1-19.ライ、魔獣を余計に狩ってしまう!?
「テオ、おはよう〜!」
「ん~~?もう朝かよ〜」
「もう〜!昨日と同じ事言ってるよ?」
「そんな細かいことまで覚えてるのかよ!?」
「昨日の事だしね〜。さあ、今日も1日元気にいってみよう〜!」
「なんだか張り切ってるなぁ〜」
さて、今日はできれば魔獣退治をしてみたいね。今のランクがEなので、Dランクまでの魔獣は請けれるみたいだよ。
朝食を終えてギルドに行った。ボクたちはいつも遅めの時間なので、中には人がほとんどいなかったよ。
今日はポーラさんは見かけないね。お休みの日だったのかな?まぁいいや!さっそく依頼を見てみると···、あった。
さて···、どれにしようかな?···ん?これって···。ちょっと受付で聞いてみるか!
「すいませ〜ん!」
「あら、確かライくんとテオくん···、だったわね?」
「知ってるんですか?」
「そりゃもう有名よ!最年少冒険者で誰もが嫌がる仕事ばかり請けて、全部満点なんですもの!逆に知らない人を探す方が大変よ?」
「マジかぁ···」
「それで、今日はどうしたの?」
「魔獣退治の依頼なんですけど···、あれって『張り紙持ち出し禁止』って書いてるんですけど、どういう事です?」
「あら?ポーラは説明してなかったのかしら?魔獣退治は張り紙を持ってこなくてもいいの。倒した魔獣の体の一部を右のカウンターへ提出したら報酬が支払われるのよ。丸ごと持って帰ってくるのもいいけどね」
「なるほど···」
「でも、強さに応じてランク付けしてるけど、上位は絶対近づいちゃダメよ!大事なのは無事に帰ること。欲を出しすぎて腕や足をなくしてしまう人もいるからね!」
「···はい。わかりました。気をつけますね!」
そういう事か。原則一つ上のランクまで請けれるってそういう事なんだね。
そりゃ、『この魔獣だけ狙う!』なんてできないもんね。ボクの魔獣レーダーですら、相手が何かなんてわかんないし。
ちなみに神器であるスマホには『写真』って機能があるんだ。見たままを一瞬で絵にしちゃう、すごい機能なんだ!これで依頼の写真を撮っておいた。倒した後で確認しよう。
「じゃあテオ!行こうか!」
「おう!いっぱい狩るぜ〜!」
今回も北門に向かった。門番さんも、避難民の皆さんも知ってるからね。
「おっ?ボウズ、今日は救援物資の日じゃねえぞ?どうした?」
「おはようございます。今から魔獣狩りに行くんですよ」
「···はぁ!?マジかよ!?」
「ええ!いっぱい狩って、いいお肉を皆さんに食べてもらおうと思います!」
「···そうか!気をつけろよ!」
「無事に帰ってくるんだよ!」
「お肉、楽しみにしてるぜ!」
「はい!じゃあ、行ってきま〜す!」
避難民の皆さんから応援されたね!よ〜し!頑張るぞ〜!
北門から、ボクとテオは街の外に出た。さっそくレーダーで確認すると、北東方向にたくさんの魔獣の反応があったよ。
「テオ、右側の森の中が多そうだよ」
「じゃあ、まずはそっちだな!」
ボクたちは森の中に入っていった。すると、奥のほうでいっぱい魔獣がいたよ。どうも獲物を狩ってお食事中のようだ。
「クマっぽいな···。なんか色が変わってるけどな」
「あれって食べられるのかな?」
「ライは食べれる魔獣ばかり狩るつもりなのか?」
「どうせならね。じゃあ、今日はボクからやってみるよ」
「おう!外してもオレが仕留めるからな!」
クマっぽい魔獣は全部で20体かな?じゃあ、さっそくいくよ!
「ストーンランス!」
ボクの右手に石の槍を作り出した。ここ最近よく使ってるからすぐに出せたね!それじゃあ···、いっけーーー!!
ストーンランスが勢いよく撃ち出された!まっすぐお食事中のクマたちを···、貫通した!!
「「「「ギャアアーーーー!!」」」」
その叫び声は他のクマの食事を止めるきっかけとなり、周囲を探索し始めた!すぐにボクに気づいてこっちに向かってきた!
次は剣技でいくよ!
「秘技!疾風迅雷!!」
駆けてきたクマ1体ずつに一閃していった!しかし、それだけでは倒し切れてなかった。
そんな事は攻撃したときに気づいていたので、ここでもう一つ必殺技を繰り出すぞ!
ボクは振り向きざまに放った!!
「秘技!弦月斬!!」
魔力剣を勢いよく振りぬいて斬撃を放ってやった!直近のクマは倒せたけど、後方はまだ生きていて、ボクを囲おうとしていた!でも大丈夫!次の技で決める!!
「秘技!螺旋斬!!」
その場で3回転クルっと回りつつ、周囲を切り刻んでやった!これで全部かな?
「テオ!これでどうかな!?」
「おう!十二分だぜ!」
「じゃあ、さっさとしまっちゃうね~!この調子でドンドン行こう!」
次は草原にやってきた。ここも集団でいるよ···。どうもここら辺は集団で魔獣が出没するみたいだね。
「あれは牛さんかな?魔獣の反応あるけど···」
「そうだな。あれはおいしいかもな!」
「焼肉なんて楽しそうだよね~!よし!じゃあやっちゃおう!」
「ライ!今度はオレがやるぜ。きれいに仕留めれば、おいしいお肉が多くなるからな!」
「わかったよ。じゃあお願いね!」
「おう!見とけよ~!」
テオが牛さんに向かっていくと、むこうも気づいたみたいでこっちに突進してきたよ!
「そう来るよな!じゃあ、サクッとやってやるぜ!ドラゴンクロー!」
ジャキーーン!
テオの爪が伸びた!そして、
「ドラゴンカッター!!そーれ!それ!それ!」
伸びた爪の斬撃をどんどん飛ばしていった!ボクでも2連発が今のところ限界なのに、テオはいっぱい繰り出しちゃったよ。
あっという間にやっちゃったね。さすがドラゴン族だなぁ~。魔獣狩り専門ってだけあるね!
「こんだけいたらかなりの人数に食べさせられるな!」
「そうだね~。お昼までまだ時間あるから、もうちょっとやっておく?」
「いいぜ~!次はどこのどいつだ?」
こうして集団の魔獣を狩りつくしたあとは、門に近い魔獣を次々に狩っていったんだ。これで当面は大丈夫じゃないかな?
「テオ!そろそろお昼だから戻ろうか!?」
「おう!結構やったな~。100以上は倒したんじゃないか?」
「途中から数えるの面倒になったもんね。無限収納カバンの自動解体も追いつかなくなってるし···」
「そんじゃあ、帰ってバンドのじーさんに買い取ってもらおうぜ!」
「うん!」
今日の狩りを終えてボクたちは戻ったんだ。北門を通り過ぎると、避難民の方から声がかけられたよ。
「無事に戻ってきたんだね!」
「え~っと、狩った魔獣は?」
「あ、ごめんなさいたくさん狩りすぎちゃったので預けてるんです。明日にはいっぱいお肉を持ってこれるんじゃないかな?」
「そうなのか!?」
「ホント、助かるよ···。いつまでも甘えちゃいけないってのはわかってるんだけどね」
「皆さん!明日はお肉をいっぱい持ってきますからね~!」
そしてギルドに戻ってバンドさんに魔獣のお肉を除いた素材を渡すと···、
「おいおい!?なんだこの量は!?」
「群れがいたので殲滅しておいたんですけど?」
「にしても数が多すぎるわ!!···これ、どう捌きゃいいんだよ?」
「え~っと···?」
「···ん?なんだ···?ちょ!?これは···!?」
「え?ど、どうしました?」
「おい!こいつは変異種じゃねえかよ!?」
「変異種?」
「ただのフォレストベアーじゃねえじゃねえか!?全部スペリオルベアーだぞ!!」
「···え?スペリオルベアー?」
「通常のヤツよりも凶暴で、いったん見つかったら命はねえ魔獣だ。BかAランク相当だぞ···」
「···え~っと?」
「···おいガキ!お前はやりすぎだ!変異種を狩った事は純粋にすごいが、こんな数やったらほかの連中の取り分がなくなるだろうが!!」
「···あ」
「あ?じゃねえよ!しかも半日でやっただと!?···もう帰れ!今日中に査定はムリだ!明日出直せ!!」
「は、はい···。失礼します」
あ~、やりすぎだったんだ···。初めてだったから加減なんてわかんなかったしなぁ~。
ほかの冒険者さん、お仕事取っちゃってごめんなさ~い!
ライくんには神器のスマホがあり、魔獣レーダーでどこにいるのかがすぐにわかってしまうのであっという間に大量の魔獣を狩ることができてしまうんですね。釣りで言えば漁船のソナーと海岸で釣りをしてるぐらいの差が出てますね。
安全という意味ではこれは非常にいいことなんですが、生業となっていると収入に直結してしまうので他の冒険者としてはありがた迷惑というかたちになってしまうんです。このあたりは難しいところですね。そもそも魔獣狩りは自由なので早い者勝ちという面も否定できませんが···。
さて次回予告ですが、ライくんたちが狩った魔獣の中には変異種があるとバンドさんが言ってましたが、この変異種が現れるのはスタンピードの兆候らしいのです···。
カソドさんはすぐに町を脱出するようにライくんたちに言いますが、村をスタンピードで滅ぼされたライくんは立ち向かおうとしてテオくんに止められます。どんなやりとりになってしまうのでしょうか?
それではお楽しみに~!




