1-13.神器って見抜かれちゃったよ···
冒険者ギルドに来たら知らない間に冒険者になっちゃったんだ。そしてここまでの道中で退治した魔獣の素材を引き取ってもらえるらしいんで、ポーラさんと一緒にギルドの建物の裏にやって来たんだ。
「バンドさ~ん!大型の買い取りよ~!」
「なんでぇ!?こんな朝早くからかよ!?腰が痛いから昼からにしたいのによ!」
そこには体格のいいおじさんがいたよ。この人が買い取りの人なのかな?
「ん?ガキ···?おい、ポーラ?こいつらはなんだ?お仕事見学か?」
「いいえ、今日冒険者になった新人なんだけどね。ここまでの道中で魔獣を退治したから素材を売りたいって事で来たのよ」
「はぁ?寝ぼけてんのか?表の受付で受けりゃいいだろうが?なんで裏に連れてきたんだよ?それに、そこのガキはショルダーバッグだけしか持ってねえじゃねえか」
「それがね···。このカバンってマジックバックらしくて···」
「···あぁ!?こんなガキが持つような代物じゃねえぞ!おいボウズ!それはどこで盗んだんだ!?」
「ちょっと!?バンドさん!?」
「盗んでません。これは···、知人の遺産なんです」
「···悪かったな。さっきは失言だったな。そういや素材買取だったな。何を狩ったんだ?」
「アノドさんの話だとマッドドッグっていう犬の魔獣みたいなんですけど···」
「···とりあえず出してみろ」
「はい。よいしょっと!」
ボクは無限収納カバンからマッドドッグの素材を全部台の上に置けるだけおいたんだ。
「ちょ!?ちょっと待てや!こ、こんなにあるのかよ···」
「あとちょっとありますけど?」
「マジかよ···。どれどれ···?」
バンドさんは素材をじっくり見ていたよ。かなり険しい顔をしているなぁ~。一応無限収納カバンの自動解体機能で解体してくれてるんだけど、買い取ってもらえるような状態なのかなぁ~?そして2分ほどで全部の素材を見終えたよ。
「ボウズ。これは本当にお前がやったのか?」
「テオがやってくれました」
「おう!久々に暴れたぜ~!」
「それも驚きだが···。状態が非常にいいものばかりだぜ···。どうやって解体したんだ?ここまできれいにはベテランの解体師でもできんぞ?」
「それは···。お答えできないんです」
「···まぁいい。そんなトンデモカバンを持ってるぐらいだ。ここに直接ってことはワケアリだな?おいポーラ!このボウズたちをDランクにしておけ」
「えっ!?ちょ、ちょっとそれは···」
「だったらオレからカソドに直接言っておく。ここまでできるヤツをFのままにしておくわけにはいかん」
「あ~、ギルド長でもそれは厳しいと思いますけど···」
「ところでボウズ、名前は?」
「ライです。こっちはテオです」
「よろしくな!おっちゃん!」
「ワシがお前らをDランクに推薦しておく。ただ、アイツの事だ。そう簡単に認めんだろうが、こと魔獣退治に関しては特別にCランク依頼まで受注できるようには絶対にしておく。この周辺だとすべての魔獣が該当するが、お前らの実力からすれば問題ないと判断できるからな」
「え?そ、それは···」
「これだけ上手に魔獣を狩れるんだ。大丈夫だ、問題ない。それにこのマッドドッグってのはCランク扱いの魔獣だ。コイツは集団で襲ってくるから、Cランクでも1人だったら歯が立たねえ。それをたった二人で群れを殲滅したんだ。十分すぎるだろうが!」
「そ、そうですか···」
「ここまで完璧に解体されてたらワシの仕事がねえじゃねえかよ···。査定は昼過ぎには終わるだろうから、それまで武器屋でも行って時間つぶしておけ」
「は、はい。ありがとうございます」
ボクたちは全部素材をバンドさんに預けて、次はポーラさんと一緒に武器屋に行ったんだ。
「ん?ガキがこんなところで何の用だ?」
「イグニスさん。この子たちに武器と防具を見繕ってくれませんか?」
「はぁ~?なんでポーラがガキのおままごとに付き合ってんだよ?お前、暇なのかよ?」
「むぅ~!失礼ですね!あたしはギルド長直々の指示でこの大型新人くんたちの案内をしてるんです!」
「大型新人って···、ただの幼いガキンチョだろうが?···ん?近くに来てどうした?内緒話かよ?」
「(この子たち、ここに来るまでにマッドドッグの群れを殲滅したんですって)」
「···はぁ!?マジかよ!?」
「(静かに!バンドさんがDランクに上げるって言ってましたよ)」
「(···マジなんだな。こいつら、武器も持ってないのに?魔法か?)」
「(それも勘案して、冒険者っぽい格好にしてくれませんか?)」
「(···そういう事か)わかった。終わったらカウンターへ連れてくわ。おい、お前ら。ちょっと裏へ来い」
「というわけで、ここからはイグニスさんがライくんとテオくんをかっこいい冒険者の格好にしてくれるわ!いってらっしゃ~い!」
「え?そ、そうなんですか?」
「別になくてもいいんだけどなぁ~」
「おい!聞こえてんのか!?早く来い!」
「は、はい~!」
今度は武器屋さんで裏に連れていかれちゃったよ···。何されるんだろうね?
「さてと···、確かライとテオって言ったな。マッドドッグを倒したらしいが、どうやって倒したんだ?」
「オレが魔法で狙撃したぜ?」
「ちょっと見せてくれるか?あそこに的があるだろ。あれにめがけて撃ってくれ」
「おうよ!ストーンショット!」
バキッ!!
テオが撃ったら的が壊れちゃった···。これってマズくない?
「···とんでもねえ威力じゃねえかよ!?あ~、そりゃバンドのおっさんが言うのもわかるわ」
「もっとすごい魔法もあるけどな!ライも使えるぜ」
「マジかよ!?」
「はい。ボクも使えますね。水鉄砲!」
バキッ!
「···ここまでの威力は初めて見たぜ。しかも今、溜めなしで撃ちやがったな。とんでもねえじゃねえか!お前ら、魔法だけでも十分だが、武器は何か使うのか?」
「ボクは剣ですね。あとは···、槍も使えると思います」
「なんだよ?その使えると思いますって···」
「オレは体術だな!あとはドラゴン族特有の武器もあるぜ!」
「本物かよ!?初めて見たぜ···。アノド様が昔助けられたって話は聞いてたが、伝説のドラゴン族っていたんだなぁ~。ならテオはいいか。じゃあライ。そこの木剣を使ってみろ」
「はい。···えい!やあ!はあっ!!」
「············」
「どうですか?」
「そんな型の剣術は見たことないぞ···。どこで誰に教わった?」
「ごめんなさい。言えないんです···」
「そうか···。そこまでできるなら、何か技もできるのか?」
「はい。ちょっとやってみせますね。···秘技!弦月斬!!」
ドカーーン!!
···あ!的を3つ壊しちゃった···。木剣だから切れなかったからなぁ~。イグニスさんは口を開けっ放しにして放心状態になってたよ···。
「············」
「ご、ごめんなさい!壊しちゃいました···」
「ライ?武器は何を使ってるんだ?」
「···あ~。これなんですけど、内緒にしてくださいね」
ボクは魔力剣を無限収納カバンから取り出した。そして魔力を込めて緑色に光る刃を出したんだ。
「···はぁ!?なんだよ、その武器は!?見たことないぞ!!」
「魔力剣って言って、魔力を込めた分だけ攻撃力が上がる武器なんです···」
「···これは口外できんわ。ライ、それは神器だろ?」
「えっ!?そ、それは···」
「···なるほど。ということはそのショルダーバッグもただのマジックバックじゃないな?それも神器だ」
「うっ···」
「···事情はわかった。それと、その武器は人の前では絶対に使うな。狙われるぞ?まぁ、神器だから奪ったところで使えるわけないんだろうし、持ち主のところへ勝手に戻るんだけどな」
「そうなんですか?」
「神器は人を選ぶ。適格者とみなさなければ真の力を発揮しないんだよ。···まさか生きてる間に見れるとは思わなかったぜ。おおよそわかった。武器に振り回されてるわけではなさそうだしな。それじゃあいいのを見繕ってやるよ」
う~ん···。やっぱり見る人からすればわかっちゃうんだなぁ~。こればかりは仕方ないよね?
ボクたちはイグニスさんについていき、店に戻ったんだ。
ライくんの所有物が神器だってバレちゃいましたね!というか、みんな神器って見抜いているのがすごいですけどね。これにもちゃんとした理由があるんです。それはまた後で出てきますのでね。
さて次回予告ですが、武器屋で防具を揃えてもらって、一応ライくんとテオくんは冒険者になりました。しかしその裏でギルドでは密会が行われており、今後のライくんたちの取扱いについて協議がされますよ。どんな話になったのでしょうか?
明日と明後日は土日なので、朝と夜に1話ずつ投稿します。
それではお楽しみに~!




