表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】継承者ライ、荒廃した世界を生き抜く!  作者: ぷちきゅう
第1章 ライ、村を出る!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/229

1-20.スタンピードの兆候

「ライ、テオ。お前たちに1週間討伐依頼受注禁止を言い渡す」



 ボクたちが魔獣を狩りすぎちゃって、ほかの冒険者さんの取り分がなくなっちゃったんだって···。ギルドに行ったら思いっきり睨まれちゃったんだよ···。



「それと、お前たちにDランク昇格を言い渡す」



 魔獣を狩りすぎちゃって規定値を軽く超えてしまったらしく、次に受注して達成したらCランクって言われちゃった···。


 ほかの冒険者さんたちの印象はかなり悪くなってしまった。



『なんであんなガキがもうCランクなんだよ!?』


『あいつのせいで仕事取られちまったよ···。余計な事しやがって!』


『ロクな仕事ねえじゃねえかよ!?避難民のお守り?はっ!そんな危険な事、やってられるかよ!』



「まぁ、下の連中の言い分もわかる。どちらかと言えば私も下の連中の言い分に一部賛成な方だな」


「うぅ···」


「ただ、あいつらはわかっていないところがある。変異種が本当に現れたということだ」


「それって、どういう事なんです?」


「変異種とは、通常の環境なら現れることのない魔獣なのだよ」


「通常の環境じゃ···、なくなってるって事ですか?」


「察しいいな。その通りだ。そしてその環境は、スタンピードの前兆現象(・・・・)とも言われている」


「それって!?」


「うむ。この近くで発生する可能性が極めて高いということだ。言いたくはないが···、キミの村もここから近いといえば近い。キミの村で発生したのなら、ここもいつ襲われてもおかしくはない」


「だったらなおさら、今のうちに魔獣を狩っておけば···」


「通常の奴らをスタンピードは飲み込んでしまう。狩ったところで意味はないのだよ」


「では···、どうすれば?」


「はっきり言ってどうしようもない···。アノド様はスタンピードに耐えれるよう外壁を建設されたが、建ってかなり経つので耐えれるかは疑問なのだ。そもそも建造してからスタンピードは幸いなことに1度も発生してないので、なおさら未知数だ」


「············」


「この場ではっきり言おう。キミたちは今すぐここから出ていくべきだ」


「そんな!?待ってください!」


「キミは村の外の世界を見て回りたいのだろう?だったらこんなところで命を捨てるべきではない。それに、キミはこの町の出身じゃない。悪いように聞こえるかもしれないが、この町にとってはよそ者(・・・)だ。この町を救う義理も義務もない」


「············」


「最初の面接でキミは言ったな?『自分のような目に遭う人をなくしたい』と。キミの事だ。スタンピードを滅ぼしてやろうと考えてるのではないか?」


「············」


「やはりそうか···。今もその気持ちに変わりはなさそうだし、言っても考えを変える気もないな?」


「············」


「悪いことは言わん。今すぐにここを立ち去りなさい。決してスタンピードに立ち向かってはならん!」


「···失礼します」



 ···ふぅ。説得は無理だったか···。思ってた以上に頑固だ。こうする!と決めると、てこでも動く気はないのか。よほど魔獣に対して恨みを持っているのだろう。


 無理もない。村を滅ぼされ、それまでの生活とは一変させられ、運命すら捻じ曲げられてるのだからな。


 これまでの情報によれば、変異種が表れて5日以内にスタンピードが発生している。この短期間に打てる対策などたかがしれている。


 スタンピードで襲ってくる魔獣は、状況にもよるが数千~1万。ドラゴン族ですら太刀打ちできないとされるハイパースタンピードと呼ばれるものであれば数十万とも言われている···。籠城戦もほぼ不可能だな···。



「で?どうするよ?この町を放棄するか?」


「避難するにしても時間がなさすぎますし、避難中にスタンピードに巻き込まれる可能性があります。どこから襲ってくるかも未知数ですし···」


「ワシは逃げんぞ?もう···、どこへ行っても···、どこへ逃げても···、助からんわい」


「私も残る。この町の町長として、ギルド長として、残った住民を守る義務があるのでな。今、この時間をもってスタンピード警報を発令する!直ちに避難準備を行い、すぐにほかの町へ逃げるのだ!」



 アノド様···。申し訳ありません。あなたがお創りになったこの町は···、滅ぼされてしまうかもしれません。あなた様の理想を体現したこの町を守り切れず···、悔しい思いです。




 ボクがギルドを出て宿に戻ると、すぐに大通りが大騒ぎになっていた。



「スタンピードが来るって言ってるぞーー!!」


「大変!逃げなきゃ!!」


「でもどこへ逃げればいいんだよ!?」



 大通りはさらに騒がしくなっていった。みんな店を閉め始めて逃げる準備を始めたようだ。



「(コンコン!)ライさん、テオさん!スタンピード警報が出たそうなので、宿を閉めます!すぐに出ていく準備をして下さい!」



 どうやらこの宿も閉めてしまうようだ。1週間近く滞在したこの宿も···、今日でお別れのようだ。



「ライ、行くぞ」


「テオ···」


「おい?まさか···!?」


「うん。スタンピードを···」


「(バシーーン!)いい加減にしろ!!」


「いったーー!?なにすんのさ!?」


「お前はスタンピードを甘く見すぎてるぞ!」


「そんな事ない!ボクは···、ボクの村が滅ぼされたのを見たんだ!」


「だからって、ここのスタンピードを相手にするだと!?ふざけんのもいい加減にしろ!」


「ふざけてない!ボクは···、本気だよ」


「相手は数千、もしくは万単位だ。数で押されるのは目に見えてる!」


「···賢者の遺産の知識には、アキさんがスタンピードに立ち向かったものがある」


「それは知識だけだ。力はそこまでないはずだ。秘伝書によれば、神の力や星の力である龍脈の力を借りて討滅したってあったぞ。ライは龍脈の力を操れるのか?」


「ううん···」


「絶対的に力不足だ。無駄死にするぞ。気持ちはわかるが、ここは逃げるべきだ。あのじーちゃんも『逃げるタイミングを見失うな』って言ってただろ?今がそのタイミングだ。わかるな?」


「わかってる!わかってるけど···。でも!」


「···全部ライがやる必要はないんじゃないのか?」


「えっ···?どういうこと?」


「はぁ~···。まだわかってないのかよ···。オレが止めても行くつもりだろ?一人よりも二人のほうが楽(・・・・・・・)じゃないか?」


「それって!?」


「勘違いするなよ!?ヤバかったら逃げるからな!」


「テオ···。ありがとう」



 ボクたちはすぐに準備して宿を出た。大通りは大混乱になっていた。どっちに逃げたらいいかわかんないからだ。


 ボクは迷わず北門へ向かおうと思った。理由は『雲』だ。



「テオ!もしかしてあれって···?」


「···マジだな。黒魔力嵐が来るぞ!」


「じゃあ、北から来るってこと!?」


「そうだ!早く避難民を南へ避難させないと···!」


「じゃあ、ギルドへ行こう!カソドさんに事情を説明して、みんなを南へ避難させるように言おう!」


「わかった!」



 ボクたちは急いでギルドに向かった!


 ギルドの中でも大混乱になっていた。人の隙間を縫って、カウンターにたどり着くと、ポーラさんがいた!



「ポーラさん!」


「ライくん!?何してるの!早く逃げなさい!」


「待って!北からスタンピードが来ます!だから、南へ逃げるように言ってください!」


「ちょっと!?どうして北から来るってわかったのよ!?」


「雲です!あの黒い雲は『黒魔力嵐』って言って、スタンピードを呼び寄せるんです!ボクの村にも···」


「そういうことなのね···?わかったわ!キミたちも早く南へ逃げなさい!絶対に北に行っちゃダメよ!」



 そう言ってポーラさんは2階へ上がった。カソドさんに報告するんだろうね。



 ···さようなら。お世話になりました。



 ボクとテオは北門へ向かったんだ。

 冒険者という職業はファンタジー世界では有名な職業ですが、現実世界に置き換えれば建築で言う『一人親方』です。

 労働基準法も適用除外となるので、好きなだけ働いて好きなだけ報酬を得ることができます。

 しかし、実際にはそれなりの実力がないと依頼なんて来ません。会社員と違ってある意味弱肉強食の世界なんですね。

 ですのでライくんに仕事取られた!って言われてしまいましたが、その人は『実力がありません!』って宣言してるのと同じなんですね。まぁ、ライくんとテオくんには魔獣レーダーというチートがありましたが···。

 実力主義の世界に年齢は関係ありません。結果がすべてですからね。そういう意味では憧れる人が多い職業ですが、とんでもなく残酷な世界だと思いますよ。作者は豆腐メンタルですし中年太りで戦闘力ほぼ皆無ですからムリダナ〜(笑)!


 そしてライくんはスタンピードに立ち向かう決心をしてしまいました。やはり村を滅ぼされたという恨みがあるんですよ。これまでの生活が一変したわけですし、両親も殺されてしまいましたからね。ですので、なんとしてでも滅ぼさせないぞ!という気持ちなんですよ。


 さて次回予告ですが、北門に着いたライくんとテオくんは、黒魔力嵐に備えてテントを張ろうとしますが、兵士から門の休憩所を使っていいと言われ、さらに兵士たちと一緒に立ち向かうことになります。

 すると、ライくんの賢者の遺産から言葉でアドバイスをもらいますよ!新たな機能も開花して立ち向かいます!


 それではお楽しみに〜!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ