼は受けていいのか···」
「いいと思うわよ?パパの依頼って、『この町の護衛』だから、町からあんまり離れなかったらいいんじゃないかしら?」
「じゃあ···、魔獣がいる危険性の高い森へ行く依頼を請けちゃおうか?そうしたらリークさんに言った『魔獣退治』も一緒にやれるよね?」
「ライがしたいようにしたらいいぜ。オレはそれについていくだけだからな!」
「じゃあ、アス!ボク、ここの依頼をほかの冒険者さんたちの迷惑にならない程度で請けることにするね!」
「わかったわ!帰ったらパパにもそう伝えておくわ!」
「それじゃあさっそく、受付で相談しに行こうか!」
多くの依頼者さんたちが並んでいる後ろにボクたちは並んだ。ただ···、まったく前に進まなかったよ···。受付のカウンターでは依頼者さんと受付さんがずっと相談や手続きで忙しそうにしていたんだ。これは時間がかかりそうだよ···。
「う~ん···。これじゃあいつまで待っても相談できそうにないなぁ~」
「ライ?依頼の相談って今日じゃないとダメなの?」
「別に明日とかでもいいけど?」
「じゃあ出直しましょうか?今日はここまでにして帰りましょう。わたし、歩き疲れちゃったわ···」
「あっ!?ご、ごめん!ボクたちって旅で歩き慣れちゃってるから、アスにムリさせちゃったね···」
「気にしなくてもいいわよ。わたしもライと一緒に町を歩けて、いい気分転換になったわ!」
「そう?そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあ、今日は帰ろう!」
まだ町の中が混乱しているので、明日は朝一番で行ってみようかな?
領主邸に戻ったボクたちは部屋でくつろいだ後でリークさんたちと一緒に夕食をいただくことになった。
「すまんな···。この程度の料理しか今は出せんのだ···」
「いえ···、これでも十分ですけど?」
領主さんともなると、いいお食事が出てるんだろうね。今、目の前にあるのは焼き魚だったよ。ボクたちはこれでも十分なんだけどね~。
「どうも食料が不足し始めてるようだ。町民が通常通りの生活ではなくて避難生活の状態だから、仕事が回っていない状況なのだよ。申し訳ない···」
「お気になさらないでください。普段のボクたちもこういったものしか食べてませんから、逆に気を遣わずに済みます」
「そう言ってもらえるとありがたい。今日は町をアスと一緒に見て回ったそうだが、いかがだったかな?」
「はい。いい町ですね。魔獣の被害も見てきました。あの門、修理が大変だろうなぁ~と思いました」
「そうなのだよ···。あれを作った鍛冶師がもうこの町にいなくてね···。今この町にいる鍛冶師たちにお願いしたんだが、これまでの強度になるかがわからないとの回答だったので、どうしたものかと悩んでおるのだよ···」
そうだったんだ···。鍛冶師だったら誰でも門の修理ができるってわけじゃなかったんだね。これは修理が長引きそうな予感がするなぁ~。そこまで長く滞在するわけにもいかないと思うんだけどね。
···え?遺産の知識がボクに教えてくれる···。『高周波焼入れ』?雷魔法で鉄を強化できる···?そんな事ができるんだ···。やってみる価値はあるかもね!
「あの~、リークさん。門の強度を上げる方法、ボクならできるかもしれません···」
「···え?どういうことだい?」
「門は鍛冶師さんたちに作ってもらい、そのあと最後に特殊な雷魔法を門の表面だけにかけるようです。それだけで門の表面だけが固くなって、内側は粘り強い鉄になるそうなんです···。やってみないとわからないんですけど···」
「聞いたこともないな···。それにライくん?その知識はどこで···?」
「ごめんなさい···。ちょっと言えないんです···」
「そうか···。しかし···」
「パパ!ライは信用できるわ!わたしはやってみたらいいと思うわ!」
「アス···。そうだな。失敗しても、またやり直せばいいだけだな。では、門を作るところまでは鍛冶師に任せて、完成したらライくんにお願いするとしようか。それでいいかな?」
「はい!ボクもできる限りやってみます!でも、一応練習はしたいので、どの大きさでもいいので鉄板を用意していただけると···」
「わかった。手配しておこう。なにもかもキミに頼りっぱなしで申し訳ないな···」
というわけで、門の修理の一部までボクがやることになりました。この町のためになるなら、頑張るよ~!
門の修理をライくんはやると言い出しました。高周波焼き入れは前作の続編でも登場しましたね。本作の方が正しい使い方ではありますが(笑)。
そしてギルドは大混乱に陥ってましたね。依頼を出しても受注されるとは限らないのが冒険者ギルドというシステムです。
他作品でも同様の傾向ですが、こういった災害が発生すると仕事量がハンパなく増えてしまいます。さらに冒険者たちがケガで休職に追い込まれると、依頼が溜まる一方になってしまうんですね。だからといって冒険者も休みすぎると生活費の問題が発生してしまいます···。年金も失業保険もないですからね。
さて次回予告ですが、翌日にギルドに行くと、疲れ切った受付の人に冷やかしか!?と怒られてしまいます···。しかし、冒険者証を見せると態度が一変!ギルド長まで出てきて大量の討伐依頼をライくんたちに押し付けちゃいますよ!?
明日も朝と夜に1話ずつ投稿します。お楽しみに〜!




