8-21.アエスVSムクス 前編
台湾の高雄から無事帰ってきました~!
神戸空港への高速船内から投稿しますよ〜。
円安でちょっと高くなってしまいましたけど、それでも安い方ですね。ちょっと円安に振れすぎると海外旅行しづらくなっちゃいますね。
そいつは水道の取水口から侵入しようとしていた。
この戦争で無数の魔獣が倒れ、その血などで川が汚染されてしまったので、今は取水口の先にある水門は固く閉ざされていた。
けれども、その手前にはゴミが取水口に入らないように『スクリーン』とライが呼んでいた網があり、いつもはゴミが溜まっているのに、それがなかったのだ。
私の予想通り、その網にいたのだ。魔獣同化能力者が。オリハルコン製の網を突破できずにいたのさ。
『まさかオレの酸で溶かすことができない金属があるとはな···。なぜかすり抜けもできないとは···』
「残念だったねぇ〜。ここの村長は、あんたらの企みなんてお見通しなんだよ。あんたらがこの村の中に入る場所も方法も、ないんだよ。分かったらとっとと帰りな」
『なるほどな。ならば村に入るこの水路を汚染すればいいだけの事よ!』
「う〜ん···。さすがにそいつは困るねぇ〜。このまま帰ってくれるなら見逃してもいいかと思ったけど···。じゃあ、私が相手してやるよ」
『フン。今のオレを倒すだと?できもしない事を言うな』
「やってみなくちゃわからないだろ?相手してあげるよ」
私は網の上にある壁を飛び越えた。魔法障壁が展開されてるけど、そんなものは暗殺者には通用しない。真上に吹き上がる障壁の魔力と同様に私の魔力も上に吹かしながらすり抜けた。
『壁の上も通れなかったのにあっさりと通るのだな』
「そりゃそうさ。これはあんたたちを通さないものだからね。住人は通れて当たり前だろ?」
『確かに。では、相手してやろう。貴様丸ごと取り込んで溶かしてやる!』
そう言って壁の外の掘りの水面が盛り上がって形どっていく。その塊は掘りの横の地上にはい上がってきた。
いわゆるスライムと呼ばれる魔獣だね。体が液体だからどんな形にもなるし、どんな隙間でも入れる。さらには体内に酸を持ってるので、それで相手を溶かすって事もやってくる。
さすがにオリハルコンの網は溶かしきれなかったようだ。なぜかすり抜けられないような事を言ってたけど···?ライが何か仕掛けていたようだね。
ただ、コイツは魔獣同化能力者。ただのスライムじゃあなさそうだ。ちょいと私には不利な相手だねぇ〜。
さあ、駆除を始めようかね。
『くらえ!!』
スライムは体液を無数飛ばしてきた。当然ながら避けるものの、飛んだ体液が地面や魔獣の亡骸にあたると『ブシュブシュ!!』と音を立てて溶けていくのが見えた。相当に強力な酸のようだね。
『ちっ!ちょこまかと動きおって!』
「暗殺者はスピードが命なんでね。どんな攻撃でも当たらなければどうということもないさ」
『ならば数で押すまでのことよ!』
ヤツの攻撃の速度がさらに上がった。しかし、これだけの量を撃っているのにヤツ自身が小さくなっていない。弾はヤツ自身だから小さくなっていかないとおかしい。
ということは、撃った分だけ再生している?これはやっかいだね。無限に撃たれるのはさすがにごめんだ。
『どうした!避けるだけしかできんのか!?大口叩いた割には大したことないな!ははは!』
「チープな挑発はよしな。そんなものは私には通用しないよ。とは言っても言ってることはもっともだ。そろそろ避けるのも飽きてきたことだし、攻撃に移らさせてもらうよ」
まずは火魔法だ。相手が液体である以上、燃やせばいい。本体に向けて扇状に火魔法を放った!
「コーンクリメイション!」
攻撃範囲が非常に広範囲だ。高火力だから当たれば普通なら消し炭になってる。しかし、ヤツは直撃したというのに平気だった。
『フン!効かんな』
「だったらこれならどうだい?アイスピラー!」
今度はヤツを中心に氷の柱を作り出して固めてやった!しかしその氷もすぐに溶かされてしまった···。
『貴様、なめてるのか?効かんと言ってるだろうが?この程度の攻撃で倒せるとでも本気で思ったのか?』
「やれやれ···。手間がかかるじゃないか。だったらこれはどうだい?アークショット!」
お次は雷魔法による電撃攻撃だ。液体ならたいてい電気は通りやすいとライに教えてもらっていたんでね。火や氷はスライムの体の外部からの攻撃だった。しかしこれは内部から焼く方法だ。結果は···?
『まったく···。貴様はバカか?効かんと言ってるだろうが?まだわからんか?』
···おかしい。どれも魔獣相手には有効な魔法だ。確かにヤツの言う通り効果はいまいちのようだね。ということは、何かカラクリがあるとみて間違いなさそうだね。
「あんたの言うとおりだね。本当に効いてないようだ」
『やっとわかったか。手間をかけさせおって。何もかもすべてムダだ。オレはすべての攻撃を無効化する。誰もオレを倒すことなどできんのだよ』
「そうかい。まぁムダかどうかは最後の最後で明らかになるさ。『失敗は成功の母』という、外の世界の言葉があるんだよ。だから、いろいろ試してみるさ」
『そんな余裕はもうないぞ?』
「なんだって?」
『ただオレが当たらない攻撃を続けていたと本気で思っていたのか?ワナとも知らずに···』
次の瞬間!私の周りに散らばっていたヤツの破片が私に一斉に向かってきた!ジャンプして避けたものの、上にもヤツの破片が展開されていた!
そして一斉にわたしにまとわりついてきた!逃げる空間すべてをヤツの破片で潰しにかかっていたんだ!
「しまった!くそっ!」
『ははは!こんなにあっさりと引っかかるとは!あれだけ大口を叩いた割にはとんだバカだったな!!』
私にくっついたヤツの破片は破片同士がくっついてどんどんおおきくなっていき、最終的には私はヤツに全身を包まれてしまった!
「ボディバーニング!」
ジューーー!!
全身に火魔法をかけてまとわりついた破片を焼こうとしたけども、まったく効果がなかった!破片だけでも再生しているようで、焼いても焼いてもきりがない状態だったのだ!
「ぐあああああ!!」
ヤツの酸で体が溶かされ始めた!全身が取り込まれてしまったために息すらできない!
「ははは!いかに神が創りし伝説の戦闘種族と言えども、呼吸ができなければ生きることはできまい!そのまま全身を酸に焼かれながら悶え苦しみ死ぬがいい!!」
そして2分後、アエスはすべて溶けてしまい、影も形もなくなってしまったのだった···。
『ふんっ!あっけないものだな。かなりの強敵ではあるとの情報ではあったが、やり方次第ではどうとでもなるか···』
アエスを溶かしてしまった破片を取り込むムクス。この時にムクスは異変を感じた。
『···ん?溶かしたというのに養分が思った以上に少ないだと?···どういうことだ?確かにあの女を取り込んで溶かしたはず。情報にあった代わり身や分身といった技ではないのは確かなのだが···』
本来なら溶かした相手を取り込んで力とするのに、力を取り込むことができなかったのだ。その違和感の正体はすぐにわかった!
「当たり前だ。溶かしたのは私じゃないからだよ」
『なにっ!?』
激闘はまだまだ続く様相を見せていた!
相手はスライムなので、これといった攻撃が通じにくいですね。相性としては最悪の相手です。
そんな相手だったので、アエスさんも絶体絶命のピンチに陥りかけましたが、なんとか逃げ切りましたね。
さて次回予告ですが、ちょっと短いお話になってますが、アエスさんがなぜ助かったのか?の種明かしをします。どうやって切り抜けたのでしょうか?
それではお楽しみに~!




