序章-2.魔獣の住む森の湖にて
本日一気に序章5話+設定資料集を、時間を開けて投稿中です!
ここは2話目ですので、ここから読み始めた方は1つ前のお話からお読みください。
一夜にして、すべてを失ってしまった···。
パパ···、ママ···、ボクの家···、村の人たち···、畑···。
もう、誰も···、ボクを助けてくれる人はいない···。
料理の仕方も知らない···、食料もない···。
ボクは絶望してしまったんだ···。生きる事に···。
ボク一人だけじゃあ、何もできないよぉ···。
もう、ダメだ···。ボクも···、パパとママのところに行こう。
ボクはフラフラと歩いて村を出た。行く宛てなんてない。どこに行ったらいいかなんて分かってないから。
すると、右側に森が見えてきた。ここって確か魔獣が住んでるから入っちゃダメって森だよね?
···ちょうどいいや。痛いだろうけど、ボクも魔獣のエサになろう···。
そう思って道のない森の中に入っていった。
森の中は静かだった。途中から獣道っぽい場所に出たよ。魔獣が住んでる割には穏やかな雰囲気だった。···あれ?聞いてた話と違う?
どこまで奥に進んでも魔獣に出くわす事はなかった。···もしかして、魔獣がいない?
···そうか。この方法もダメだったのか。まぁいいや。もっと奥に行っちゃえ。おなかすいても、倒れるまで···。倒れるのもいいなぁ···。
そうして進んでいくと、湖があった。覗き込んでみると、透き通っててきれいだったよ。
···ボク、泳いだ事ってないんだよね。ここに飛び込んじゃえば···。うん、そうしよう。もう、これしかないよね。
ドボーーーン!!
んぐっ!···あれ?息が···、できる!?どういう事!?
わけがわからないよ!?水の中って息ができないんじゃないの!?
大混乱するボク。すると、湖底で何かが光ったんだ。
ボクは泳げないから、そのままズブズブと光ってる場所へ沈んでいった。
そこには光る玉があった。···これってなんだろう?
···もう捨てる命なんだ。危険だとしても、もう気にしない!
ボクはその光る玉に触れてみた!!
周囲に光が溢れて、ボクは目を閉じてしまったんだ!
···目を開けると、湖の中じゃなかったんだ。えっ···!?ここはどこなの!?
『ふわぁ〜〜···。誰だい?オレの眠りを妨げるのは?』
ボクの頭の中に聞いたことのない声が響いてきた!
「えっ!?だれ!?ど、どこにいるの!?」
『どこって、目の前にいるだろ?』
「めのまえって···、このひかるたま?」
『そうだぜ?今のオレには体がないんでな。精神体だから、こうしてお前の頭に直接語りかけてるんだよ』
「からだがない···」
『ところでキミはどうしてここに来た?ここには適格者しか来れないはず···。もしかして、キミがか!?』
「えっ···?てきかくしゃ···?ボクは···。すんでたむらがまじゅうのせいでなくなっちゃって···。ボクひとりだけになっちゃったんだ···。だから···、ボクもパパとママのところに···、いこうとおもったんだ···」
『なるほどなぁ〜。キミ、死ぬ気だったのかい?だったらその体、オレにくれないか?』
「···え?どういう事?」
『言葉のとおりさ。今のオレには体がないんだ。この状態じゃあ、外に出ることもできねぇしな!それに『賢者の遺産』の封印も解けるしな!』
「わけがわからないよ···」
『わからんでもいいさ。さあ、どうする?キミは精神が死んで魂はあの世へ行ける。オレはその体を再利用できる。一石二鳥じゃんか?』
「···うん、いいよ。ボクのこのからだ、じゆうにつかって」
『よし!契約成立だ!それじゃあ···、さよなら』
ボクの胸に光る玉が入ってきた!
ぐっ!?か、体が···、熱い!!意識が···、どんどん遠のいていく···。あぁ、これが『死ぬ』って事なんだね···?
パパ···、ママ···。ボクも···、今から···、そっちに···、いくよ···。
「おい?起きろ!!おーーーい!!」
う···、う〜〜ん···。え···?もう···、着いちゃったの···?でも···、聞いたことのない声だけど?
ボクが目を開けると···、そこには見知らぬ銀髪の少年がいたんだ。しかも背中にはもふもふな翼が···、生えてる!?
「···え?···ここは?」
「おっと!やっと起きたな」
「キミは···、誰なの?」
「声聞いてわからんのか?さっきまで話してたヤツだよ」
「えっ!?だって体が···」
「本当はキミの体を乗っ取るつもりだったのに、なぜか体があるんだよなぁ〜!よくわからんが」
「ボクだってよくわからないよ···」
「まぁ、そんな事はどうでもいいさ!やっと封印が解けたぜ〜!これだったら『賢者の遺産』の封印も解けてるはずだな!」
「ちょっと待って!···ボクはライって言うんだけど、キミは···?」
「お〜、そういえば名乗ってなかったな。オレはテオ。白銀竜のテオだぜ!」
「白銀竜···?」
「なんだ?ドラゴン族を知らないのか?···あっ!?そうか!今は地上にはドラゴン族はいないんだったな!」
「え···?そうなんだ···。じゃあ、テオって呼ぶね。賢者の遺産ってなに?」
「賢者の遺産は···、って!?よく見たらライがもう持ってるじゃんか!?」
「えっ!?···このカバンと棒と腕輪、それにこの光ってる板···?これが?」
「そうだぜ!話は『実家の秘伝』でちょろっとだけ書いてたのを見ただけなんだが、それのとおりだぜ!って!?オレのものにならないのかよ~!?」
「これがそうなんだ···。うっ!?」
「どうした!?ライ!?」
「うぐぐぐ···!」
光る板を持ったら、急に頭が痛くなってきた!!わ、割れそうだ···!!
ボクは意識をまた手放してしまったんだ···。
次に目が覚めると···、見たことのない場所にいたんだ。···さっきからわけがわからないことだらけでもう驚かなくなりつつあるなぁ〜。
目の前に家があった。ここに入れってこと?とりあえず入ってみようか。
「お、おじゃましま〜す···」
「やあ、いらっしゃい!待っていたよ。キミをね。ライくん」
「えっ!?ど、どうしてボクの名前を?」
玄関で迎えてくれたのは青い髪の女の人···、じゃなさそうだね。男の人だよ。誰なんだろう?
「ははは!『賢者の遺産』はライくん、キミに正式に継承されたからね。おっと!名乗るのが遅れたね。ボクはアキ。スマホの時計アプリを開くと···、うひゃ~!もう1000年以上経っちゃってるのかぁ〜!」
「え?1000年前の人?」
「そうなるね〜。さて、せっかくだから上がって!お茶菓子を用意するよ〜!」
ボクは···、言われるがままアキさんの家?におじゃますることにしたんだ。