2-5.領主さんとお話するよ
「自己紹介が遅れたね。私はリーク。こちらは妻のカレンだ」
川で流されていた少女のアスを救出して、魔獣に町が襲われたって聞いたので魔獣を退治したんだ。そして傷ついた人たちに回復魔法を魔力が尽きるまでかけてたら倒れちゃったんだよ。そして目が覚めたら領主の家のベッドで寝かされていて、アスが領主の娘だったんだよ。
今はその領主様とアスのお母さんと対面しているんだ。
「初めまして。ボクはライ。こっちで寝てるのがドラゴン族のテオです」
「話はアスから聞かせてもらったよ。娘を···、そして町を救ってくれて···、ありがとう」
そう言ってリークさんとカレンさん、アスは頭を下げた。
「ちょ!?ちょっと待って下さい!ボクは当たり前の事をしただけです!」
「いや、ライくん自身はそう思ってるのだろうが、我々は全滅を考えていたのだ···。ライくんには感謝してもし足りないぐらいだ···」
「でも···、さっきアスにも言いましたが、助けられなかった人たちもいました···」
「それでも全滅しなかっただけでもマシなんだよ。ライくんが来なかったらね。だから、気に病む必要はないよ」
「ありがとう···、ございます···」
そんな話をしていたら、横で寝ていたテオが起きてきたよ。
「ん~~?···あれ~?ここは···、どこだ?」
「おはよう、テオ」
「ライ?ここはどこなんだ?」
「この町の領主様のお屋敷らしいよ?」
「なんでそんなところにオレたちはいるんだ?」
「アスが領主様の娘さんなんだってさ」
「そうだったのか···。で?そっちの人は?」
「ドラゴン族のテオくんだね?私はリーク。この町の領主をやっている。こちらは妻のカレンだ」
「おう!テオだぜ。よろしくな!」
「こんなところで話もなんだ。まずは食事を用意しよう。ライくん、テオくん。話はその後でもいいかな?」
「はい。いいですよ」
「おう!腹減ったぜ~!」
「もう!テオ!はしたないよ?」
「ははは!気にすることはない。すぐに準備させる。出来上がったら呼びに来るからね」
そう言って3人は部屋から出て行ったよ。部屋にはボクとテオだけになった。
「テオ、とりあえず魔獣被害はなくなったみたいだよ」
「どっちかといえば魔獣退治よりも、その後の回復魔法が大変だったなぁ~」
「あはは。そうだね。魔獣退治はあっという間だったもんね」
「ライもだいぶ強くなったぞ~。あいつもかなりの強さだったのに4体倒したんだからな!」
「まだまだだよ···。最初の2体なんか、あやうく一撃くらうところだったからね」
「一撃って···、あの棍棒か?」
「うん。当たる直前に遺産の知識がボクに回避技を教えてくれたから、無傷だったけどね」
「おぉ~、そりゃ危ないな···。一撃であの世行きだぞ···」
「だから、ボクもまだまだだってことさ。···本当に今まで運がよかったんだよ」
「運も実力のうちだぜ?」
「でも、いつまでも運に頼ってばかりじゃダメでしょ?」
「確かにな。まぁ、焦る必要はないぜ?焦って実力がアップするわけじゃないんだからな!」
「そうだね。被害は出ちゃったし、犠牲者が出ちゃったけど···。町を守ることができてよかったよ」
「···ライ?犠牲者が出たことに気落ちしてるようだから、この際言っておくぞ?ライは潔癖すぎるぞ!」
「···え?」
「確かに犠牲者は少ないに越したことはない。でもな?それはライ自身の攻撃で巻き込まれたわけじゃないだろ?」
「そうだけど···」
「ライは自分ができるすべての事をやったんだ!それに関係してない犠牲まで気にしたらダメだ!いくら賢者の遺産を受け継いだからって、なんでもできるわけじゃないんだからな!」
「···そう、だね」
「いいか?賢者の遺産はライが生き残るためのものだ。この世界の人々を救うためじゃない!だから···、人々を救うのは余裕のある時でいいんだぞ?」
「···うん。わかった。···ありがとね。気を遣わせちゃったね」
「わかりゃいいんだよ」
テオ···。ボクのことを心配してくれたんだね?ホント、いい相棒ができて良かったよ!
「(コンコン!)ライ!食事の準備ができたわ!今すぐいらっしゃい!」
「はーーい!テオ、行こうか!」
「おうよ!もう腹ペコだぜ~!」
ちょうどいいタイミングでアスが呼びに来てくれたよ。ボクたちはアスに案内されて、食堂へ向かった。
食堂では軽めのお食事が用意されていた。もう見た瞬間にボクも急におなかが空いてきておなかが鳴ったのが恥ずかしかったよぉ~!
食事を終えてしばらくすると、アスがやって来た。リークさんが話を聞きたいってことだったからね。案内された部屋で待っていると、リークさんが入ってきた。
「待たせて悪かったね。魔獣被害の後始末を指示してようやく落ち着いたところでね」
「いえ、ボクたちは時間は大丈夫ですよ」
「そう言ってもらえると助かるよ。さて···、ライくんがアスと出会った話はアスから聞かせてもらったよ。本当に助けてくれて、ありがとう」
「いえ、たまたま川岸で顔を洗おうとしたら流されているのを見つけただけですから···」
「そうか···。あとはテオくんはドラゴン族との事だが、伝説のドラゴン族が本当にいたというのも驚きだったよ」
「そうだな~。地上にいるのはオレと、どうもあともう一人いるようなんだけどなぁ~」
「そうなのか···。そうそう、キミたちはこの町に来た時にCランク冒険者って言ったそうだが、それは本当なのかな?」
「はい。これが冒険者証です」
「確かに···。その幼さでここまでの強さと高ランクというのも、あの魔獣退治を見たら納得だな」
「あはは···。ボクもまさか急にここまでのランクになるとは思ってませんでしたしね」
「そうなのかい?この町でもCランクはいるんだが、キミたちほどの実力ではないな。もちろんこの前の時も前線で戦ってもらったんだが、負傷してすぐに戦線離脱してしまったんだ。私から見ても、キミたちがSランクと言われても疑わないよ?」
「え!?そ、それはさすがに···」
「Sランクというのは『魔獣災害が発生した際に対処できる冒険者』に与えられる特別な称号なのだが、今回のことを考えると妥当だと思うぞ?」
「え?Sランクってそういう意味なんですか···?」
「もしかして、知らなかったのかい?」
「はい···。そもそもボクたちって冒険者になりたくてなったんじゃなくて、たまたま食堂で一緒になったおじいさんが紹介状書いて、成り行きでなっちゃったんで···」
「そのご老人はさぞかし慧眼だったのだな···」
「なんか、元SSランクだったらしいですよ?」
「もしかして!?アノド様か!?」
「え!?アノドさんをご存知なんですか?」
「ああ、存じているぞ。かつてこの町の防壁建設で助言してくださったのだよ···。そうか···。この町はアノド様に2度助けられたようなものになったな···」
アノドさんも結構有名人だったんだなぁ~。SSランクにもなるとそうなのかな?
魔獣被害に対して、なんとか最小限にしたい!というライくんの気持ちはあるのですが、現実にはそううまくいきません。いくら賢者の遺産を継承しているとはいえ、限界があります。
まぁ思うのはいいんですけど、それで気を病んでしまったら元も子もないですね。テオくんはそこを心配してくれました。
さて次回予告ですが、領主であるリークさんとの会話後編です。リークさんから、町の門の修繕が終わるまで滞在できないか?とお願いされてしまいます。特に急ぐ用事もないライくんは快諾してしまいますよ。そしてアスちゃんに町を案内してもらいますよ〜。
明日から世間ではゴールデンウイークですね!本作も期間中の土日祝は朝と夜に1話ずつ投稿しますよ〜!
それではお楽しみに〜!




