2-4.できる限りやってみます!
川に流されてた少女のアスを助けて事情を聞いたら、町が魔獣に襲われてるって言ったので、急いでやってきたんだ。
すぐに2体の2本足で歩く武器を持った魔獣を倒した!7体のうち、3体はテオが戦ってるので、ボクは残り2体を相手するために向かった!
ドズーーン!!ガラガラ···。
通りの先で家が崩れた···!あそこだね!急ぐぞ!
身体強化の倍率をさらに上げ、ボクは全速力で走った!···いた!魔獣が手に持つ棍棒で家を叩き潰したんだ!これ以上はさせないぞ!
周囲には兵士さんたちが全員倒れていた···。そして魔獣がまた棍棒を振り上げた!その腕にめがけてボクは斬撃を放った!
「秘技!弦月斬!!」
ズバッ!!ズシーーン!!
「グァアアアーー!!」
魔獣の右腕を切り飛ばした!これで武器を持った攻撃はできないね!ボクは一気に間合いを詰めて、思いっきりジャンプしてから魔獣の首をはねた!これで1体倒した!あともう1体は···?
いた!さっきの魔獣が叫んだ声でこっちを振り向いていたんだ。ボクに向かって突進してきた!
今度は魔法でいくよ!巨体だから狙わなくても当てられそうだよ!
「ストーンランス!!いっけぇーーー!!」
ボクは石の槍を土魔法で3本作り出し、魔獣に向けて撃ちだした!もちろん、全部命中だ!!
「ギャァアアアーーーー!!」
当たった場所は首、胸、腰の部分。首が致命傷になったようだね。のけぞったような感じで倒れたよ。
「ふぅ~、とりあえずなんとかなったかな?そうだ!テオは!?」
「もう終わってるぜ~。ライもだいぶやるようになったなぁ~!じっくりと戦いを見せてもらったぜ!」
ボクが振り向いたら、そこにテオがいたんだ。どうやらさっと倒してしまってボクのところに飛んできたみたいだったよ。
「テオ!?いつの間に?」
「ライが1体目を倒したすぐあたりぐらいかな?」
「テオの方もうまくいったんだね?」
「おう!あんだけ的が大きかったら何でも当たっちまうからな!ちょっと硬かったけどな」
「さすがドラゴン族だね~!おっと、いけない!兵士さんたちが倒れてるから回復魔法をかけてあげないと!」
「そうだな!手分けしてやるぞ!」
「うん!」
ボクとテオは倒れてる兵士さんに回復魔法をかけることにした。しかし···、もう息をしてない人が多かったよ···。それでも、助かる見込みの人には回復魔法をかけて一命をとりとめることはできたよ。これぐらいしかボクにはできないけど···。
ここの戦場での手当てがほぼ終わった頃に、別の兵士さんから声がかけられた。
「キミたち!これはキミたちがやったのか!?」
「あっ、はい。魔獣は全滅させました。倒れてる兵士さんたちの治療もしたんですけど···、全員は助けられませんでした···。ごめんなさい···」
「そこまでしてくれたのか!?···少し話が聞きたいんだが、いいだろうか?」
「はい。でもその前に、他の場所の兵士さんたちも回復魔法かけますよ?まだ魔力に余裕があるので。テオもまだいける?」
「大丈夫だぜ!」
「そうか···。じゃあ、案内する。ついてきてくれ!」
ボクたちは兵士さんの後をついていった。最初にテオが降り立った広場の近くにあった大きな建物に入ると、中では多くの兵士さんや住民たちが傷ついて横になっていたよ。
「こんなにも···」
「数が多すぎて治療が追いついておらんのだ···。いけるか?」
「テオはどう?」
「これはさすがにムリがあるぞ···。せめて重傷者を優先で傷をふさぐぐらいで軽くかける程度なら···」
「それで構わない!頼む!」
「わかりました!できる限りやってみます!回復魔法をかける人を選んで連れてきてもらっていいですか!?」
「わかった!」
兵士さんたちが重傷者を選別してボクとテオがいるところまで担架で運んでもらい、ボクとテオが魔法をかけて治療するという流れになった。
この方法は遺産の知識にあったんだ。『トリアージ』って言うらしいね。アキさんはホント、なんでも知ってるなぁ~!
治療は順調に進んだ。だけど、今でも運び込まれてくる人がいるんだ。どうも崩れた建物の下敷きになっていたらしい。
なかなか終わりが見えない···。ボクとテオの魔力もそろそろ限界が近くなってきた。額に汗を浮かべつつも、なんとかやっている感じだったよ。
ちなみに蓄魔の腕輪の魔力はないんだ···。それもすでに回しているというのもあるんだけど、先日のスタンピードで魔力を全部使い果たしちゃってたので、まだ貯まりきってない状態だったからね。
そして、最後の一人の治療が終わったところで、ボクとテオは魔力が完全に切れてしまって倒れてしまったんだ···。そこからの記憶が一切ないんだよ···。
そして、目が覚めたら···。知らない天井が見えた。···え?ここはどこなの?
左右に首を動かすと、右側にテオが寝ていた。どうやら同じベッドに寝かされていたようだね。まだテオは寝てるので、起こさないようにボクは起きた。
···なんか豪華な部屋だったよ。床にはじゅうたんが敷かれているし、ベッドも3人一緒に寝れるぐらいの大きさがあった。今は誰もいないようだ···。
これ、勝手に部屋から出ていいのかなぁ~?そんな事を考えていたら、扉が開いたんだ。
「あら!やっと起きたわね!」
「え···?もしかして、アス···?」
「そうよ!良かったわ~!もう3日も起きなかったから、どうしようかと思ったわ···」
「えっ!?3日もボクたち寝てたの!?」
「そうよ···。ありがとう。町を助けてくれて···」
「いや···、でも···、助けられなかった人もいたよ···」
「それでも、多くの人を助けてくれた···。命をなくしかけた人もいたはずよ?その人は助けることができたんですもの」
「···ありがとう。そう言ってくれるとありがたいよ。そうそう、ここはどこなの?アスの家?」
「そうね···。この町の···、領主の家ね」
「えっ!?アスって、偉い人の子だったの!?」
「まぁ、そうね···。ママと逃げるように言われて川沿いの道を逃げてる途中で魔獣に襲われちゃって、わたしだけ川に落ちてしまったのよ···」
「そうだったんだ···。お母さんは無事だったの?」
「軽いケガで済んだみたい。後で知ったけど、魔獣たちはわたしたちが行くつもりだった避難所をその後に襲ったみたいだったのよ···。多くの人たちが生き埋めになっちゃって···」
「············」
「運が···、良かったのかしらね?川に落ちて溺れてしまったけど、ライに助けられて町も助けてもらった···」
「そう···、かもね」
「「············」」
ちょっと重苦しい雰囲気になっちゃった···。どうしたらいいのかなぁ~?そう思ってたら扉がノックされて、男の人が入ってきた。
「おお、起きたようだな。アスがなかなか戻らないから、何かあったのか心配になって見に来たのだが···」
「パパ!」
ということは、この人がこの町の領主様って事かな?
前作でもそうでしたが、この世界では医学がほとんど発達していません。
それは、回復魔法で外傷については欠損以外は治ってしまうからです。欠損も強烈な回復魔法で治せてしまいます。
ちなみに病気は治せません。そもそも病死自体が稀なんです。というのも、魔獣に襲撃される確率が非常に高く、平均寿命も40代後半ぐらいなんですね。
災厄戦争前はかなり伸びた平均寿命も、文明の崩壊と魔獣襲撃の激化によって短くなってしまってます。
今回もかなりの被害が出てしまいました。ライくんは村を滅ぼされたという強いトラウマがあるため、こういった救助活動はためらいません。できうる限り救ってみせる!という考えはそこから来てるんですね。ライくん自身は気づいてませんけどね。
さて次回予告ですが、アスちゃんが領主の娘だったとのことで、この町の領主さんとお話をすることになります。その前半部分なのですが、どんな話なんでしょうね?
それではお楽しみに〜!




