2-2.道に迷っちゃった···
港町ボードに向かう道中、歩いていたら着かなかったので、お昼に通った廃墟の村に戻り、そこで野宿することにしたんだ。
思ってたより遠いみたいなんだよ。どれぐらいかかるか聞いてなかったしね。道も荒れてたから、人通りがないのかもね。
本当は魔獣を退治しながら行きたかったんだけど···。このままじゃいつまでもたどり着けそうにないので、明日はテオに乗せてもらって飛んで行く予定にしたんだ。
次の日···。雨が降ってきた···。
「これじゃあ飛んでもライが濡れちまうなぁ〜」
「テオは濡れないの?」
「竜モードならもふもふだっただろ?毛皮が雨を弾くんでな」
「なるほどね···。ボクだけずぶ濡れになっちゃうね」
「カゼひくから、今日は諦めてここでのんびりするしかないな」
「そうだね···。あっ!」
「ん?どうした?」
「遺産の知識で、雨を弾く魔法があるんだって!」
「へぇ~。便利な魔法があるもんだなぁ〜」
「ちょっと待ってね···。ふむふむ···。なるほど···。こうかな?」
ボクは遺産の知識のとおり、雨を弾く魔法を試みた。どうも防御する時のバリア魔法の一種のようだね。使った事がない魔法なんだけど···、これでいいのかな?魔力で薄い壁を体の周りに出すような感じで···?イメージが難しい···。
「ライ?大丈夫か?」
「···うん、大丈夫。ちょっと試したいから、外でやってみるよ」
「難しそうだったらムリしなくていいからな!」
「うん!」
とりあえず外に出てみた。雨が降ってるけど、濡れることはなかった。
···うん!成功だ!ちょっと魔力消費が大きいんだけど、遺産の知識によればイメージがしっかりしてきたら消費量は減るみたいだね。『慣れ』ってことかな?
「テオ!できたよ〜」
「さすがライだぜ!じゃあ行くか?」
「そうしたいけど···、霧が出てきたよ」
そう、天気がさらに悪くなって霧まで出てきちゃったんだ···。
「これは飛ぶと危ないな。前が見えないんじゃ、ぶつかるかもしれないしな」
「それもそうだね。今日はテントでのんびりしておこう」
こういう日もあるんだね。スマホの天気予報アプリってのが便利って言ってたから、これも使うようにしよう!
明日は···、いい天気のようだね!じゃあ、明日出発だ!
翌日···。
「おはよう、テオ!」
「おう!おはよう、ライ」
「いい天気になったよ!朝食食べたら行こうか!」
「そうだな!」
外に出て軽く朝食を作った。お茶にパンを軽く火であぶってから少しだけ蜜をかけるとおいしかったよ~!
「それじゃあ行くか!」
「うん!テオ、よろしくね!」
「おう!つかまってろよ~!」
テオは竜モードになってゆっくりと飛び立った!やっぱり空の旅は気持ちいいね!高く上がれば上がるほど、遠くが見えるんだ!
飛び始めてから1時間。カソドさんに南に行ったら港町のボードがあるって言ってたんだけど···、まだ見えなかった。
「おかしいなぁ~?そんなに遠いって言ってなかったよな?」
「そうだよね~。もしかして、道間違えた?」
「道って···、飛んでるから関係ないだろ!?」
「じゃあ、方角かな?南はこっちであってるはずだけど?」
「お日さんが真南になったらお昼だろ?今はまだだから、若干左にお日さんがあったら間違いないだろ?」
「そうだけど···」
···うん。どうやら道に迷ってしまったようだ。飛んでるなら下見たら道があるって思うでしょ?途中で道が見えなくなっちゃったんだよ···。元から荒れてたから、周りの風景と同じになっちゃって判別できなかったんだ···。こっちじゃないのかな?
もう一度カソドさんの話を思い出そう!『この町の南に』って確かに言ってたよね?それで南の方角へ飛んでるんだけど···。あれ···?
「もしかして···、カソドさんは『この町の南に』って言ってたのは『町の南から出ている道を行くと』って事かな···?」
「···あ!」
「そうだとしたら、その道が途中で別の方向へ行ってたら···」
「方角が南じゃないって事か!?」
「あ~!そういう事か!ボクがテオに乗って飛ぶって考えてなかったんだ!」
「どうするよ?いったん戻るか?」
「う~ん···。まぁ、別にいいかな?ボードの町に必ず行かないといけないってわけじゃないしね。近い町ではあったんだろうけどさ」
「それもそうだな~。で?方向はこっちでいいのか?」
「うん!どこでもいいや!せっかくこうしていろんなところを見れるんだしね!」
はい、方針転換しました!特に用事があるわけじゃないし、次の次に行く!って感じでいいんじゃない?
そのあと2時間テオはまっすぐ南へ飛んでくれた。
町が見当たらない···。いや、町や村はあったんだよ?全部廃墟になっちゃってたんだよ···。
空から見ても、家が壊れ、柵や門が壊されているのが見えたんだ。こんなにも魔獣たちに滅ぼされてるなんて、考えもしなかったよ。
もしかして···、人が住めるような町なんて、もうほとんどないのかな···?
そんな事を考えていたら、おなかが空いてきたよ。そろそろテオも疲れてくる頃だろうね。
「テオ?どこかに降りて昼食にしようか?」
「そうだなぁ~。おっ!?この先に川があるぞ!そこで休むか?」
「そうだね。そうしようか!」
テオが向いている先には大きな川があった。速度を落として川の近くに来るとそこそこ広い川岸があったので、そこでお昼休憩にする事にしたんだ。
「ふぅ~。こんなに長距離飛んでるのに町や村があっても、人が住んでるところがなかったな~」
「ホント、びっくりだよ···。こんなにも魔獣が襲ってるなんてね···」
「あの悪神のせいだろうな···」
「全部がそうとも限らないと思うけどね。スタンピードでなくても、カパーの町みたいに強い魔獣が単独で襲ってくることもあるみたいだしね」
「確か、町より大きい『国』ってところもあるんだろ?カソドさんは何も言ってなかったよな?」
「そうだね。遠いからかな~?」
う~ん···。こんなに町や村がないと、どこに行ったらいいのかわかんなくなってきちゃうよね?
さて、今日の昼食はまたまたボクの手料理にしたんだ。町で買った卵を使うんだけど、フライパンにちょっとバターをのせて、お肉を軽く焼く。そして、焼けたお肉をといた卵につけてもう1回フライパンで焼くんだ。遺産の知識にあったアキさんの料理で『ぴかた』っていうらしいよ?
「これ、いけるな~!」
「うん!おいし~!」
遺産の知識には料理のレシピまであるのはありがたいね!アキさん以外の料理レシピもあるんだよ。それは···、アキさんの娘さんの料理らしいよ?今度挑戦してみようかな?
今休んでいる川岸のそばの川はかなり大きかった。流れもゆっくりだったので、ここなら魚釣りができそうだったからやることにしたんだ。もちろん、釣り竿は無限収納カバンに入ってたよ。
釣り方も遺産の知識にあった。ホント、アキさんはいろんな事を知ってたんだなぁ~。ありがとうございます!
「おっ!?釣れた~!大きいよ~!」
「すげー!ライ、大物じゃんか~!」
「テオも結構大きなお魚釣れてたけど、どっちが大きいかな~?」
「オレだろ!?ほら!」
「···一緒ぐらいじゃない?」
「いいや!オレの方が大きいって!少しだけどな!」
「「ははは!」」
たくさん釣れたんだよね~。夢中になっちゃって、日が暮れるまでやったんだ。もちろん、無限収納カバンに入れたので、いつでも食べることはできるよ!
結局この日はここでテントを張ることにしたんだ。夜に飛んでも見えないからね。
今日の夕食はもちろん、さっき釣ったお魚だ!遺産の知識によれば、釣った魚はその場で塩焼きにすると最高!ってことなので、串に刺して肉焼きセットでじっくりとこんがり上手に焼きました~!
たき火を眺めつつ、のんびりした後で寝ることにしたんだ。寝る前に川で顔を洗おうとしたその時だった!
「···ん?···え?」
川に何か大きなものが浮いていたんだ···。なんだろう···?ボクは身体強化魔法で視力を強化して見てみると···、人だった!!
「テオ!誰か流されてる!」
「なんだって!?」
これが、のちのち大きな事件に巻き込まれるきっかけになっちゃうんだよね···。
道に迷った理由は空を飛んでしまったからでした!
実はこれ、作者の昔の実話です(笑)。
道を尋ねたんですけど、『ここをまっすぐ行って突き当たりを右』の通りまっすぐ行ったんですが、たどり着かなかったんですね。
後で気づいたのですが、その道は途中でYの字で分かれてまして、広い道の方を行ったんですが、狭い道が正しかったんですね。Yの字分岐でまっすぐって言ったら広い道に行きますよね〜。
要するに説明不足と思い込みで道に迷ってしまったんですね(笑)!今ではGoogleマップで迷わず行けるようになりました。カーナビにしたら狭い道案内されてえらい目に遭いますけど···。
さて次回予告ですが、川に流されていた少女を助けて事情を聞くと、住んでた町が魔獣に襲われたとの事でした。ライくんはすぐに救助に向かおうとしますよ〜!
それではお楽しみに〜!




