1-26.ダイナモの町、その後
本日はこのお話で第1章が完結するためにネタバレ集も込みで3回投稿となっております。
このお話は2話目、第1章完結のお話です。朝に1話投稿していますので、先にそちらをお楽しみください。
···ワシはアノド。もういつ死んでもおかしくない年寄りじゃ。
この世界ではワシのような年寄りはほとんどおらん。度重なるスタンピードで、殺されてしまうのは力ない年取りと子どもばかりじゃ···。
ワシは若い頃にそれなりの実力が身についていた···。そのおかげで今もこうして生きながらえているんじゃよ。
単にそれしか才能がなかったとも言えるがの。ホッホッホッ。
ワシが少年だった頃、村がスタンピードに襲われた。ワシはたまたま近くの川で釣りをしておったので、難を逃れたのじゃ···。
そして、たまたま通りがかった冒険者に助けてもらえた。今思えば運が良かったとしか思えんな。
その冒険者は親切じゃった。剣術や魔法も教えてもらえた。そしてワシも冒険者になって、とある武器を発見してからいつの間にかSSランクなんてもんになってしまったのじゃ。ランクなんてどうでもよかったんじゃがなぁ〜。
ただひたすら魔獣を狩り、ダンジョンを潰しておった。仲間に犠牲者が出た時は···、今でも思い出すと悔しい思いじゃ。
一度瀕死の重傷を負ってしまい、もはやこれまでかと思ったその時に金竜のドラゴン族に助けてもらったのじゃ。
その金竜は『気にすんな!困った人を助けるのもヒーローの役割だからな!気をつけろよ〜!』と言って、ワシを回復させたら飛び去っていったなぁ〜。ワシは助けられてばっかりじゃったわい。
そして、ある日に世話になった町が戻ったら滅ぼされておった···。
ワシは後悔した···。しかし、それは運命だったとしか言いようがなかったわい···。
その時に決心したのじゃ。『魔獣が来ても大丈夫な町を創ろう!』とな。
それまでにいろんな知り合いができておったので、材料手配や場所の選定はあっという間じゃった。これまで蓄えていた財産は使い切れないほどじゃったしな。こういう事に···、『ワシの夢』に使うのも悪くはない···。
足掛け20年でダイナモの町が出来上がった···。仲間が呼び掛けて多くの避難民たちを受け入れ、正式に町として息づいた瞬間じゃったなぁ〜。
町を創っている間、世界情勢はさらにひどくなった···。想定以上に滅ぼされており、当初の計画の倍以上の避難民が来てしもうた···。
想定外だったのは、つい最近にこの近辺で鉄壁と言われたゲートの国が滅ぼされたのだ···。逃れられた住民はわずか···。
ダイナモの町はそこまで鉄壁ではない···。ここも時間の問題じゃろうか···?
絶望感もあったが、運良く今まで大したこともなく存続できたのはありがたかったのぉ。
そんなこの町にも、ついにスタンピードがやって来おった。しかし、その直前にあの子たちがやって来た。
最初見た時はなぜこんな子が宿に?と思ったわい。しかし、その子の放つオーラとも言うべきか···、強者の雰囲気がしておった。
しかし、どう見てもド素人···。バランスが非常におかしかったのぉ···。まるで何かの強大な力を授かったような···。
こりゃ危ないと思って説教してやった。この子も村を滅ぼされたそうじゃ。ワシに似とるのぉ。
これも何かの運命と思い、冒険者に推薦してやった。ワシにできるのはこの程度だからな。
そしてスタンピードが来た。ワシも老い先短い身だし、せっかく創った町が破壊されるのは我慢ならんかった。せめて一太刀でも!と思ってな。
すると、竜が北へ飛んでいった。テオじゃな?ということは北から来るのか?
ワシも急ぎ向かうと、すでに始まっておった。門には誰もいなかったので、壁の上に出てスタンピードを見たが···、巨大な落とし穴に沈んでいく魔獣、それにドラゴンブレス、あとはライの···、見たことのない剣術と殲滅魔法じゃった···。まさか、失われし古代剣術と魔法なのか···?
さすがのワシも震えたの···。壁の外は文字通り血の海となっておった···。
そして悪神···。よもやあんな者がおったとは···。
この状況を、ギルドに戻ってから首脳会議で伝えた。カソド、イグニス、ポーラ、バンドの4名は中央から派遣された、信用できる者たちじゃ。
「というわけじゃ」
「···信じられませんが、私はアノド様がウソをおつきになるとは思えません」
「まさかスタンピードが神の力によるものだったなんてな···」
「でも、それに対抗したライくんは···、まさか!?」
「うむ。ポーラの想像通り、神の力を持っているのだろう。名は···、『賢者の遺産』とあの神は言い切っておったわい。おそらく『神々の遺産』の一つじゃろう」
「『賢者の遺産』···。だからあのガキは神器を複数持ってやがったんだな···」
「バンドよ。そういう事じゃ。ほんと、ワシが説教した通りになってもうたわ···。事前に注意しておいたが···、回避できなんだな」
「スタンピード殲滅はライがやったってウワサにはなってないが、『幼い子が殲滅した』、『兵士は何もしてない』なんてウワサが広まっちまってるぜ···。見たことないのによ···」
「無理もあるまい···。みんな死を覚悟していたのに、あっさりと殲滅したと言われれば、その落差は大きすぎるからな···」
「兵士が混乱してライを殺そうとまでしたのじゃ···。この混乱は、しばらく収まりそうにないのぅ」
「やはり、ライには···」
「うむ。カソドの思う通り、ここを出た方が良さそうじゃ。良からぬことを企むヤツがかなりいそうじゃぞ?」
「わかりました。私から話しておきます」
「すまんの···。この町を救った小さな英雄に対して、この仕打ちをせねばならぬとは···」
「それを抑え込むのは私の町長としての仕事です。あまりアノド様が気に病む必要はありません。あと、よろしければ助力をお願いできますか?」
「こんな老いぼれで良ければな」
「十二分過ぎますよ···。『救世』の異名を持つアノド様がいるだけでも力になるのですから···」
そうか···。まぁ、死ぬまで利用されるとするかの。この町が続き、避難民に必要とされるのであればな···。
一方、天国では···。
『あ、あれがライ···、なのですか!?』
『あんなに強くなって···』
『うん、ボクの遺産の力が発揮し始めてるね』
『でも、まだまだだなー。あの力はもっとすごいんだけどなー』
『リオ。でも、ライくんはカークくんの魔法を使ってたね。あれって結構魔力消費激しいのに、よく連発したもんだよ···』
『あとは合体変身できたらなー。テオとならできそうなんだけどなー』
『う〜ん···。あれって魔力が魂レベルで融合しないといけないもんね。ちょっとムリかもなぁ〜』
『できたらあの程度のスタンピードなら大丈夫なんだけどなー』
『まぁ、焦らず見守ろうか?それしかボクたちにはできないしね』
『そうだなー』
『アキさん?ライは···、まだ強くなるのですか!?』
『はい。遺産の力はこんなものじゃないですよ〜』
『オレも協力したからなー。もっといろんな魔法を使えるようになるぞー!』
『そ、そうですか···』
『ライ···。すごい運命になってしまったわね···』
ご両親はスタンピードを殲滅しちゃったところを見てびっくりしてたね。でも、まだまだこれからライくんは強くなるからね。
キミがどういう未来を選択するか、楽しみに見させてもらうよ!
第1章 完
アノドさんはかなりの高齢ですが、今でも戦闘は可能です。全盛期に比べてかなり戦力は落ちてるんですが、そこらのCランク以上の実力はまだあるんですね。これにも秘密がありまして、持っている特殊な武器のおかげというのもあるんです。この先で判明しますよ~。
そして天国からはライくんの両親とアキくんたちがちゃんと見ていました!なんというか、駅伝の中継車に乗って解説してるような感覚ですかね(笑)!実況がお話ということで!ある時こんな風に考えてしまってからは、小説を読む時はそういう見方しかできなくなってしまった作者でございます。
今後も駅伝の中継のようにちゃんとライくんたちの活躍の実況と解説をしっかりできるように執筆してまいります。リタイアしないように気をつけます!
この後夜にネタバレ集を投稿して第1章は完結となります。それではお楽しみに~!




