1-22.北門での攻防
ついにスタンピードがやって来てしまった!でもまだ壁からかなり遠い位置だ。ちょっと距離があるけど、もうちょっとで射程範囲に入る。
テオは竜モードになった。兵士さんたちが驚いてるよ。ボクはテオに乗って、飛び立った!
「テオ!このまま横に回り込んで!ボクの落とし穴の魔法で足を止める!そしたら兵士さんたちは矢を撃ち放題だ!」
「了解!掴まってろよ。旋回するぜ!」
テオは一気に急旋回して、正面にはスタンピードの先頭が右側に見える!
ここでボクは落とし穴魔法を使った!ちょっと深めにしてるよ。これ···、結構魔力が持っていかれる!
そして長さ300m、幅10m、深さ10mぐらいの落とし穴を作り出せた!掘り出した土は落とし穴の門の側へてんこ盛りにしておくよ!そしてそこに魔獣たちがなだれ込んできた!
ヒューーン!グシャッ!!
思った通り!先頭集団はどんどん落とし穴に落ちていった!止まろうにも後方からまだまだ押し寄せる魔獣たちに押し出されて止まることも避けることもできずに落とし穴にハマっていった!
落とし穴の幅もかなり広いから、先頭集団を踏んづけてもまだまだハマり続いていった!先制攻撃はかなり有効だったね!さすが賢者···、アキさんの知識だよ!
しかしそれももって10分ぐらいだった。落とし穴がもう少しで魔獣で満杯になってしまい、落とし穴を乗り越え始めたんだ!
そこで兵士さんたちが矢を放ち始めた!先頭集団が転倒して後方は将棋倒しになったけども、勢いが止まらずに踏み潰しながら、なおも前へ進んでいった。
もちろん、ボクも土魔法のアースランスで迎撃だ!掘った土があるから、消費魔力量は少なくて済むよ!
「やっぱりこの程度じゃムリか···」
「おいおい!?それでもかなり倒したぞ!1000近くはいってるんじゃねえか?」
「テオ!後方を確認したい!後どれだけかを見たいんだ!」
「了解!」
テオはスタンピードの後方へ飛んでくれた。長さは···、200mぐらいかな?
確認を終えて、ボクたちは外壁へ戻った。
「すごいじゃないか!あの落とし穴のおかげでかなり倒せたよ!」
「矢も撃ちやすかったぜ!狙う必要ないもんな!」
兵士さんたちから感謝されたよ。でも、本番はこれからなんだ!
「後方あと200mぐらい魔獣がいます!ここから壁を乗り越えられないようにしないといけません!どんどん遠距離攻撃で倒しましょう!」
「「「「おう!」」」」
「テオ!ブレスってあと何回撃てるの?」
「強さにもよるけど全力なら10発はいけるな!」
「なら、それは魔獣たちが外壁を登りそうになったら放って!通常攻撃はなしで!」
「いいのか!?」
「テオのブレスはとっておきなんだ!他で消耗したら使えないでしょ?」
「わかった。ライもムリすんなよ!」
「うん!」
さて、次の攻撃は可能な限り魔獣を壁に近づけさせないことだ。力を隠してる余裕なんてない!
ボクは魔力剣を取り出した!魔力をめいいっぱい込めると、刃の色がいつもの緑よりさらに濃くなっていく!
「いくぞーー!!秘技!弦月斬!!二重!!だぁああーーー!!」
ボクは腰だめで思いっきり魔力を込めて、一気に振り抜いて斬撃の1発目を放った!振り抜いて戻す際に魔力剣を両手で持ってもう1回斬撃を振り戻しながら放った!
時間差で出した斬撃が魔獣を真っ二つに引き裂いていき、遅れてやってきた斬撃が後方の魔獣を真っ二つにしていった!
「まだまだぁーーー!秘技!弦月斬!二重!!」
今度は別方向の魔獣へ斬撃を飛ばした!
「はあっ!はあっ!!ま、まだまだぁーー!」
「ま、待て!!」
「兵士さん!?止めないで!!」
「待つんだ!あんな大魔法や大技を連発してたらもたんぞ!まだまだ後ろにもいるんだろ!?キミはよくやってくれた!少し休むんだ!!」
「でも!!」
「いいか!?キミは1人でやってるんじゃないんだ!我々もいる!キミが休んでいる間は我々に任せるんだ!いいね!?」
「···ぐっ!わかりました···」
ボクは少し下がって座り込んだ。それを見てテオが近寄ってきたよ。
「ライ!無茶し過ぎだぜ···。あんな大技、そんなに長く続けられないだろうがよ···」
「わかってる···。でも···!」
「いいか?まだ半分も倒せてないんだ。先制攻撃は大成功だった。でも、大変なのはこれからなんだぜ?」
「···うん」
わかってるよ、それぐらい···。でも、スタンピードはボクの村を滅ぼしたんだ!なんとしてでも···、ここは守りきりたいんだ!
兵士さんたちは必死にありったけの矢を撃っていた!でも、押し寄せる魔獣の数にあまり対応しきれていない···。あっという間に壁に魔獣たちが張り付いてしまった!
ドーーーーン!!
魔獣たちが壁に体当たりをした音が響き渡った!そこそこ揺れたよ···。今のところは壁を崩されてる個所はないようだね。
予想通り後ろから魔獣がどんどん押し寄せてくるので、最初に体当たりをした魔獣は踏みつぶされていった···。こいつら、仲間意識なんてないんだな···。とにかく突き進むしか考えていないんだ···。
そしてどんどん魔獣たちが壁際に積み重なっていった!乗り越えられそうになったその時!
「させるかよーーー!ガァアアアーーーー!!」
テオがナイスタイミングでブレスを吐いた!壁際に張り付いていた魔獣たちはブレスに飲み込まれて吹き飛ばされてしまった···。すごい威力だ!さすがドラゴン族だなぁ~!
しかし、魔獣たちは怯むことなく、再度壁に取り付いてしまった···。まだまだ後続が見えているから、キリがない···。これが···、スタンピードの恐ろしさというものなんだ···。
「クソッ!もう矢が尽きちまった···」
「あれだけ用意していたのに、もうなくなっちまった···」
「まだ···、やって来るぞ!?」
まずい!兵士さんたちの矢がなくなってしまったみたいだ···。これ以上は壁の上から攻撃ができない!
「怯むな!壁を乗り越えようとしたところを叩き落せ!まだまだやれることはあるんだぞ!」
隊長さんらしき人が声を上げていた!これ以上は休んでられないね。ボクも出る!
その時、テオが2発目のブレスを吐いた!とりあえずまだ乗り越えられてはいないけど、それでもまだまだ魔獣は押し寄せてきている。
「皆さん!ありがとうございました。ここからはボクもやります!」
「大丈夫なのか!?ムリするんじゃないぞ!」
「はい!次は魔法でなんとかします!」
ボクの右腕には遺産の一つである蓄魔の腕輪がある。ここに来るまでにすでに満タンだったから、魔法ならまだまだいける!
今度は広域殲滅魔法だ!一度も撃ったことはないけど、テオのご先祖様が得意としていたらしいね!これで一気に決める!
「ライ!?また目が金色に···!?」
「うぉおおーーー!アイスペタルダンシング!!」
テオが何か言ったけど、気にしない!ボクが魔法を使うと周囲が一気に冷え込み、空中には細かな氷の刃が煌めいていた。その刃が魔獣に襲い掛かる!
氷の刃の嵐が目の前から奥に向けて進んでいった!通り道には赤い華が咲き乱れるように魔獣たちを切り裂いていった!
「ライ!そんな大魔法使って大丈夫なのかよ!?」
「はあっ!はあっ!!だ、大丈夫!まだ···、蓄魔の腕輪に魔力が残ってるから···。テオのご先祖様の···、お気に入りの魔法ってすごいね」
「初めて見たけど、すごい威力だな···。見た目もド派手だし、ご先祖様が気に入るわけだぜ···」
これで半数以上は倒しきれた!あと···、もう少しだ!!
1対多数戦の場合、接近戦だと数の暴力ですぐに潰されてしまいます。そのため、相手する場合は広域殲滅魔法で遠距離攻撃するとか、今回のように落とし穴を掘って自滅に追い込むなどの対策が必要です。
壁も、敵の勢いを止める事と敵の上方から一方的に攻撃するためにあるんですね。壁を突破するためには破城槌や大砲などの質量兵器を使用するか、矢などで攻撃して手薄になったところにはしごをかけて強行突破するのが一般的ですかね?
今回は空を飛ぶ魔獣がいなかったのが幸いでしたね。いた場合は非常に不利な状況に追い込まれてしまいますからね。
今回ライくんが使ったアイスペタルダンシングは前作の番外編と続編で登場した魔法ですね!リオくんの孫たちが得意とした魔法ですね。ちゃんと賢者の遺産の知識にありました。
さて次回予告ですが、ライくんとテオくんは限界まで力を振り絞ってスタンピードの殲滅に成功します。しかし、人とは思えない戦力に恐怖してしまった兵士がライくんとテオくんに暴言を吐いてしまい、ライくんは深く傷ついてしまいます···。
さらにはスタンピードの元凶まで現れました!スタンピードは退けたものの、状況は混沌としてしまうのです···。
明日と明後日は土日なので朝と夜に1話ずつ投稿します。お楽しみに〜!




