1-25.次の町へ向かおうか!
本日で第1章完結なので、本編2話とネタバレ集を投稿します!
アノドさんがお見舞いに来てくれた。しかも、スタンピード討伐のシーンを全部見られちゃってたね。
力を見せつけない方法···、これは後でテオと相談だね。もう···、あんな言葉は聞きたくないし···。
「テオ。カソドさんのところに行こうか」
「もういいのか?」
「うん、もう大丈夫。さすがに今からスタンピード討伐はムリだけどね」
「そんな冗談言えるなら大丈夫そうだな。じゃあ、行くか!」
ボクは部屋を出てカソドさんの部屋の扉をノックした。
「入れ」
「失礼します」
「来たな。そこに座りなさい」
ボクたちがソファに座ると、カソドさんは対面に座った。
「さっきアノド様がお越しになった。話は聞いたな?」
「はい」
「では、私からキミたちに伝えることがある」
ちょっと緊張するなぁ〜。まぁ、怒られるだろうとは思うけどさ。
「まずはご苦労だった。結果的にこの町は救われた。ただ···、もうこの町にはいないほうがいい」
「え···?」
「アノド様からも聞いただろう?今回の件で下の連中、そして町のものまでキミたちの話が広がってるんだ。どういう話かは···、言うまでもないな?」
「···はい」
「みんな、キミの実力があまりにもすごすぎて怖がってしまっているんだ。悪く思わないでほしい、というのはムリだとは重々承知している。そして、兵士への不満も噴出しているのだ。『小さな子どもが撃退したのに兵士は何やってたんだ!?』とな」
「そんな!?兵士さんたちは必死でした!」
「その場を見てないから、みんな勝手な暴言の妄想に踊らされてるのだよ。ムリもない。これほど混乱した事は今までなかったのだからな。命の危険があったから、混乱はなおさらひどい」
「そんな···。みんな頑張ったのに···」
「ライ、これが現実なのだ。人の最も醜い部分なのだよ···。わかってくれとは言わんが、人が集まるとこういう事も起こるのだ」
「············」
「ここにキミたちを連れてきたのも、外がそういう状況なのでね。彼らも悪気はないのだ。しばらくすればこの騒動も落ち着くだろう。しかし、それまでここに閉じこもっていても仕方あるまい。準備でき次第、深夜にここから出なさい。南門に着いたら、そこで休めるよう手配してある。この手紙を見せなさい」
「···はい」
「それと、今回の功績をもってCランクとする。あと、もしギルドの中央本部に行くことがあれば、この書状を提出しなさい」
「···これは?」
「今回の騒動の報告書と、キミたちを『Sランク』に上げるよう推薦状だ」
「え!?Sランク!?」
「私がキミたちにしてやれるのはこの程度だ···。Sランクであれば、キミたちの実力が正式に認められるから、今回のような事は多少は防げるだろう。アノド様は『力を見せつけるな』と助言されたが、こういう方法で逆に力を見せつけることで身を守る方法もあるのだ。どちらを選択するにせよ、手札は多いに越したことはない」
「ありがとう···、ございます」
「あとは報酬だな。持っていきなさい」
「···いえ、これはこの町のために使って下さい」
「···そうか。では、半分持っていきなさい。持っていて困るものでもあるまい。ましてやその神器のバッグがあれば問題なかろう」
「わかりました」
「ここからさらに南に行くと、港町のボードがある。こことほぼ同じぐらいの町だ。ここぐらいの規模の町でないと、もはや存続できなくなってるからな」
「わかりました。本当に···、お世話になりました」
「力になれず、申し訳ない。落ち着いた頃を見計らって、また寄ってくれ」
「はい!ボクの村に戻る時の通り道ですから!」
こうしてボクたちはダイナモの町を深夜に出発することになった。
夕食は、ポーラさんとイグニスさん、バンドさんと一緒にギルドの裏で食べさせてもらった。みんな、ボクたちを心配してくれてたんだ···。嬉しかったよ!
そしてみんな寝静まった深夜、ボクはテオに乗せてもらって南門へ向った。こっちは初めて来たね。
あっという間に南門に着いた。ここにも避難民の方が大勢いるようで、粗末な建物···、と言えないものが密集していたよ。
深夜だから誰も起きてなさそうだ。そう思って着陸すると、声をかけられた。
「おや?ボウヤじゃないかい?どうしたんだい?こんな時間に?」
声をかけてきたのは北門にいた人だった。ボクに最初に声をかけてくれた人だった。
「···こんばんは。今からボクたちは町を出ます。お世話になりました···」
「···そうかい。ボウヤ、スタンピードを討伐してくれたそうだね?」
「···え?」
「ウワサで聞いたさ。幼い子がスタンピードを撃退したってね。すぐにボウヤだと気づいたさ」
「はい···。ボクは···」
「ありがとね。それと···、つらい目に遭ったそうだね」
その人はボクが言葉を言う前に抱いてくれた···。
「あんたのおかげで、私たちは生きてるのさ。誰が何と言おうと、私はあんたの善意がよく分かってるさ。あんたの行動で勇気づけられた人は多いんだ。それを伝えれてよかった···。これからも気をつけていくんだよ」
「···は、はい!ありがとうございます!」
勇気づけられちゃったね···。なんだか心が温かくなったよ···。
そして、南門に着いた。手紙を見せたら、親切に部屋へ案内してくれた。2段ベッドがある小部屋で朝まで休ませてもらい、早朝にボクたちは門の外に出た。
その時、門の兵士さんが全員出てきたんだ。
「偉大なる幼い英雄に!感謝を込めて、敬礼!!」
なんと、敬礼してくれたんだ···。兵士さんたちの感謝の印だったんだよね···。そして、ボクたちが見えなくなるまで、見送ってくれたんだ···。
「テオ。ここの人たちは優しい人が多かったね」
「そうか〜?オレとしては結構腹立たしかったけどな」
「まぁ、そういう人もいたけどさ。ボクはこの町でたくさんいい勉強になったよ」
「そうか···。あとは力を見せつけない方法を考えないとな」
「それなんだよね〜。どうしたらいいんだろう?」
「変装するか?」
「背の高さでバレないかなぁ〜?」
「仮面をつけるとかは?」
「一緒じゃない?」
「ん〜〜」
「ボクとしては遺産の知識にある合体変身魔法がいいと思うんだけどね」
「でも、それって前にやっても成功しなかっただろ?」
「そうなんだよね〜。どうやったらボクとテオでできるようになるのかなぁ〜?」
「遺産の知識にはないのかよ?」
「なんだかあるっぽいんだけど···、見ようとしたらモヤがかかってよくわかんないんだよね···」
「アキさんは隠したいのか?」
「それもなぁ〜。今度遺産の知識が話しかけてきたら聞いてみるよ」
「そうだな。そうそうスタンピードなんて出くわす事はないだろうしな!」
「あはは。ボクとしてはあんまり出会いたくないなぁ〜」
「誰だってそうだって!」
「「あはは!!」」
「さて、行くか!」
「うん!次はどんな町かなぁ〜?」
こうしてボクたちはダイナモの町を出発し、次の目的地である港町ボードへ向けて歩き出したんだ。
ライくんたちは町を出ることになってしまいました。状況が状況だけに残念な結果になってしまいましたね。
しかし、この町にはこの後も何度か訪れることになります。その時には状況は好転してますのでご安心ください。今は非常事態で大混乱であるだけなんです。
ちゃんとライくんに感謝している人もいます。ライくんの事をちゃんと理解してくれているからなんですね。こういう人たちはライくんの心の支えにもなってるんですよ。
ライくんは今後どう対応したらいいのか?を考えてますが、前作のアキくんとリオくんのような合体変身魔法を使いたいと考えていますね。前作ではアキくんは着ぐるみ姿で恥ずかしがっていましたが、ライくんは抵抗感がまったくないようです。お話も大好きだったそうですしね!今後登場するかはご期待ください。
さて次回予告ですが、ライくん視点のお話ではなくてアノドさんの視点でのお話です。どのようにライくんを見ていたのでしょうか?
そして今後完結時には天国からライくんの両親とアキくんたちの視点のお話が入ります。
次回は本日昼休みあたりで投稿いたします。それではお楽しみに~!




